規模の経済を活かしやすいビジネスモデルとは?
規模の経済は、生産量が増えるほど1単位あたりの固定費が薄まり全体のコストダウンにつながる。そのため事業コスト全体に対して、研究開発費や減価償却費、広告費などの固定費の割合が大きいタイプの事業であれば規模の経済が効きやすい。
1. 規模の経済が効きやすい分野
・製造業
規模の経済が効きやすい代表例は製造業である。製造業では、コスト全体のうち工場や機械・製造装置などの固定費が大きな割合を占めるため、生産量を増やすことでコストダウン効果を期待できる。
・ソフトウェア業
規模の経済が効きやすいのは、製造業に限られたものではない。例えば研究開発費が大きいソフトウェア分野も同様だ。工場や機械装置などがなくても生産・販売量が増えるほど研究開発費という大きな固定費に対して規模を効かせることができる。なお研究開発費に関しては、巨額な費用がかかる製薬業界もあろう。
・デイサービス
人件費が大きいサービス分野などでも規模の経済が効くケースもある。近年では、デイサービス(通所介護)業界での規模の経済性が考えられる。施設の規模が大きければ人員はもちろん機能訓練・リハビリのための機器設備やプールなどへの投資が可能になる。小規模施設に比べて提供できるサービスの種類・質も充実し、利用者もより多く集まるだろう。
2. 規模の経済が効きにくい分野
固定費に対して変動費の割合が高い分野は、一般的に規模の経済が効きにくいといわれている。
・卸業
例えば卸業や仲介業のように外部からの仕入れ(変動費)が大きい事業が該当するだろう。卸業は、大量に安く仕入れるため規模の経済が効くと考える人もいるかもしれない。しかしそもそも卸業は、販売価格も安い薄利の事業である。コスト構造の特徴としても固定費よりも変動費の割合が大きいため、規模の経済が効きにくいといえる。
規模の経済を効かせるためには自社のコスト構造を知ることが重要
コスト戦略として規模の経済を効かせるためには、事業コストを固定費と変動費を分けることが必要だ。固定費や変動費の種類は、ここまでの部分でも説明したが、実は同じ費目でも企業によっては「固定費となるか」「変動費となるか」が異なる場合もあることは知っておこう。
そのため単に一般論だけで判断するのではなく、まず「自社では何が固定費となり何が変動費となっているのか」「固定費と変動費の割合はどうなっているか」といったコスト構造を正しく把握することが必要となる。
次に生産量を増やすことによって平均生産コストが最も低くなる点を把握することが大切だ。一般的に平均コストは、生産量が増えるにつれて減少していくが、一定の生産量を超えると逆に増加する「U曲線」を描く。規模の経済が最も効く生産量は、平均費用が最も低くなる点である。この点を把握するためには、以下のような点の検討および正しい判断が重要だ。
- 生産量を増やしてもキャパシティが超えないか
- その生産は平準化できるか
- 生産拡大をすることで組織体制が追いつくか
- 人件費や物流費など他のコストが増えないか など