本記事は、吉野創氏の著書『売上を2倍にする 指示なしで動くチームの作り方』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています
ノルマは決めない、評価はしない、やる気にさせる
自発性を高めようとするときに、上司であるあなたは、まず何を考えますか?
やはり「にんじんをぶら下げて」やる気にさせようと考える人が多いのではないでしょうか。
確かに、にんじんは効果が出ることもあります。しかし、その効果は短期的・限定的であることがほとんどです。
例えば、今回のボーナスが50万円で、社員が喜んだとします。しかし、業績が悪化し、次の冬のボーナスが30万円になったときに、果たしてやる気は出るでしょうか。
このようなことを避けようとすると、にんじんをあげ続けなければなりません。しかし、経営上は難しいわけです。
ボーナスを例にしたのですが、月給、給料でも同じことです。
日本においては、年功序列・終身雇用という仕組みの中で、給料が毎年上がり続けていた時代がありました。それには、経済が成長し続けたという背景があります。
ところが現在では、ここ20年以上、日本全体で見ると給料が上がっていない、というデータがあります。もちろん企業によって事情は違いますが、データから見ても、にんじんをあげ続けることには、限界があることがわかります。
では、にんじんではなく、「評価」されれば頑張るようになるでしょうか。
実は、これも同じく一過性のものです。それは、「外発的な動機」という意味で、にんじんと同じだからです。
褒められれば嬉しいですから、「次も頑張ろう」という気持ちになります。すると、同じ行動を継続して行うことにもなると思います。
しかし、会社は、日々成果の拡大や成長を求めていますから、次年度も同じことをやっていたら褒められるかと言うと、どうでしょうか。
例えば、新人のときは褒められていたのに、2年目になったら「できて当たり前になる」ということがあります。また、主任になった途端に評価のハードルが上がり、むしろ評価を下げられる、といったことは普通に起きています。
やがて褒められなくなると、今まで頑張っていたこともやらなくなってしまいます。
「お金をもらえないとやらない」「評価されないとやらない」といった考え方が当たり前になると、社員が自発的に成長しようという状態にはなりません。
これが慢性化すると、その先には、自分の評価につながることはやるけれど、評価につながらないことには無関心、といった姿勢にもなり得ます。
例えば、以前、50名くらいの会社でこんなことがありました。
自分の部署に関係のある仕事は手伝うけれど、関係がない部署のことには無関心。ある部署では残業を余儀なくされているのにもかかわらず、別の部署ではさっさとタイムカードを押して帰る。そういった具合でした。
なぜかと言うと、自分自身の評価につながらないからです。
組織とはそういうものだという考え方もあるかもしれません。しかし、何千人もいる企業であればいざ知らず、そこは50名くらいの中小企業です。互いに助け合ってチームワークを高めた方が、生産性が高くなるのは明らかです。
では、「自分から自発的に継続的に成長していこう」というようなやる気のある社員を育てるには、どうすればいいのでしょうか。
ここでちょっと自分自身に矢印を向けて考えてみてください。
あなたはひょっとしたら、部下をやる気にさせるなら安易ににんじんをあげればいいと考えていたかもしれません。これは部下のことを深く考えなくても良い、楽な方法です。
しかし、上司がこのような状態であれば、決して部下の自発性は育ちません。
やはりまず、考え方を見直すのは上司からなのです。
上司はまず、部下を思う通りに「動かそう」という発想を変えていく必要があります。
そして、部下が「自分の内側からやる気になる」「自発的に、自分の意思で、動く」状態に成長していくようなアプローチが必要になります。
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