2018年に経済産業省のレポートで登場して以来、DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉が企業戦略の中でも頻繁に聞かれるようになってきた。DXの認知度が向上する一方、デジタル企業への変革の歩みを着実に進めている企業はそこまで多くはない。今回は、DXの取り組みの現状を確認しながら、DX推進に成功している各分野の事例と失敗事例から学ぶべきポイントについて解説する。
目次
DXが推進できている企業とは
はじめにDX推進の状況とDXの本質に基づいた取り組みへの考え方について解説していこう。
国内のDX取り組みの状況
2020年12月に経済産業省が公表した「DXレポート2中間取りまとめ」の資料によると、2020年10月時点で全体の約95%の企業が「DXにまったく取り組めていない」「取り組み始めたばかり」となっている。一部の先行企業と平均的な企業では、DX推進状況に大きな差があるのだ。DXに着手する以前にその前段階である自己診断に至っていない企業が背後に多数あると推測される。
DX推進遅延の背景には、DXの本質への理解不足があると考えられる。DXを単なる旧システム刷新や現時点での競争優位性の確保といった非常に狭い視野でとらえている企業も少なくない。コロナ禍では、ルールを臨機応変に変更して環境変化に対応した企業と対応できなかった企業の差が拡大した。
今後デジタル企業に変容できない企業が競争に勝てなくなることが予測できる。感染症の蔓延という有事を経た状況でさえ、押印や対面営業といった企業文化にこだわり、変革に踏み込むことができずにいる企業が少なくないことも懸念材料だ。
何をもって「DXの推進」といえるのか
先述した通りDXの本質への理解不足がデジタル企業への進化を遅らせている原因の一つである。デジタル化やクラウドの活用すだけではDX推進とはいえない。DXが目指すのは、すばやく変革し続ける能力を身につける」「ITシステムだけではなく企業文化そのものが環境変化に対応できる柔軟性を獲得できるようになる」といったことだ。
DXの真の目的を理解していない企業には、DXの実現は難しい。以上を踏まえて次の項では、DXの推進事例を紹介していく。