この記事は2022年1月17日に「ニッセイ基礎研究所」で公開された「中国経済:貿易統計(2021年12月)~輸出、輸入ともに伸びは鈍化」を一部編集し、転載したものです。
貿易収支
2022年1月14日の中国税関総署の発表によると、12月の中国の輸出額は3,405億ドル、輸入額は2,460億ドルとなり、貿易収支は945億ドルの黒字(前年同月比20.8%増)となった(図表 - 1)。
輸出額は前月11月よりも増加し、輸入額は減少した。貿易収支は945億ドルとなり、前月の717億ドルから228億ドル増加した。電気機械製品やハイテク製品等の輸出の好調が続き、黒字化に成功している。
中国では12月に陝西省西安市を中心に新型コロナが蔓延した。2022年1月に入ると、河南省や天津市で新型コロナが拡大し、防疫措置が講じられている。河南省ではロックダウンが行われ、天津市でも日系企業を含む工場の操業停止が命じられている。北京冬季五輪開催を目前とし、中国では厳戒態勢が敷かれているため、企業活動の制約は免れない。欧米でも新変異株が流行していることもあり、供給制約や供給網の混乱等、動向を注視したい。
輸出
12月の輸出は、前年比20.9%増(11月:同22.0%増)となり、9月から3カ月連続で鈍化した。
輸出相手先の推移を見ると、米国、EU、日本、ASEAN、香港ともに対前年プラスとなった。また11月と比較すると、米国向けへの輸出の伸び率が拡大した一方、EU、日本、ASEAN、香港向けへの輸出の伸び率は縮小した(図表 - 2)。
また、12月の主要輸出品目の伸び率を見ると、農産物は対前年17.7%増、紡績糸・織物(およびその製品)は同16.2%増、衣類(付属品含む)は同14.5%増、電気機械製品は同18.1%増、ハイテク製品は同23.1%増となった(図表 - 3)。
他の輸出品目に着目すると、レアアースが対前年53.0%増、肥料が同17.4%減、鋼材が同84.9%増、アルミニウムが同67.2%増となった。電気機械製品の内訳をみると、家電製品が対前年17.6%増、集積回路が同21.0%増となった一方、液晶ディスプレイは同5.6%減、携帯電話が同33.2%減、オーディオデバイスが同34.7%減となった。
輸入
12月の輸入は、前年比19.5%増(11月:同31.7%増)と伸びは鈍化した。
輸入相手先の推移を見ると、米国が対前年3.3%増、ASEANが同22.5%増となり、ASEANからの輸入は前年を上回り続けている。一方、EUは同2.9%減、日本は同3.9%減、香港は同28.5%減となりマイナスへと転じた(図表 - 4)。
また、12月の主要輸入品目の伸び率を見ると、鉄鉱石は対前年24.8%減、電気機械製品は同6.8%増、集積回路は同27.2%増、ハイテク製品は同16.4%増となった。また、原油は昨年よりも価格が高騰していることをうけ、同114.2%増となった(図表 - 5)。
他の輸入品目に着目すると、電力不足の影響で前月に輸入が拡大していた石炭(亜鉛含む)は対前年173.2%増(11月:同762.6%増)まで減少した。そして、半導体の供給制約は依然として解消していない状況がうかがえる。半導体(ダイオード含む)の輸入は対前年8.7%増だった一方、医療用機器、液晶ディスプレイ、自動車(シャーシ含む)など半導体を用いた製品の輸入はそれぞれ同5.1%減、同12.2%減、同32.3%減となった。リードタイムが緩和されるまでしばらくかかりそうである。
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助川 啓太(すけがわ けいた)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 研究員
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