マンション経営は、低層マンションと高層マンションの特徴を理解したうえで、自分に向いているのはどちらなのか見極めることが重要になってきます。そこで本稿では「低層マンションと高層マンションのメリットやデメリット」と「マンション経営をする際にどちらのマンションが向いているのかを確認するためのポイント」について解説していきます。

低層マンションと高層マンションの違い

マンション経営は高層と低層のどっちが最適?投資用マンションを選ぶときのポイント
(画像=kurosuke/stock.adobe.com)

低層マンションと高層マンションには明確な定義がありません。ただし、一般的に以下の目安で分類されていることが多いです。

  • 低層マンションは2〜3階建てが目安
  • 高層マンションは6階以上が目安

この記事では、上記の分類の仕方で説明していきます。

高層マンションのメリット

それでは、まず高層マンションの4つのメリットを詳しく説明していきます。

部屋数が多い

前述したように高層マンションは6階以上のマンションを指します。ちなみに20階建て以上のマンションを超高層マンションと呼びます。

高層マンションは低層マンションより階数が多いため、当然ですが部屋数も多いです。

部屋数が多いことで、マンションの維持管理費を多くの世帯が負担することになり、維持管理費が安くなるケースがあります。ただし、共有施設が多い場合は管理費が高くなることもあります。

高層マンションに投資する際は、共有施設の内容と管理費を他の高層マンションと比較することを忘れずに行ってください。

資産価値が高い

高層マンションは駅チカ立地など人気の立地に建設されることが多く、資産価値が高いことが多いです。ただし、周囲に同じような高層マンションが建設されたりした場合、不動産価値が下がる可能性もあります。

眺望がよく騒音が少ない

高層マンションの高層階にある部屋は、眺望がよく騒音が少ないことから人気で賃貸需要が高くなり、空室のリスクを軽減することができます。

ただし、周囲により高い建物が建設された場合、そうした価値が低下する可能性もあるので、立地をよく分析して慎重に購入することが重要です。

共用設備が多い

高層マンションは低層マンションと比べて共用設備が多い傾向にあります。共用設備とはジム、ゲストルーム、スカイラウンジなどです。

このように、高層マンションは共用設備が充実していることが賃貸需要を高めることに繋がり、空室のリスクを減少させています。

高層マンションのデメリット

当然ですが、メリットばかりがあるわけではありません。高層マンションにも少なからずデメリットがあります。どのようなことが高層マンションのデメリットなのでしょうか。

購入価格が高い

高層マンションは賃貸需要が高い駅チカや、人気エリアの好立地に建築されることが多いことから、物件価格が高額になりがちです。購入するための費用が高くつき、金融機関からの借入額も高くつきます。

すなわちローンの返済額も高くなるので、頭金を多く払うか、高額のローンを払うかになります。問題なく返済していけるかどうか、事前にしっかりとシミュレーションを行う必要があるでしょう。

災害時エレベーターが停止するなど避難がしにくい

高層マンションは階数が多いことからエレベーターが必要不可欠です。地震や火災などの災害発生時にエレベーターが停止した場合、そのときエレベーター内にいた人は、高層階で閉じ込められるといったことが起こりえます。

超高層マンションにもなれば、エレベーターの移動距離が長いことから、閉じ込められるリスクは低層マンションよりも高いといえるでしょう。

また避難する際には非常階段を使うことになりますが、高層階に住んでいる場合、降りるのに時間がかかります。家族のなかに足腰が弱っている人がいたら、本人に大きな負担をかけるだけでなく、災害に巻き込まれるリスクもあります。

このように高層マンションは低層マンションと比べ災害のリスクが高いのは事実です。災害リスクの高さから入居者から敬遠されることもあります。

共有施設が多い場合は管理費が高くなる傾向がある

メリットで説明したように高層マンションは共用設備や施設が多くなります。入居者にとっては利便性が高いであろうことからメリットではあるのですが、マンション経営の視点からいうとそれがデメリットになることもあります。

