本記事は、吉野創氏の著書『売上を2倍にする 指示なしで動くチームの作り方』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています

互いの強みと弱みを知っているチームは離職率が下がる

退職届
(画像=Hirotama/PIXTA)

一体感を高めて、理想のチームを作っていくための簡単な「一体感の高め方3ステップ」をお話ししたいと思います。

社員の離職率を下げるには、社員が互いに「存在価値」を見出すことが大切です。

チームのメンバーが、互いの関係を強固なものにするには、各自が組織・チームの中で「自己肯定感」を高めることが必要です。自己肯定感とは、自分で自分を肯定できること。「自信がある」「周囲の評価にぶれない」力、と理解しておいてください。

つまり、そのような個を作り、互いの存在価値を高める行動を引き出すマネジメントが必要になるのです。

それでは、今すぐできる簡単な「一体感の高め方3ステップ」をご紹介します。

ステップ1【5Aを意識して習慣化する】

5Aとは、「挨拶、ありがとう、アイコンタクト、アクション、愛和」の頭文字を取ったもの。5つの「あ」で5Aと称しています。

この5Aは、今まで支援先の現場で、組織の一体感を高めるベース作りに効果の高かった手法で、習慣化すべきことのトップ5です。

具体的には、このような簡単なことばかりです。

・自分から挨拶をする
・感謝を声に出して伝える
・アイコンタクトをして、コミュニケーションする

この5Aを、上司が見本となって率先垂範しましょう(ちなみに、上司がやらないと、部下の間で習慣化することはほぼありません)。

チームで楽しみながら実施するのがコツです。

ステップ2【互いの理解を深める】

ここでは、シンプルな手法として「自己開示法」を紹介します。

ステップ1が十分にできている場合は、このステップ2から始めても問題ありません。

まず、個人の人となりを知るための場を作ること。これは、まとまった時間のミーティングが良いでしょう。

「充実した体験」(苦労したが達成感があった、喜びを感じた仕事での体験)を共有するように、発表していきます。

過去のエピソードを発表して、そこからの教訓や学びを話します。その後、他のメンバーから発表者に感謝を伝えつつ、そこから何を「学んだか」を共有していきます。

そうやって、互いの日々の行動の背景にある、価値観、判断基準、その経験値を知ることで、互いの強みも、弱みや不足しているところも、見えてきます。

しかし、ここで大切なことは、人の自己開示に対してダメ出しをしないことです。正義感から「弱いところ、不足しているところ」を指摘して、「**が良くないと思う」とか「〜をやめて欲しい」とか「〜を変えて欲しい」などとダメ出しをしてはいけません。

中には、ダメ出しを「良かれと思ってアドバイス」とばかりにする人もいますが、お勧めしません。

なぜならば、本人がアドバイスを求めていない場合には大きなお世話ですし、信頼関係がまだできていない場合には、そこから関係の質が悪くなるリスクがあるからです。

そうなると、せっかく勇気を持って発表した本人も嫌な思いをすることになります。そして、このミーティング自体が「アドバイス、ダメ出し会」のような感じの悪い時間になり、逆効果です。

充実した体験に対しては、徹底してリスペクトし、感謝と賞賛、学んだことをシェアしていくことが大切です。

ステップ3【大切にしたい仕事観を揃える】

その後、上司は意図して、「仕事観」を揃えていきます。

例えば、充実した体験の話の後を引き取って、「みんなで目指している理想の組織・チームでは、こういう仕事への姿勢や、メンバー同士の関わり方を大切にして欲しい」といったことを話します。

そして、「だから**を大切にしよう」「だから**はやめよう」といった基準を明確に提示します。

「仕事をしていて、楽しいとき」って、こうだよね。逆に「仕事をしていて、辛いとき・悲しいとき」ってこうだよね。そうすると、「どんな職場が、素晴らしい?」などと、良い職場の在り方、良い働き方について、意見交換するのも良いでしょう。

また、上司から「私の働く目的は***です。あなたはどう?」と自己開示しながら聞いてみるのも良いでしょう。

メンバーから、「私は**が大事かな〜」といった話が出て、互いの「働く目的」を理解するチャンスになれば、さらに理解が深まります。

ポイントは、働く上で大切にしたい価値、互いの働き方についての「理想像」を伝えることで、「仕事について考える」機会を増やし、仕事観を揃える努力をすることです。

メンバーは、このような3ステップを反復していく中で、互いに「共感したこと」が共通体験となり、関係の質は次第に高くなります。

「心理的安全性」の高い職場では、自分の強みも弱みも自己開示し、互いに受け入れてくれるメンバーを仲間として大切にします。

普段から仲間を応援しようという意識が高くなると、「どうすれば、仲間の『働く目的』を応援できるか?」というように、自分ができること、してあげられることを考えて、仕事をするチームとなっていくでしょう。

現在では、社会人の退職理由のトップ3に必ず入っているのが「職場の人間関係が悪い」ことです。

逆に言うと、上司も仲間も、みんなが自分の「働く理由」を理解してくれていて、応援してくれるような職場では、辞める人は少ない、ということです。

これからは、職場のマネジメントに「『働く目的』を互いに理解し、共感し、互いの人生を応援する時間」を作る工夫をしましょう。

売上を2倍にする 指示なしで動くチームの作り方
吉野創(よしの・はじめ)
株式会社トゥルーチームコンサルティング 代表取締役/一般社団法人 自走式組織協会 代表理事。北九州大学法学部卒業後、ジーンズメーカーEDWINで営業に従事。その後、経営コンサルティングファームにおいて約300社の財務分析と管理会計の構築ノウハウを習得。マネジメント責任者、支社長などを歴任し、コンサルタントの育成にも携わる。動かない人に、さらに深く関わる合宿や研修を延べ5,000人へ実施。社員が自発的に動く成長ノウハウを見出し、体系化。2014年「株式会社トゥルーチームコンサルティング」を設立。指示なしでも社員が動く組織づくりは、経営者の組織と業績の悩みを同時解決する手法として公式認定され、「自走式組織®」として2018年に商標登録。100社以上の「自走式組織®」を生み出し、クライアントは3年で売上2.1倍、経常利益4.3倍、わずか1年で粗利益率7.9%改善や、離職率を0%にするなど多くの成功事例を持つ。九州男児らしく人間味あふれる支援が強み。業績がアップするだけでなく、働く社員のやりがいと一体感のある理想の組織になったと多くの経営者から厚い信頼を受けている。

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