明治16年創業の住江織物は、国内で初めてカーペットを製造販売した会社だ。現在は一般・オフィス・ホテル向けのカーペット・壁紙・カーテンのほか、自動車・鉄道・バス・船舶・航空機等の内装材提供、家電メーカーへの機能資材のOEM供給等、領域を広げている。21年7月には中長期経営目標「SUMINOE GROUP WAY2022~2024~2027」を発表。同目標に新たな経営体制で取り組むため、永田鉄平新社長が就任した。
国会議事堂へ赤絨毯を納入
タイルカーペットも初製品化
カーペットにおいて国内随一の実績を誇る住江織物。インテリア、自動車・車両内装、機能資材の、3セグメントで展開している。祖業の「インテリア事業」では創業当時から続く国会議事堂への赤絨毯納入が有名だ。現在一般的となったオフィス内のタイルカーペットも同社が初めて製品化した。
「自動車・車両内装事業」では自動車・鉄道・バスへシート地やカーペットを提供。売上・利益率を牽引する事業となっている。特に自動車は全日系メーカーに納入し、カーペット地60%、シート地は40%近いシェアを獲得。鉄道シート地は65%強のシェアを誇る。
「機能資材事業」では冷蔵庫や空気清浄器内のフィルター、浴室床材やホットカーペット等をOEM提供。近年は医療・教育・福祉施設・車両等に展開する抗ウイルス機能加工製品が好調だ。
「コロナ禍で抗ウイルス製品は前年の3倍程伸びた。鉄道シート地にも続々と取り入れられている」(永田鉄平社長)
業界内では三菱ケミカルHD、東レ、旭化成、帝人、東洋紡に次ぐ6位の売上高。繊維業界は近年中国メーカーが急速にシェアを拡大し、国内メーカーは大手も主力事業を非繊維へシフトするなど変化を迫られている。そんな中、同社も主力はインテリア事業から自動車内装業へとシフトしている。
「トップシェアの車両関連事業に加え、長年取り組む環境対応製品、祖業の高品質なカーペットが当社の強み。家庭用インテリアは輸入材台頭により競争が激化していますが、当社製品は糸にも織り方にも付加価値のある中高級商材なので棲み分けはできている」(同氏)
環境対応製品を安価で実現
SDGsが追い風に
同社では30年前より環境対応製品に着手。90年にはペットボトル由来チップを50%取り入れた糸をインテリア業界で初めて製造した。また11年には日本初の水平循環型リサイクルタイルカーペット「ECOS」を製品化。通常は産廃になる塩ビをチップ化し、再びタイルカーペットの裏材に取り入れる。
中でも代表的なシリーズはリサイクル比率70~80%と国内エコマーク基準の再生材比率25%を大きく上回り、二酸化炭素も26%削減。製造コストも販売価格も従来製品と同価格帯で実現し、全てのタイルカーペットを「ECOS」に変更した。SDGsは追い風となっており、東京建物をはじめとする大手ディベロッパーにて同社製品が積極的に新規ビルに採用されている。
中長期経営目標を発表
売上1000億円目指す
同社では21年7月、中長期経営目標「SUMINOE GROUP WAY 2022~2024~2027」を発表。21年5月期の売上高797億200万円、営業利益率1・3%を、24年には売上高934億9000万円、利益率3・5%に、27年には売上高1000億円以上、利益率5%以上を目指す。
インテリアにおいては事業所合理化のため国内工場をダウンサイズ。奈良工場の土地を一部売却し、滋賀工場に自動車内装材関連設備を移管した。これにより工場間のトラック便のコストと環境負荷を大幅低減。また染色設備を取り除き、排水コストと環境負荷を削減。利益率増加に繋げた。また20年にはABCマート等の店舗内装を手掛けるシーピーオー社を買収。今後はホテルやオフィス等の販路を活かし空間デザインで業容を拡大させていく。
自動車内装では、数年前から利益率の高い合皮の扱いを開始。好調に伸びており、中長期の伸長も大いに期待できる。また合皮だけでなく新素材や付加価値の高い素材の提案を続け、納入部品を拡大していく。電気自動車や自動運転の普及に伴う車内空間の変化から新たなニーズも生まれている。
「今後は防振・吸音・防音が重要な要素になる。モーターは静かゆえ、これまでエンジン音に隠れていたロードノイズ等が響くようになった。オフィス製品で培った遮音・吸音技術で対応していく」(同氏)
現在東証1部の同社だが、市場再編後はプライム市場を目指す考え。未達の項目があるため、持合い解消や流通比率向上に着手しており、株主還元策も検討中だ。
「まずは中長期経営目標を達成し、売上1000億円以上、利益50億円以上を出せる企業になっていく姿をお見せしたい」(同氏)
事業別製品の導入事例
2021年5月期 連結業績
売上高 | 797億200万円 | 前期比 12.9%減 |
---|---|---|
営業利益 | 10億4900万円 | 同 32.6%減 |
経常利益 | 12億1100万円 | 同 8.5%減 |
当期純利益 | 4億900万円 | 同 186.4%増 |
2022年5月期 連結業績予想
売上高 | 839億円 | 前期比 5.3%増 |
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営業利益 | 4億200万円 | 同 61.7%減 |
経常利益 | 11億200万円 | 同 9.1%減 |
当期純利益 | 5億2600万円 | 同 28.5%増 |
※株主手帳1月号発売日時点
(提供=青潮出版株式会社)