共有施設が充実しているとなると、必然的にマンションの入居者から徴収する管理費を含む家賃が高くなります。

今の入居者が退去するとなったとき、すぐに次の入居者が見つかればいいのですが、家賃の高さが懸念点となり、なかなか入居者が決まらないといったことが起こりえます。

空室の期間は入居者からの家賃をローンの返済に充てることはできませんので、自分で払わなければなりません。ローンが高額だった場合、家計や預金に大きなダメージを与えることにもなりかねません。

高層マンションには、このような空室リスクが高層マンションには常につきまといます。

低層マンションのメリット

続いては低層マンションのメリットを詳しく説明していきます。

第一種・第二種低層住居専用地域に建てられる

低層マンションは階数が1〜3階建てのため、建物の高さ制限がある「第一種・第二種低層住居専用地域」の用途地域でも建設することができ、この地域に建設されることが多いです。

こういった地域は一戸建て住宅などが多い閑静な住宅街が多く、住みやすい、治安がいいといった特徴がありファミリー層などからの人気が高く、空室リスクが低いというメリットがあります。

【第一種低層住居専用地域】
低層住宅のための地域。他に小規模店舗、事務所兼住宅、小中学校などが建てられる。

・建てられるもの
住宅、共同住宅、寄宿舎、下宿、図書館
幼稚園、小学校、中学校、高校、公衆浴場、老人ホーム

・建てられないもの
大学、専修学校、病院
店舗、事務所、工場
ホテル、旅館
遊戯施設、風俗施設
自動車教習所、倉庫業の倉庫

【第二種低層住居専用地域】
主に低層住宅のための地域。小中学校などのほか、150平方メートルまでの一定のお店などが建てられる。

・建てられるもの
住宅、共同住宅、寄宿舎、下宿、図書館
幼稚園、小学校、中学校、高校、公衆浴場、老人ホーム
店舗(日用品販売店舗、喫茶店、理髪店等のみ)
2階以下で作業場の面積が50平方メートル以下のパン屋等の工場

・建てられないもの
大学、専修学校、病院
上記に挙げたもの以外の店舗
上記に挙げたもの以外の工場
事務所、ホテル、旅館
遊戯施設、風俗施設
自動車教習所、倉庫業の倉庫

(引用:国土交通省 みんなで進めるまちづくりの話不動産情報サイト アットホーム 不動産用語集

火災や地震に強く避難しやすい

東日本大震災以降、首都圏直下型地震や南海トラフ地震が近いうちに来るのではないかと心配されています。安全なところに住みたいとは誰もが思うことでしょう。

低層マンションは壁式工法と呼ばれる比較的地震に強い工法で建築されていることや、最高階も3階と高くないため地震に強く、避難しやすい特徴があります。火災や地震などの災害のリスクが気になる方には非常に人気なのが低層マンションです。

部屋数が限られるため希少性が高い

低層マンションは部屋数が限られるおり、人気の高いマンションは希少性が高く、入居者待ちができるケースもあります。ただし、そうした人気の高いマンションは、立地やデザイン性が良いなどの特徴があるものに限られています。

マンション経営を目的として低層マンションを購入する際は、立地やデザイン性などを重視して慎重に選ぶことが重要です。

低層マンションのデメリット

続いては低層マンションの3つのデメリットを詳しく説明していきます。

住戸数が少ないため管理費が高いケースがある

低層マンションは住戸数が少ないことから、住人一世帯あたりが負担する管理費が高くなる傾向にあります。

高層マンションは共有施設が充実するほどに管理費が高くなる傾向にありますが、低層マンションの場合、住戸数が少ないことが影響し管理費が高くなるのです。

こうしたことから、家賃を設定する際はエリアの家賃相場をしっかり調査し、管理費を含めた家賃をエリアの相場に合わせて設定するようにしましょう。

共用施設や管理体制が充実していない

低層マンションは高層マンションに比べて共用施設が少ない場合が多く、マンションによっては管理人が常駐していないケースもあります。

コンシェルジュサービスがあるような高層マンションと比べ、管理体制やセキュリティが充実していません。

「管理体制がしっかりしたマンションに住みたい」「セキュリティにこだわりたい」と考えている人は、低層マンションを避ける傾向にあります。

騒音や外部からの視線が気になる可能性がある

低層マンションは、周囲の環境によっては騒音や通行人の視線が気になる可能性があります。1階などに住めばなおさらで、ブロック塀、フェンス、植木などによる囲いがあれば外部からの視線は避けられますが、車や人の往来が多い場所だと騒音が気になることもあります。

マンション経営ならどっちを選ぶ?

