本記事は、亀山陽平氏の著書『金持ち社長 貧乏社長』(セルバ出版)の中から一部を抜粋・編集しています
FIREを達成した社長は幸せなのか
FIREとは
数年前からFIREという言葉を聞くようになりました。ここでいうFIREとは「Financial Independence, Retire Early」の頭文字を取った言葉です。日本語に訳すと「経済的自立と早期リタイア」という意味になります。
FIREは欧米を中心とした流れで始まりましたが、日本でも自由なライフスタイルを望む人が増えて、30代、40代で若くしてFIREを実現している方もいます。
FIREのためには年間支出の25倍の資産が必要
FIREを実現するためのセオリーとして、「年間支出の25倍の資産」が必要とされています。例えば、毎月の支出が25万円の人は年間支出300万円となります。この25倍ですから、7,500万円がFIREを実現するためには必要ということです。
しかし疑問に思う社長もいるでしょう。
「年間支出の25倍ということは、25年分の蓄えしかないのに、早期リタイアなんてできるの?」
そこで、お話ししてきた資産運用が必要になってくるのです。年間支出の25倍の資産を運用の元本として運用を行い、運用益で生活費を賄っていくのです。
FIREを達成した社長は幸せなのか?
FIREを達成した社長でもちろん仕事から解放され、好きな場所で好きなときにやりたいことができる生活を謳歌している方もいると思います。
しかし、私が知っている社長はFIREを達成しても、結局また仕事を再開する方が多い印象です。社長に聞くと「やはり仕事をしていないと充実感がない」と言うのです。
人はやはり仕事をして、誰かの役に立ち、貢献し感謝されることで、生きがいを感じる生き物なのかもしれません。
もしFIREを目標にしている社長がいたら、FIRE達成が社長にとって本当に幸せにつながるのかはよく考えてみたほうがよいでしょう。
日本人に足りない2つの教育に今からでも投資するべし
日本に足りない2つの教育とは
私は、日本には2つの教育が足りていないと考えます。まずは「金融教育」です。
日本の金融は、欧米に比べて遅れていると言われています。経営の神様と言われるピーター・ドラッカーは「日本の金融業界は1950年代レベル」と揶揄しました。金融広報中央委員会が2016年に「金融リテラシー調査」を行いました。18〜79歳を調査対象として、金融リテラシーに関する問題の回答の正答率を調べたところ、全体の正答率は55.6%でした。
正答率を他の諸外国と比較すると、アメリカより10%程度下回っており、ドイツ、イギリスと比較しても7〜9%下回っていたのです。日本は世界第3位の経済大国とされています。しかし、この結果からもわかるように、日本人の金融リテラシーは決して高いとは言えないのです。
なぜならば、私たちは学校で資産形成、資産運用、金融などを学ぶことがありません。大学で経済学部や経営学部に行った人は学んだことがあるかもしれません。しかし、大多数の人はこれらの教育を一切受けずに社会人になっているのです。
また、日本では家庭においてお金の話をすることをよしとしない方も多くいます。「お金は汚いもの」と捉えている人もいます。食事のときに子どもがお金の話をしたら怒られるといった家庭の話も聞きます。
アメリカの子どものお金の教育
一方で、アメリカやヨーロッパでは、小中学校の必修カリキュラムに金融教育が入っています。金融教育といっても、最初は個人のお金の計画や管理のやり方といった基本的なことから教わります。現預金で持っている場合と株式や投資信託などで運用する場合はどちらが有利か、どんなリスクがあるのかを学校で学ぶことができるのです。そして、アメリカでは家庭においても親や家族からお金の教育を受けます。
その結果として、日本では大人でも知らない金融の知識を、欧米の中高生は当たり前のように知っています。日本のシニア層の資産は20年間で横ばいなのに対して、アメリカは約3倍増加しています。この違いも早くから金融教育を受けているかどうかによる影響が大きいと考えます。
ようやく日本でも、2022年度から高校の家庭科の授業で資産形成がカリキュラムに組み込まれます。金融教育は今からスタートしても決して遅くありません。早く始めた者勝ちです。お子さんがいる場合は、ぜひお子さんにもお金の知識を伝えてあげてください。
心の教育
日本に足りない2つの教育の2つ目は「心の教育」です。日本では、うつ病の方が潜在的な人数を含めると1,000万人以上もいると言われています。経済協力開発機構(OECD)によると、多くの先進国で新型コロナの前後で、うつ病、うつ状態の人が2〜3倍以上に増えたとされています。私がサラリーマン時代も、営業の厳しい仕事でうつになってしまった友人が何人かいました。
経営者のうつも増加しているようです。経営者は孤独です。お金や人間関係のストレスから心を病んでしまうのです。
悩みや不安がない方はいません。どれだけ周りから羨ましがられ、順風満帆に見える方でも必ず悩みはあります。だからこそ、周りの人の声かけやサポートに加えて、「自分の心をどのように扱うか?」の「心のマネジメント」も教育でしっかりと伝えるべきだと考えます。社長自身も心のケアにしっかりと投資をした方がよいでしょう。
「生きるための心の教育」と「稼ぐための金融教育」。この2つの分野が今後ますます重要になってきます。
人生100年時代に求められる2つの力とは
人生100年時代に求められる2つの力とは
いよいよ最後の項となりました。ここまで金持ち社長と貧乏社長の違いからお金を残し、増やすための具体的なポイントまでお伝えしてきました。
最後は、これまでのまとめとして、人生100年時代に求められる2つの力についてお話しします。
2020年の日本人の平均寿命は男性が81.64歳、女性が87.74歳となっています(厚生労働省調べ)。70年余りで平均寿命は30歳以上も伸びています。『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』リンダ・グラットン著では、2007年に生まれた日本人の半数は107歳まで生きる確率があると試算されています。
今までの人生計画は平均寿命を想定して80歳までのシミュレーションが多かったですが、今後は人生100年時代を想定したシミュレーションが必要になります。
人生100年時代には「本業で稼ぎ続ける力」と「本業以外で稼ぎ続ける力」の2つの力が求められます。
本業で稼ぎ続けるためには、常に時代の変化に合わせて、お客さんのニーズに合うことをしなければいけません。ダーウィンが『種の起源』で言った「生き残る種とは、最も強いものではない。最も知的なものでもない。それは変化に最もよく適応したものである」という言葉を常に意識して、経営の実践に生かしていく必要があります。
本業以外で稼ぎ続ける力は、資産形成を会社、社長個人両方で実践することで身につけられます。本業で稼いだお金に働いてもらうことも今後は強く意識する必要があります。
「本業で稼ぎ続ける力」と「本業以外で稼ぎ続ける力」の2つの力があれば、どのような時代になろうとも、社長の理想の人生を必ず実現できます。
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