ボトムアップ・トップダウンの組み合わせも選択肢のひとつ

ボトムアップ・トップダウンにはそれぞれ強みと弱みがあるため、可能であればシーンに合わせて使い分けることが望ましい。例えば、迅速な意思決定が求められるシーンではトップダウンを、現場を改善したい場合はボトムアップのように使い分ければ、理想により近い体制を築ける。

実は、ボトムアップとトップダウンを組み合わせた方法はすでに存在しており、この方法は「トップダウンデモクラシー」と呼ばれている。どのような手順で意思決定を下すのか、基本的な流れを以下で紹介しておこう。

【STEP1】上層部による提案

まずは、経営者などの上層部がプロジェクトなどに関するアイデアを出す。ただし、そのまま指示をするだけではトップダウンと同じであるため、トップダウンデモクラシーでは「変化の必要性」を訴えることが重要だ。

従業員に変化の必要性が伝わると、社内全体が現状に危機感をもつようになり、新たなプロジェクトや変革を進めやすくなる。

【STEP2】下層部によるプロジェクトの推進

次のステップでは、上層部から伝えられたプロジェクトを下層部が推進する。現場が中心となって試験運用を行えば、本格的な運用の前にリスクや課題などを見つけやすくなる。

ここではより多くのリスク・課題を見つける必要があるため、事前に以下のような体制を築いておくことが望ましい。

・さまざまな立場や部門の従業員を集めておく
・各従業員の役割を明確にする
・積極的に課題解決に取り組めるような環境を用意する

例えば、各従業員に十分なリソース(資金や設備など)が与えられていない場合は、積極的な課題解決が難しくなってしまう。少しでも多くの課題・リスクを見つけることが将来の成功につながるので、準備にかける時間やコストは惜しまないように意識したい。

【STEP3】上層部による意思決定

下層部(現場)から課題解決に関する提案が届いたら、その内容をもとに上層部が最終的な意思決定を下す。ここで意識しておきたいポイントは、現場の意思をできるだけ反映させることだ。

上層部が独断で最終決定をすると、トップダウン型と変わらない企業体質になってしまう。トップダウンデモクラシーのメリットは、上層部・下層部の提案をバランスよく反映できる点なので、現場の意思をくみ取りながら最終決定を下すことを心がけたい。

なお、上層部・下層部のやり取りが多いトップダウンデモクラシーは、ボトムアップに比べても意思決定のスピードが遅い。つまり、緊急性が求められるシーンには適していないため、その点に注意しながら導入する範囲を検討しよう。