ここまで低層マンションと高層マンションのメリットやデメリットを説明してきました。では、マンション経営をするのなら、どちらのマンションを選べばいいのでしょうか?そこで、4つの選定ポイントをピックアップしましたので参考にしてみてください。

ターゲットを決める

低層マンションはファミリー層やシニア層に向いており、高層マンションは共働き世帯など交通の利便性を優先する人に向いているマンションになります。どちらを選んでもそれぞれメリット・デメリットがあります。

例えば、ファミリー層は子どもが学校に通うため、長期的に住み続ける可能性が高いというメリットがあります。

一方で高層マンションは一人暮らしや共働き夫婦などに人気があるため、物件価格が高く利回りは低くなるかもしれませんが、眺望がいい、駅チカなどの売りポイントがあることから、賃貸需要が高く、今までの入居者が出ていくとなっても、すぐに新しい入居者が決まるなど、空室になりにくい可能性が高いです。

このようにどちらも利点があるため、ご自身の経営方針にあったマンションを選ぶことが重要になります。

立地や利便性を確認する

当然ですが、不動産投資を行ううえで立地は非常に重要です。立地によって不動産の価値や賃貸需要が大きく変わってきます。では、低層マンションと高層マンションでどういった立地特性を確認すべきなのでしょうか?

まず、高層マンションは夫婦2人世帯など交通の利便性を優先する働き盛りの世帯の需要が高いです。そのため駅から近いエリアにあるほうが賃貸需要は高いといえます。

一方で、低層マンションは前述したように閑静な住宅にあることが多く、ファミリー層が多いため、スーパーや公園が近くにあるといったように、生活するうえでの利便性が高いマンションが求められる傾向にあります。

物件の資産価値を把握する

マンション経営は、低層マンションであっても高層マンションであっても当然出口戦略を考えておくことは重要になります。つまり、売却するときでも高く売却ができるよう、資産価値が下がりにくい物件を選ぶ必要があります。

物件の資産価値を影響する要素として

  • 立地
  • 購入を考えている地域の人口の増減
  • 将来の開発計画

などを挙げることができます。

そのため、購入する前に今現在の物件の資産価値だけではなく、10年後、15年後の資産価値の下落率も参考にしながら購入を判断するといいでしょう。

不動産会社には、収支シミュレーションと同時に、物件の資産価値推移データも出してもらうようにしてください。

ただし、推移データはあくまでも想定であり確定したデータではないので、下落率を少し多めに見ておくといいでしょう。

自分の資金計画に合った物件を選ぶ

自分の資金計画に合ったマンションを選ぶことがマンション経営において重要になります。

ご自身が利用できる融資枠と実際に返済できる融資枠を勘違いしないようにしてください。例えば、年収700万円がある方の融資枠は3,500〜5,000万円程度になると思われます。

これだけで見ると5,000万円まで物件の購入ができると思われる方が多いとでしょうが、実際に賃貸経営をしていくと、空室期間で家賃収入がなかったり、設備の修繕などのリスクを考慮したら、現実は3,500万円でローンを組むのが限界だったというケースも多くあります。

マンション経営は長期に渡り資産形成していくものです。目の前の家賃収入とご自身の返済能力だけでシミュレーションするのではなく、この先でも経営を維持できるか、余裕のある経営プランを立てるようにしましょう。

まとめ

今回は不動産投資をする際に、低層マンションと高層マンションのメリット、デメリットなどについて解説しました。要点は次の通りです。

  • 高層マンションは眺望がいい、資産価値が高いなどのメリットがある反面、物件価格が高い、災害時は避難にくいなどのデメリットがある
  • 低層マンションは部屋数が少ないため希少性が高い、災害時は避難しやすいなどのメリットがある反面、共有施設が少ない、管理費が高くなりやすいなどのデメリットがある
  • 入居ターゲット、資金計画などで物件タイプを選ぶことが重要

低層マンションと高層マンションで悩まれている方は、ぜひ本稿をお役に立てください。

(提供:Dear Reicious Online



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