本記事は、中石和良氏の著書『サーキュラー・エコノミー: 企業がやるべきSDGs実践の書』(ポプラ社)の中から一部を抜粋・編集しています

海洋プラスチック廃棄物の現状

ゴミ
(画像=Eight/PIXTA)

国連環境計画の報告では、毎年、川や海に800万から1200万トンのプラスチック廃棄物が流出していると試算されています。これらは主にポイ捨てや廃棄物処理施設へ輸送される過程で出てしまった使用済みプラスチックです。

海に流れた海洋プラスチック廃棄物は自然分解されることがなく、紫外線や波の影響で破砕し、5ミリ以下のマイクロプラスチックに変わります。この有害物質をエサと間違って海の生物が食べることで、海の生態系に深刻な影響を及ぼしているのです。

食物連鎖を考えると、魚の体内に蓄積したマイクロプラスチックはその魚を食べた鳥や人間の体内にも入り、脂肪などに溶け込むことが予想されるわけで、ぞっとする話です。

世界でサーキュラー・エコノミーへの移行を推進するエレン・マッカーサー財団は、国連環境計画と協力して、深刻さが増している海洋プラスチック問題に対応するため、2018年に「ニュー・プラスチック・エコノミー・グローバル・コミットメント(NewPlastics Economy Global Commitment)」というイニシアチブを発足させました。

イニシアチブでは、署名した企業は以下の4つの目標に対し、2025年までの明確な目標設定と行動を示すことを求めています。

1 問題のある、また不必要なプラスチック包装・容器を取り除く。
2 使い捨てから再利用モデルへ移行する。
3 プラスチック包装・容器を100%安全で容易に再利用、リサイクル、堆肥化可能なものに転換する。
4 すべてのプラスチック容器について、消費者利用後のリサイクル率に関する野心的な目標を設定する。

先に紹介したユニリーバなどの消費財メーカーやプラスチック包装・容器メーカーなど、世界の主要な企業、それに政府やNGOなど450を超す機関が署名し、このイニシアチブに加盟しています。

何の解決策も講じずに今の状態を続けていくと、2050年までに120億トン以上のプラスチックが埋め立て、ないしは自然投棄されることになります。そうなると、海洋中のプラスチックの量が魚の量を上回ると、エレン・マッカーサー財団では警告しています。

廃棄大国日本の責任

国連環境計画はもう1つ、私たち日本人に驚きの数字を突き付けています。プラスチックの廃棄量を国別で比較すると、日本の人口1人あたりの廃棄量は年約32キログラム。この数字はアメリカについで世界第2位。日本は、残念なことに、プラスチック廃棄大国なのです。

一般社団法人プラスチック循環利用協会によると、日本国内の廃棄量は2018年で891万トン。そのうち56%は燃やしてエネルギーとして回収していますが、明らかにCO2を大量に排出していることになります。

また、これまで年に約100万トンをリサイクル資源として海外に輸出してきましたが、2017年に最大の輸出先だった中国が輸入を禁止しました。これによりプラスチック廃棄物が国内に留まり、処理が追いつかない状況が生まれています。

これは、企業だけの話ではないと私は考えます。生活者である私たち1人ひとりが自らの暮らしを今一度見直し、プラスチックの使い捨てを改めていかなければなりません。たとえば、日頃から飲料用のマイボトルを持ち歩き、なるべくペットボトルを購入しないよう心掛ける。

ささやかなアクションかもしれませんが、多くの人の、日々の小さな積み重ねが大きな一歩となるに違いありません。

サーキュラー・エコノミー: 企業がやるべきSDGs実践の書
中石和良(なかいし・かずひこ)
松下電器産業(現パナソニック)、富士通・富士電機関連企業で経理財務・経営企画業務に携わる。その後、ITベンチャーやサービス事業会社などを経て、2013年にBIO HOTELS JAPAN(一般社団法人日本ビオホテル協会)及び株式会社ビオロジックフィロソフィを設立。欧州ビオホテル協会との公式提携により、ホテル&サービス空間のサステナビリティ認証「BIO HOTEL」システムを立ち上げ、持続可能なライフスタイル提案ビジネスを手掛ける。2018年に「サーキュラーエコノミー・ジャパン」を創設し、2019年一般社団法人化。代表理事として、日本での持続可能な経済・産業システム「サーキュラー・エコノミー」の認知拡大と移行に努める。

※画像をクリックするとAmazonに飛びます
ZUU online library
(※画像をクリックするとZUU online libraryに飛びます)