本記事は、吉野創氏の著書『売上を2倍にする 指示なしで動くチームの作り方』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています
「働く目的」を満たせば、優秀な部下は辞めない
部下が自発的に、自分の意思で働く状態にしていくために、あなたが考えるべき最も大切なことは、部下の「働く目的」を知ることです。
「部下の働く目的って……それはもちろん給料でしょ」と思っていませんか?
ほとんどの人は、生活のために仕事をしているのは間違いありません。
しかし、「それだけではない」のです。
では一体、「生活のための給料」以外の「働く目的」とは何でしょうか。
実はこれが、何のために働くのか、といった本質的な問いに対する答えになるのだと思います。
今、働く人の意識は大きく変化しています。それは、コロナ禍の影響によってさらに加速しました。
それは、人から管理される働き方で、嫌な上司の下で我慢して働くよりも、自分の好きな働き方で仕事をして、人生を充実させたい、といった変化です。
また、会社がいつまでも盤石であるというような考えを持っている人は、今の時代ほとんどいません。
事実、世の中の多くの企業で、副業解禁への動きが高まっています。
どういうことかと言うと、会社はもう社員の生活を守れなくなってきているわけです。本業も大事だけど、副業も認めるよ、だから自分の生活は自分で何とかしてね、という会社側の意思表示です。
こういう社会的な背景から、自分の生き方やこれからのライフプラン、人生を深く考える人が増えたのです。
人生を深く考えると、職場の人間関係に対する考え方も変わります。
例えば、「職場でたまたま自分より先に入社した人になんでここまで言われないといけないの」とか、「なぜこんな指示命令に我慢する必要があるの」というような思いが募ってきたとします。
すると、今では多くの人が、我慢して勤め上げようという選択肢は選びません。職場の人間関係に我慢して勤めるくらいなら、場所を変えて生きよう、と考えるのです。
職場の人間関係、特に上司との関係に価値を見出せていなければ、なおさらです。
上司が自分の人生にとってあまり価値がなく関係もない人であれば、我慢して言うことを聞く必要もないわけです。
「働く目的」が単に給料・生活だけではないと考える人の多くは、自分自身の人生についてより深く考えているものです。人生の価値、クオリティ・オブ・ライフを高めたい、と考えます。
そして、自分の人生を真剣に考えていればいるほど、自分が働く職場、組織、チームについて真剣に考える傾向は高まります。
すると、ますます「自分にとって職場の上司はどういう存在なのか」を考える人が増えていきます。
「自分は何のために働くのか」をよく考えたときに、上司がその「働く目的」を理解し、自分自身の人生を支援してくれるのであれば、大切な存在になります。
しかし、そうでないならば、部下にとって上司との関係性を大切にする価値はありません。
つまり、あなたが部下の人生を本当に考えて、その部下の「働く目的」を理解し、応援する存在にならなければ、部下から退職願が出る日もそう遠くはないということです。
現実として、人生の中で最も多くの時間を費やすのは、やはり働いている時間です。
それが自分のクオリティ・オブ・ライフの向上につながる時間になっていないのであれば、その会社や組織やチームで働く価値は低下していきます。
つまり、「社員から選ばれる」会社、組織、チーム作りをしていかなければ、社員は辞める、さっさとよそへ転職をしていく、ということにつながっていくのです。
部下の「働く目的」を「お金」「時間」「キャリア」の3タイプに分ける
「働く目的」とは、「働くことで、その人が得たいもの」のことです。
実際に、人が働くことで得られるものは多岐にわたります。
私は、過去5,000人の会社員に合宿や研修を実施し、その方々の「何のために生きるのか」「何のために働くのか」という原点とその背景を見てきた経験から、「働く目的」は大きく3つに分かれると考えています。
それは「お金」「時間」「キャリア」の3つです。
その人にとって、お金が大事か、自分の時間が大事か、キャリアが大事か、という大きなタイプ分けと考えてもらえばいいと思います。
部下のことをよく知ろうと思うなら、まずこの3つのタイプに分けて部下を見てみましょう。
コツとしては、「その先に何を実現したいのか」を考えることです。
・お金を得ることで、自分や誰かを幸せにしたい。 ・時間を大事にして、その時間を使って、自分や誰かを幸せにしたい。 ・キャリアを大事にして、成長することでさらに価値を提供したり、誰かの期待に応えたりすることで、自分や誰かを幸せにしたい。
部下の目的のその先にあるものをしっかりと聞き、理解する努力をしましょう。そして、部下の「働く目的」に「共感」するのです。
そうすれば、部下がなぜそのタイプになったのか、次第にその理由やバックグラウンドを知る機会が増え、部下の「働く目的」をさらに理解できるようになります。
すると、部下を応援するポイントがずれない上司になっていき、部下との対話の質が高まることを実感できるはずです。
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