もっとも手続きが煩雑となる遺言書がないケース

相続登記がもっとも複雑となるのは遺言書がないケースです。この場合には、以下の書類を用意しなければなりません。

①故人の出生から死亡までのすべての戸籍
(②相続関係説明図・作成すると戸籍を返してもらえる)
③遺産分割協議書(すべての相続人が参加。不動産を取得する方以外は実印で押印して印鑑証明書を付ける必要がある。ただし印鑑証明書は発行後3ヶ月以内でなくともかまわない)
④不動産を取得する方の住民票
⑤故人の住民票の除票
⑥不動産の固定資産評価証明書(資産税課で取得)
⑦法務省のホームページからダウンロードした申請書
⑧申請人の三文判

この中では2つのハードルがあります。上記①戸籍の収集と③の遺産分割協議です。多くの方は少なくとも2つの戸籍があります。出生時にはいられた親の戸籍と結婚された際に作られた戸籍です。

しかし、実際には結婚・離婚・引越しを繰り返しておられて戸籍が多い方もたくさんおられます。この場合、戸籍の追跡が非常に手間がかかります。また、分家など旧民法の制度で戸籍を作られている場合などには戦前の旧民法の知識が必要となることもあります。さらに、県境が変わったことで戸籍がある市区町村がなかなかつかめないというケース、戸籍自体が戦火などで滅失しているケース、戸籍の文字の判読が不可能なケースなどもあります。個人が出生されてからお亡くなりになるまでの連続した戸籍がないと相続登記をすることはできません。

また、③の遺産分割協議は当事者の話し合いがまとまらないと裁判所での調停・裁判となってしまうことがあります。また、相続人の方に連絡が取れない方がおられると家庭裁判所に申し立てて不在者の財産管理人の選任などの手続を取ることが必要となります。遺産分割自体にはしなければならない時期の制限はないものの、相続税の減税措置を受けるためには相続から10ヶ月以内に遺産分割を終わらせなければなりません。そうしないと多額の相続税が発生するケースもありえます。

遺言書がないケースでは、戸籍等の専門家である行政書士や登記の専門家の司法書士さんに相談・依頼をされたほうが良いということになります。不動産は多くの場合には一生をかけて購入された大切な財産です。円滑に承継がされるように遺言書は是非とも作成をして頂きたいと思います。

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