本記事は、中石和良氏の著書『サーキュラー・エコノミー: 企業がやるべきSDGs実践の書』(ポプラ社)の中から一部を抜粋・編集しています
「サービスとしての製品」のメリット
私がこの「サービスとしての製品」で高く評価したいのは、序章でも触れたように多くのメリットと可能性を引き出せるところです。
利用サイドにとっては、製品を購入するという巨額の先行投資がなくなり、メンテナンスにかけていた時間やコストも削減できます。限られた時間や時期しか使わず、わざわざ購入する必要がない製品、買い替えやアップ・グレードで常に最新モデルを求められるような製品を、このビジネスモデルによって適切に活用することができます。
一方、サービスを提供する企業にとっては、製品を所有することのメリットがあります。買い手に製品を買ってもらうために、買い替え時期ができるだけ小刻みになるよう仕向ける必要がなくなります。すぐに劣化したり、機能が劣ったりといった「計画的陳腐化」から脱却できるのは大きいでしょう。
製造工程でも、最初からリサイクルを想定した設計や素材を選び、製品自体もなるべく構造を簡単にして、分解しやすく修理しやすい製品を目指します。このようにすれば製品や原料を長く使い続けることができ、結果としてコストや資源の無駄づかいを抑えることができます。
企業にとって、「購入」から「利用」に変わる点もこのビジネスモデルの魅力です。一度限りで終わっていたユーザーとの関係が、持続的で緊密なものに変わることで、細かなユーザー動向を常に更新しながらつかむことができます。使い方や頻度に応じた製品の情報を詳細に知ることができ、顧客数や年数が重なることで貴重なビッグデータを手に入れられます。
ここから新たな商品開発を発想できるかもしれないし、予想もしていないイノベーションが生まれるかもしれません。何より、顧客たちのビジネスの進め方や日々の仕事の仕方、社員たちのライフスタイルといった、本業だけにとどまらない、時代性や社会トレンドまでがキャッチできるのは、企業にとってはとても有用なことではないかと思います。
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