経常利益率の目安はどれくらい?業界別の平均

自社の経営力を見極める手段としては、経常利益率を業種平均と比べる方法が手っ取り早い。そこで以下では、金融庁が管理している「EDINET」のデータをもとに、主な業種の平均値(※上場企業のみ)をまとめた。

経常利益・経常利益率の計算方法とは?財務分析に活かして経営体質を改善

売上に対する経費が多かったり、原価率が固定されやすかったりする業種は、全体的に経常利益率が低い傾向にある。上記の表でいえば、卸売業やサービス業、小売業などが該当するだろう。一方で、経費や価格を調整しやすい情報・通信業や不動産業などは、どの時期を見ても高い経常利益率を維持している。

また、流行や社会情勢の影響を受けやすい業種では、経常利益率を計算する時期によって平均値が大きく変わる。例えば、2019年における医薬品業の平均値は「-256.1」だが、2020年には「-1014.5」と5倍程度にマイナスが膨れ上がった。そのほか、鉱業や精密機器業、海運業なども、時期によって経常利益率の平均値が大きく異なる。

したがって、業界内で経常利益率を比較する際には、常に最新のデータを参照することが重要だ。毎年同じデータを使い回すのではなく、政府(金融庁や中小企業庁など)が公開している最新資料をしっかりと確認しておこう。

経常利益・経常利益率を改善する2つの方法

経常利益・経常利益率が業界平均を下回る場合は、早急に対策を立てる必要がある。では、経常利益・経常利益率を改善する方法には、具体的にどのようなものがあるだろうか。

1. 収益(売上高・営業外収益)を増やす

いくらコストを削減しても、そもそも収益力がなければ会社は成長しない。中長期的な成長を目指すのであれば、まずは以下のような「収益を増やす対策」を優先すべきである。

経常利益・経常利益率の計算方法とは?財務分析に活かして経営体質を改善

なかでも営業力の強化は、資金が少ない中小企業でも実践しやすい。例えば、各営業マンのアプローチを見直し、顧客への営業力や提案力を磨いていけば、既存の商品・サービスのままでも売上向上を見込めるだろう。

また、自社製品に競争力がある場合は、販売単価の引き上げも効果的な対策になり得る。ただし、単に値上げをすると顧客離れを引き起こす恐れがあるので、既存商品・サービスの質を向上させることにも取り組みたい。

2. コスト(原価・販管費・営業外費用)を削減する

原価や販管費などのコスト削減も、経常利益・経常利益率の改善につながる。まずは毎月発生する固定費から見直したいところだが、地代家賃や水道光熱費などをすぐに削減することは難しい。

そこで短期的な対策として取り組みたいものが、「変動費の削減」だ。以下のように、企業の変動費にはさまざまなものがあるため、ひとつずつ見直すだけで大きな削減効果を期待できる。

経常利益・経常利益率の計算方法とは?財務分析に活かして経営体質を改善

なお、変動費の削減がどうしても難しい場合は、人件費の削減もひとつの選択肢になる。例えば、専門性の高い業務を外注したり人材配置を最適化したりすれば、余計な人件費を削減できるだろう。

しかし、無理に人件費を減らそうとすると、労務やモラルの面でトラブルが生じるかもしれない。つまり、人件費の削減には大きなリスクがあるので、まずは周囲への影響が少ない変動費の見直しから始めることをすすめる。