本記事は、浅沼宏和の著書『ドラッカーに学ぶ「ハイブリッドワークライフ」のすすめ』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています
ドラッカーが教える「最高のキャリア」の手に入れ方
良いキャリアは偶然の産物、良い偶然が起きるように行動する
長い人生を計画通りに送ることはなかなかできません。未来は予言できないからです。人生には思っても見ないことが起きるものです。
ドラッカーは「最高のキャリアは、あらかじめ計画して手にできるものではない。自らの強み、仕事の仕方、価値観を知り、機会をつかむ用意をした者だけが手にできる」(『明日を支配するもの』)と述べています。
また、ジョン・D・クランボルツの「計画的偶然性理論」では、個人のキャリアの8割は予想していなかった偶然の出来事によって決まるとされています。思い描いた通りのキャリアを歩める人は少数派なのだと言います。
二人の提言は望み通りの職業人生を送ることの難しさについて述べたものと言えます。人生100年時代にはさらにキャリア形成の難易度が高くなるのです。
だからと言って、じっと待っているだけでは良いキャリアは手に入りません。「何もしないで待っていれば天から幸運が降ってくる」ことはありません。主体的に行動していく中で思わぬ機会、思わぬ幸運に巡り合うのです。
「計画的偶然性」とは、「良い偶然に巡り合うように積極的に行動しましょう」という考え方です。行動しなければ何も変わりません。何もしなければ何も起きず、選択肢も増えないのです。それでは人生の成果も大きくなりません。
「やりたいことが見つからないから行動できない」と思う人もいるかもしれません。しかし、それは間違いです。行動しないから視野が広がらず、選択肢も増えないのです。能力も向上せず、限られたことしかできなくなってしまうのです。
今は、将来について明確な目的がなかったとしても、何らかの目的を設定し、行動しなければいけません。行動するには目的が必要だからです。行動していく中で目的が変わることもあるでしょう。しかし、それは当たり前のことなのです。
ドラッカーの「最高のキャリアは、あらかじめ計画して手にできるものではない」との言葉は、仮の目的を設定して行動することが選択肢を広げると捉え直す必要があります。
ライフタイム、つまり人生全体の成果を最大化するには、(1)現在の成果をあげる、(2)将来の成果をあげる準備、(3)土台となる健康の3つの領域での努力が必要になります。
そうした努力を継続することで、より良い人生を歩める可能性が高くなるのです。その3つの領域で意味のある目標を常に設定し、実際に行動することが大事です。
本書はドラッカーのマネジメントの考え方を積極的に活用しています。ドラッカーのマネジメント論の本質は「成果をあげるために行動する」ことです。成果をあげるには適切な行動が必要です。適切な行動は適切な物の見方から生まれます。ハイブリッドワークライフはその適切な物の見方を提示するコンセプトなのです。
伝説的バスケットボール・コーチのジョン・ウッデンは、「最高の自分になるために全力を尽くした者が成功者だ。成功とはベストを尽くしたことで得られる満足感のことだ。全力を尽くさないことこそが失敗なのだ」という言葉を残しています。この言葉は本書の趣旨によく合致しています。
ハイブリッドワークライフとは個人が幸せになるには、自分の頭で考え、全力で行動しなければならないという考え方です。時間をオンとオフで分けるという発想ではなく、すべての時間を一体化して捉え、それが現在の成果、将来の成果の準備、土台となる健康という3つの領域に使われるべきだという発想なのです。
主体的な行動とは、「自ら考えて行動する」ことです。誰もが制約条件を抱えています。しかし、「成果をあげる人はやってはいけないことではなく、やってよいことに目を向ける」(『経営者の条件』)というのがドラッカーの言葉です。出来ない理由を探すのではなく、やれることは何かを考えるのです。
人生では思い通りにならないことは多いのです。しかし、与えられた条件の中で努力し、成果を最大化することは可能です。ハイブリッドワークライフは主体的な人生を歩む人のための原理です。私たちが幸せになるには主体的な行動が必要なのです。
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