本記事は、横山光昭氏の著書『大人のためのお金の教養』(総合法令出版)の中から一部を抜粋・編集しています

押さえておきたい「控除のしくみ」

ふるさと納税
(画像=PIXTA)

所得税や住民税を低く抑えるためには、「控除のしくみ」をしっかり学ぶ必要があります。

「控除」ってなに?

AさんとBさんはどちらも年収800万円ですが、Aさんのほうが年間の所得税や住民税が高かった。そんなことが実はよく起きています。

その原因が、所得から差し引くことができる「控除」の存在です。収入が多かったとしても、所得控除を上手に活用すれば、かかる税額を少なくできます。節税したい方は、「控除マイスター」になるといいでしょう!

「所得控除」と「税額控除」

個人の所得税や住民税の計算に影響する控除は、大きく分けて2種類あります。それは「所得控除」と「税額控除」です。

所得控除とは、所得税や住民税を計算するときに、その人の1年間の所得金額から一定額を差し引ける控除のことです。所得控除は種類が多く、要件に当てはまる場合に利用できます。

税額控除は、所得金額から所得控除額を引いた課税所得額に税率をかけて計算した所得税額または住民税額から、直接差し引くことができる控除のことです。税額控除の中で利用しやすいのは、住宅ローンを組んで家を購入した際に利用できる「住宅ローン控除」や、認定NPO法人や公益社団法人等に寄付をした際の「寄付金特別控除」などがあります。ただし、所得控除の中で「寄付金控除」の適応を受けた場合は、利用できません。

近年メジャーになった「ふるさと納税」は、同じ寄付金でも「寄付金控除」に該当する所得控除の一種です。ふるさと納税も住民税から税額控除されます。

「所得控除」をフル活用!

節税に大きく影響する「所得控除」。実は多くの種類があるのです。

「人的控除」と「物的控除」

所得税や住民税の節税につながる「所得控除」。この所得控除は「人的控除」と「物的控除」の2つに分かれます

まず人的控除は、納税者の個人的な事情に配慮するための控除です。「配偶者控除」や「扶養控除」など、家族に関する項目が多く見られます。

次に物的控除は、社会的な観点から見て配慮するための控除です。おもな物的控除は、「生命保険料控除」や「社会保険料控除」、「医療費控除」や「小規模企業共済等控除」などが挙げられます。

こうした所得控除をしっかり活用するコツは2つあります。

まずはどんな控除内容があるのかを理解すること。控除内容さえ知っていれば、活用できる機会が自然と増えます。

次に、控除が利用できるような行動を取ること。例えば将来の老後資金を作るためにiDeCoに支払った掛け金は、全額を「小規模企業共済等掛金控除」で控除できます。また、生命保険料は「生命保険料控除」で控除できます。生命保険料控除は「一般生命保険」「介護医療保険」「個人年金保険」に分けて控除が受けられます。医療費が世帯で10万円を超える方は、医療費を支払った際の領収書を保管しておけば、医療費控除の対象になります。

なにで所得控除がされるかを知り、活用する。これを心がけてみてください。

また所得控除と似ているものの、全く違うのが「給与所得控除」です。給与所得控除は給与収入の「経費」に当たり、収入に合わせた割合で、給与所得者全員が控除を受けられます。対して所得控除は、自分で申告しなければ収入から差し引いてもらえません。控除できる金額が多いほど、税金計算の対象となる「課税所得」が下がり、所得税を少なくできるのです。

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(画像=『大人のためのお金の教養』より)

「寄付金控除」を使ってみよう

寄付金控除のひとつである「ふるさと納税」を紹介します。よりよい生活のヒントになるかもしれません。

「ふるさと納税」

ふるさと納税は、「納税」という言葉がつきますが、実際は自治体に寄付をする制度です。寄付をすると確定申告で、寄付金額から2,000円を除いた金額が所得税や住民税から控除されます。5自治体以内の寄付であれば、「ワンストップ特例制度」という確定申告不要の制度も使えます。これは、手続きをするだけで、寄付額から2,000円を除いた金額すべてを住民税から控除する制度です。2,000円を超えた金額すべてを控除の対象にするには、収入や家族構成によって上限があります。

これだけを見ると、自分の住民税額の一部を好きな自治体に回しているだけのように見えますが、実は大きな魅力があります。それは寄付をした自治体から、寄付額の3割以内の特産品(例えば米や肉、魚や果物など)がいただけるというところです。災害被災地の寄付やクラウドファンディングなども扱っており、本来居住地の自治体に納める税額の一部を、自分が応援したい活動に送ることができるのです。

「ふるさと納税」のやり方

では、実際にふるさと納税をするとき、どのように行うのでしょうか。5自治体以内の寄付で利用できる「ワンストップ特例制度」でのやり方を紹介します。

(1)ふるさと納税をする自治体を決める

まずは、ふるさと納税をする地方自治体を決めましょう。自治体のホームページやふるさと納税のサイトでは、返礼品など詳しい情報が掲載されています。

(2)自治体に寄付を申し込む

ふるさと納税をする自治体を決めたら、申し込んでみましょう。自治体に直接申し込むか、ふるさと納税サイトを通じて申し込むことができます。このとき、「ふるさと納税ワンストップ特例の申請書」の有無を問われるので、「有」にチェックします。次に説明する「受領証」と共に送られてくるので、必要事項を記入し、必要書類を同封して翌年1月10日までに返送します。自治体に直接申し込む場合は、各自治体のフォーマットがあるのでそれを作成しましょう。ふるさと納税サイトから申し込む場合、サイトによってはクリックひとつで自動的に申請書を作成・提出することができます。

(3)返礼品と寄付金受領証明書を受け取る

自治体から返礼品が届きます。また寄付金の領収書である「寄付金受領証明書」も届きます。これは返礼品に同封されていたり、返礼品とは別に送られてきたりします。

もし、ふるさと納税ワンストップ特例制度を利用しない場合、寄付金受領証明書は確定申告時に必須の書類です。なくさないように注意しましょう。

大人のためのお金の教養
横山光昭(よこやま みつあき)
家計再生コンサルタント、株式会社マイエフピー代表。お金の使い方そのものを改善する独自の家計再生プログラムで、家計の確実な再生をめざし、個別の相談・指導に高い評価を受けている。これまでの家計再生件数は2万1000件を突破。書籍・雑誌への執筆、講演も多数。著書に85万部を超える『はじめての人のための3000円投資生活』(アスコム)や『年収200万円からの貯金生活宣言』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)などがある。これまでに150冊、累計351万部となる。オンラインサロン「横山光昭のFPコンサル研究所」を主宰。

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