本記事は、浅沼宏和の著書『ドラッカーに学ぶ「ハイブリッドワークライフ」のすすめ』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています

ハイブリッドワークライフ2
(画像=PIXTA)

キャリア構築に効く「やる気」と「モチベーション」ハック

主体的行動とモチベーションの関係とは

ワークライフバランスやワークライフインテグレーションは、組織や会社における雇用制度のための考え方です。特に、多様な働き方を可能にするワークライフインテグレーションは、新時代の組織づくりにとってますます重要になっていくでしょう。

組織や会社がワークライフインテグレーションを実践していくには、その組織、会社がより多くの価値を生み出すことが必要になります。したがって、先端領域にある企業、高業績企業が実践しやすい考え方と言えます。

日本では「失われた30年」とも呼ばれる長期的な経済停滞期が続きました。多くの業界、産業が成熟化もしくは衰退し、経営体力を失う会社も数多くありました。こうした会社が好業績企業と同様にワークライフインテグレーションに取り組むことは、決してやさしいことではありません。

また、ワークライフインテグレーションの恩恵を最も受けるのは高度な知識労働者です。明確な職務や役割を与えられ、質の高い成果を求められる働き手のために、多様な選択肢を組織や会社が用意するのです。

つまり、ワークライフインテグレーションは、比較的先進性の高い組織や会社、高度な知識労働者に適用しやすい考え方なのです。会社の立場からすれば、ワークライフインテグレーションを実践することは、組織、会社を成長させる経営戦略上の有力な指針となりうるのです。

しかし、多くの組織、会社はそこまで先進的ではありません。成熟化した業界、衰退しつつある業界、経営体力の弱い中小企業などでは実践が難しい側面もあります。おそらくワークライフインテグレーションに積極的に取り組む組織、会社が多数派を占めるようになる可能性はあまり高くはないでしょう。ハイブリッドワークライフの考え方が必要な理由はここにあります。

こうした制約条件の中でも主体的に行動したほうが個人の人生はより豊かになります。制約条件が厳しくても自らのキャリアの可能性を追求したほうが、人生の成果はより大きくなるでしょう。

人生の成果を最大化するには主体的な行動が必要です。それには、高いモチベーションが必要です。では、主体的な行動をもたらすモチベーションとは何でしょうか。「モチベーション」は身近な言葉ですが、その意味は必ずしも明確ではありません。

また、似たような言葉である「やる気」との違いもあいまいです。そこで、やる気とモチベーションについて整理しておきましょう。

仕事にやりがいを見出せず、いやいやながら働いている人も少なくありません。モチベーションを高めることは人生を豊かにするために大切なことなのです。

モチベーションとは長期的な行動を生み出す原動力です。これに対し、短期的な行動の原動力となるのが「やる気」です。やる気は熱気やテンションの高さに関係しています。脳内物質のドーパミンが分泌されることでやる気が高まるのです。

しかし、やる気は持続しません。スポーツやゲームなどに熱中している状態から、急速に冷めた経験はだれでもお持ちでしょう。やる気とは、いわば生理的な現象です。高いレベルのやる気は数時間も持続しません。

やる気が短期的な行動を促すものであるのに対し、モチベーションは長期的な行動の原動力です。そして、モチベーションの高さは目標に関係しているのです。自分自身の目標が明確であり、チャレンジしがいがあればモチベーションは高まります。

図1
(画像=ドラッカーに学ぶ「ハイブリッドワークライフ」のすすめより)

モチベーションには段階があります。モチベーションが低い段階、つまり行動する気力があまりない人には「飴(アメ)とムチ」が有効です。行動すればご褒美がもらえますが、行動しなければ損をするのです。「飴とムチ」は主体性の乏しい人、行動力のない人を動機づけるのに有効です。

しかし、「飴とムチ」には限界があります。「飴とムチ」では高いレベルのモチベーションが得られないのです。特に、高度な仕事、チャレンジ性の高い仕事、クリエイティブな仕事の動機づけには不十分であることがわかっています。

実は、高いレベルのモチベーションを生み出すのは自ら決めた目標です。チャレンジしがいのある目標を自ら決定し、その目標に向かうことで成長の実感や達成感を得られることが高いモチベーションを生み出すのです。

「飴とムチ」を外発的動機づけというのに対し、自ら高い目標を決め、行動することを内発的動機づけと言います。つまり、「やりがいのある仕事」はだれかが与えてくれるものではなく、自ら作り出すものなのです。ハイブリッドワークライフでは内発的動機づけを重視します。

人生を充実させるには「やりがいのある仕事」が必要です。しかし、それは自ら作り出すものなのです。会社のような組織に属している人であっても、「やりがいのある仕事」は自ら作り出さねばならないのです。主体的な行動こそが高いモチベーションにつながるのです。

もちろん、会社のような組織の側でも「やりがいのある仕事」を用意する努力が必要です。自社が社会に提供する価値は何か、その仕事にはどのような意義があるか、などについて働く人に説明する必要があります。社会に提供する価値が明確でなければ、そこで働く人がやりがいを見出すことは難しくなります。せいぜい、「飴とムチ」による平均的なモチベーションしか期待できないでしょう。

しかし、どのような状況にあっても働く人は自ら「やりがいのある仕事」を作り出さなければなりません。「会社がやりがいのある仕事を与えてくれない」とボヤいて行動しなければ、モチベーションは高まらず、豊かな人生も手に入らないのです。モチベーションは組織のために高めるものではなく、自分自身のために高めるものなのです。

高いモチベーションを持って行動すれば、長い人生で良いキャリアを築く可能性が高くなるのです。

ドラッカーに学ぶ「ハイブリッドワークライフ」のすすめ
浅沼宏和(あさぬま・ひろかず)
1963年静岡県浜松市生まれ。税理士、公認内部監査人(CIA)。(株)TMAコンサルティング代表取締役・浅沼総合会計事務所所長。早稲田大学政治経済学部卒業、中央大学大学院法学研究科修了、名古屋学院大学大学院博士後期課程修了。ドラッカーのマネジメントを取り入れた経営戦略を取り入れたコンサルティングをおこなっている。また、ドラッカーのマネジメントの実践法を取り入れた企業研修、セミナーを実施し、大好評を得ている。ドラッカー学会会員、日本会計研究学会会員。主な著書に『世界一やさしいドラッカーの教科書』『世界一やさしいマイケル・ポーターの「競争戦略」の教科書』『ストーリーでわかるスターバックスの最強戦略』(共にぱる出版刊)、『ドラッカーが教えてくれた経営戦略作成ノート』(中経出版刊)、『キーワード読む経営学』(共著・同文館)等がある。

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