相続時精算課税制度の改正と留意点

相続時精算課税制度については平成27年から制度が変更となります。これは相続時精算課税制度を利用しやすくする変更です。具体的には、

①26年までは贈与者が65歳以上→27年以降60歳以上
②26年までは受贈者(もらう方)が推定相続人に限定→27年からは孫へ贈与するためにも相続時精算課税制度を利用できる。(孫への贈与により相続を1回省略できる)

という改正がされます。賃貸物件の移転を念頭に置けば利用幅は大変広がります。特に、60歳の方の平均余命は30年程度です。賃料収入を子息等に移転させればその節税効果は非常に高い。相続税節税のためには長生きしなければ「損」です。一方で、注意したい点としては、

①贈与による所有権移転登記の登録免許税は1000分の20なので、1億円なら200万円の税金がかかる(代理は司法書士だが依頼すれば報酬も発生する)。相続による所有権移転登記なら1000分の4なので40万円。また不動産取得税も発生する。
②賃貸物件を移転させれば、保有しているだけで固定資産税がかかる。また、住民税・賃料収入に対する所得税もかかる。
③賃貸物件については入居者リスク・修繕コストなどが発生する。

このため、贈与の対象物件は、各種の負担に耐えられる物件でなければ贈与の意味がありません。相続時精算課税制度を利用して節税を目指される場合には物件の価値などを慎重に検討されることが大切と言えます。特に相続時精算課税制度を一度利用してしまえばその後、元の暦年贈与に戻ることができないという点には注意をしたいと言えます(毎年110万円ずつコツコツと贈与をして節税をするということができなくなります)

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