DX推進の背景

DX推進の背景、今後の日本社会を待ち受ける大きな課題を見ていこう。

2025年の崖とは

経済産業省が警鐘を鳴らすのが「2025年の崖」問題だ。2019年9月に同省が公表した「DXレポート~ITシステム『2025年の崖』の克服とDXの本格的な展開~」によると、DXが実現できない場合、2025年以降、最大で年間12兆円の経済損失が生じる可能性があるとしている。これは既存システムのままの場合、今後の事業経営の足かせとなり経済成長を妨げる要因となることを意味する。

2025年という年がマークされている理由として挙げられているのが以下の問題点だ。

  • 2025年を迎えると基幹系システムを21年以上稼働している企業の割合が60%となる
  • IT人材不足が約43万人に拡大
  • 古いプログラミング言語を使える人材の供給が不可
  • 超高齢化の加速による人材の不足
  • SAP、ERPのサポート終了

上記のような問題点を見過ごし、何も対処せずにいると日本のインフラ整備や各企業がデジタル化の波に取り残され、古い技術のまま事業を続けることになる。そうなればデジタル化が急進する世界経済から取り残され、企業としても国としても競争力が大きく低下することは避けられない。問題となっている既存システムでは、業務システムが事業部門ごとに構築されている。

部門間の連携・企業全体でのデータ活用が進まないため、効率化の障害となっているのだ。また独自カスタマイズを重ね続け複雑化したシステムは最新技術を適用できない。老朽化による高額な維持負担や保守運用の人員不足、脆弱なセキュリティ体制といった要素から災害・事故・システムトラブル・テロなどに対応しきれず事業継続への懸念が膨らんでいる。

DXへの取り組みが必須とされる理由

DXへの取り組みが声高に叫ばれる理由は、既存システムが時間経過と共に重荷となり今思い切った変革をしないと解決が難しくなるからだ。既存システムの維持管理費の高額化により負担は増加する。それを補うだけの収益を旧来の体制のままで、はたして上げていけるのだろうか。クラウドベースが世界標準となる中、データ活用の遅れは命取りとなりかねない。

市場における競争力の低下は、時間の問題である。急変する市場環境に対応するためには、AIやIoTなどの先進技術の活用が不可欠だ。新技術に対応できないシステムは、やがて使い物にならなくなる。膨大なデータ管理ができない状態となれば既存システムは、完全に価値を失うだろう。暮らしのすべてにおいて新しいデジタル技術が前提となり消費者ニーズや社会的な意識も変化していく。

DXが遅れれば社会のデジタル化に対応できなくなる。2019年以降は、コロナ禍を通じて働き方の多様性が広がり、事業継続性についても危機感が生まれた。クラウド化されていない古いシステムでは、有事へのリスクが大きい。人材不足も事業継続性に深刻なダメージとなり続ける。効率化が進められなければ企業の存続は危ういものとなるだろう。

情報化が進みあらゆる市場が急激に変化する今、散発的に繰り出す手段だけでは企業の競争力を高められない。