2025年までに日本企業全体の3分の1が、後継者未定であるというデータがある。日本の企業の99%は中小企業であり、中小企業の事業承継が進まない場合の損失は計り知れない。本記事では、中小企業の事業承継を支援するために政府が行なっている4つの支援策について解説する。
目次
中小企業の事業承継の傾向
中小企業の事業承継は、「親族内承継」、「役員・従業員承継」、「社外への引継ぎ(M&A等)」の3つに分類できる。
中小企業庁の『事業承継ガイドライン』には、2015年当時の経営者に対して先代経営者との関係を調査し、回答した経営者が事業を承継してから経過した年数で区別したデータがある。
それによると、事業承継後の経過年数が短い経営者(最近、事業承継を行った経営者)ほど、親族内承継の割合が低下し、役員・従業員や社外の第三者への承継の割合が増加している結果となった。
調査時の直近5年内に事業承継をした経営者の回答では、親族内承継が34.3%、役員・従業員承継が約26.4%、社外の第三者への承継が約39.3%であった。
第三者への事業承継が最多だが、依然として親族内承継も多いことがわかる。
中小企業の事業承継支援の現状
政府は、中小企業庁を中心とした、事業承継の支援策を、税制・法律・金融などの面から次々と打ち出している。
特に、増加傾向にある第三者への承継(M&A等)については、2019年12月に経済産業省から「第三者承継支援総合パッケージ」が発表されている。M&Aを普及させるための総合的な支援策を盛り込んだもので、同省は、この支援によって10年間で60万者の第三者承継の実現を目指している。
事業承継の全体像をまず把握しよう
事業承継の支援は多角的な視点で増えているが、もちろん、誰にどのように事業承継をするかによって適用できる支援・できない支援がある。
例えば自社株の贈与に対する支援策は、一般的に親族内承継でなければ適用は考えにくい。しかし、後継者が決まっていない中小企業も多い。
事業承継の支援策によってどのような問題を解決できるか全体像を掴んでおくことは、これから事業承継を考える経営者にとって有益だろう。
そこで、次項では、中小企業庁を中心とする事業承継の支援策を紹介する。