先月までの動き

先月は、年金改革に関係する審議会等が開催されなかった。

ポイント解説:2020年国勢調査の結果と動向

2021年11月30日に、2020年10月に実施された国勢調査の確定値(人口等基本集計)が公表さ れた。本稿では、公的年金の将来見通しを作成する際の出発点でもある国勢調査の結果と、 近年の出生率や死亡率の動向を確認する。

1|国勢調査結果:総人口の減少は100万人未満だが、現役世代の減少は200万人超

今回公表された2020年10月1日時点の日本の総人口は1億2615万人であり、国勢調査で初の 減少となった前回(2015年10月)に引き続き、前回比95万人の減少となった。大雑把に言え ば、5年ごとに政令指定都市1つ分、あるいは1年ごとに中規模な市1つ分の人口が日本から 消えているイメージである。

前回との差を年齢区分別に見ると*1、0~14歳は92万人の減少、15~64歳は227万人の減少、 65歳以上は224万人の増加となっている(図表1上段)。

0~14歳の減少は、前回10~14歳だった562万人がこの区分から抜けた一方で、今回この区分 に加わった0~4歳が454万人にとどまったのが主因である。前回の0~4歳が501万人だったこ とを考えれば、この5年間で少子化がさらに進んでいると言える。この結果、0~14歳人口 は1503万人にとどまり、総人口が現在の約半数だった100年前(1920年)の2042万人よりも 少なくなっている(図表2)。

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(画像=ニッセイ基礎研究所)

65歳以上の増加は、今回の70歳以上は前回の65歳以上と比べて死亡等により600万人減少 したのに対して、今回この区分に加わった65~69歳が824万人だったのが主因である。90歳 以上が178万人から239万人に増えるなど、長寿化の影響も見られる。これらの結果、総人 口に占める65歳以上の割合は、団塊世代がこの区分に加わった影響で大幅に上昇した前回 から、さらに上昇して29%となった(図表2)。

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*1 総務省統計局のプレスリリースと同様に、年齢不詳の人数を各年齢に割り振った不詳 補完結果による。なお、年齢不詳の人数は、罰則付の回答義務があり、調査方法を改善し ているにもかかわらず、過去3回の調査で98万人→145万人→293万人と増えている。この まま増え続ければ日本の針路を見誤りかねず、年齢不詳の原因となった回答者の協力改善 を期待したい

2|出生率と死亡率の動向:全体では想定内だが、20代と40代の出生率は低位推計に近い水

今回の国勢調査の結果を2017年に公表された将来推計人口と比較すると、0~14歳と65歳以 上はほぼ推計どおりとなっている(図表1下段)。

出生率の動向を見ると、全体(合計特殊出生率)では2016年から再び低下傾向に転じ、2019 年に大きく低下して将来推計の中位と低位の中間に位置している(図表3)。母親の年齢別 に見ると、20代と40代で低位推計に近い(一部では若干下回る)値になっている(図表4)。 人口動態統計月報年計(概数)によれば新型コロナ禍の影響は限定的になりそうだが、2019 年の大幅な低下が一時的な晩婚化や晩産化なのか長期的な生涯未婚率の上昇や完結出生児 数の低下につながるのかについては、現時点での見極めが難しいだろう。

高齢者の死亡率の動向を見ると、65歳の平均余命は引き続き延びており、将来推計の中位 を若干上回っている(図表5)。年齢別の死亡率を見ると、男性の80代前半と90代前半は低 位推計に近い水準となっており、平均余命が延びる要因となっている。

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(画像=ニッセイ基礎研究所)

中嶋 邦夫 (なかしま くにお)
ニッセイ基礎研究所 保険研究部 上席研究員・年金総合リサーチセンター 公的年金調査 室長 兼任

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