本記事は、中谷昌文氏の著書『なぜ大富豪のサイフは空っぽなのか?』(ビジネス社)の中から一部を抜粋・編集しています

アインシュタインは複利を「人類最大の発明」と言った

発明
(画像=patpitchaya/stock.adobe.com)

お金を上手に増やしたいと考えたとき、最も手っ取り早いのは「複利」の力を借りることです。複利とは、お金を投資することによって得られた利子を、さらに投資に回すことで、利子も含めた新たな元金に利子がつくことを指します。

イメージとしては雪だるまがわかりやすいと思います。雪だるまは最初、小さな雪のボールからつくります。それを雪上で転がしていくと、付着した雪の上にさらに新たな雪がついていき、どんどん大きくなります。

利子も同様で、最初に投じるお金(ボール)に利子(雪)がつき、その利子の上にさらに利子が上乗せされていくことで、資金がどんどん増えていきます。このことから、「雪だるま式に元手が増える」などとも表現されます。

具体例で考えてみましょう。

たとえば、元手となる資金が100万円あったとしましょう。このお金を金利2%で運用すると、一年後には102万円になります。このうち2万円は元金から生じた利子なのですが、そのまま運用すると、翌年にはこの2万円を含めた102万円に利子がつきます。

同じく102万円を金利2%で運用すると、一年後には104万400円になります。元手の100万円と初年度の利子(2万円)にも利子がつくため、2万400円が二年目の利子になるわけです。

これが複利の力です。元手に利子がつき、その利子を加えてさらに運用し続けることで、資産はどんどん大きくなるのです。ポイントは、途中で利子を使ってしまわないこと。利子を上乗せしてさらに運用することで、資産が拡大していきます。

長期運用ほど複利効果は大きくなる

こうした仕組みは「複利効果」と呼ばれています。長く運用すればするほど、複利効果は大きくなります。よく投資の世界では「長期投資が大事」といわれますが、複利効果を見ればその理由もわかるかと思います。

ちなみに、途中で利子を回収して運用することを「単利」といいます。先ほどの例でいえば、得られた利子の2万円を回収し、翌年も100万円で運用する方法です。それだと、毎年の利息は変わらず、資産の拡大が加速しません。

複利と単利の差は、投資金額や金利が大きければ大きいほど、あるいは投資期間が長ければ長いほど開いていきます。たとえば1,000万円を年利5%で30年間運用した場合で比較してみましょう(図表8)。30年後の差は大きく広がっているのがわかるかと思います。

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(画像=『なぜ大富豪のサイフは空っぽなのか?』より)

単利の場合は、毎年50万円の利息が得られるだけなので、30年後には2,500万円にしかなりません。一方で複利の場合は、毎年50万円につく利息が上乗せされながら、そこにさらに利子がつくため、30年後のトータルは4,300万円にもなります。その差は実に1,800万円以上です。

このように複利効果は非常に大きいのです。資産を大きくしたいなら、複利効果を得ながら、より多くの資金をより大きな金利で、より長く運用することが大切です。「72の法則(資金が倍になる年数=72÷金利)」でもわかるように、金利が大きければ大きいほど、資産が倍になる年数は短くなります。

そこで、より多くの金利が得られる海外も視野に入れることが重要なのです。アルバート・アインシュタインは、次のような名言を残しています。

「複利は人類最大の発明。知っている人は複利で稼ぎ、知らない人は利息を払う(Compound interest is man’s greatest invention. He who understands it, earns it. He who doesn’t pays it.)」

かつて日本で行われた預金封鎖ではどんなことが起きたのか?

資産防衛の第一歩は、資産の一部を海外に移すことです。海外の銀行に口座をつくり、そこに資産の一部を移動させておけば、日本にのみ置いておくリスクを軽減することができます。日本円が盤石な状況にあるのならいいのですが、これまでに何度も述べてきたように、日本の経済状況は厳しいです。

ここで思い出してもらいたいのは、かつて日本で行われた預金封鎖です。いったいどのようなことがあったのでしょうか。

それが起きたのは、戦後、間もなくのことでした。

戦争には大量の資金が必要です。そこで政府は戦時中に大量の国債を発行し、国民にも購入を促しました。その結果、国の借金は急速に膨らみ、1944年には対GDP比で200%を超える水準にまで達していました。

その翌年の1945年に日本は敗戦。当時、食料をはじめとする物資はわずかしかなく、物価は急激に上昇しました。そうして日本全土をインフレの波が襲います。お金があっても物資は限られているため、「物価上昇=インフレ」になるのは当然です。

もちろん国の財政も危機的状況に陥ったのですが、それで政府はどうしたのかというと、なんと、その負担を国民に押し付けたのです。具体的には、国民が持つ10万円超の資産(預貯金、土地、建物、株式など)に最大90%の税金を課したのです。

それがいわゆる「財産税(預金税:capitallevy)」と呼ばれるものです。個々人の資産の大半は、新たな税金が課せられたことにより、ある日突然、消失する(政府にとられる)こととなりました。

その前段階として、あらかじめ銀行の預金が凍結され、徴税に必要な資産の把握が行われています。つまり、預金が〝封鎖〟されたわけです。

90%の税率というとなかなかイメージしにくいかもしれませんが、たとえば1,000万円の資産を有していた方の場合、そのうちの9割にあたる900万円が税金として徴収されるため、残りは100万円になってしまいます。

1億円の資産を持つ人であれば9,000万円、10億の資産を持つ人であれば9億円と、とんでもない額が税金として徴収されることになります。考えられないことですが、これが過去に、しかもこの日本で、実際に起きたことなのです。

ちなみに、政府が預金を封鎖した理由は、「膨らんだ債務を減らすため」「必要な財政出動を行うため」ということの他、「国民の資産を把握するため」「格差を是正するため」など、さまざまな理由があったといわれています。

ただ、どんな理由があるにせよ、急に預金を封鎖されては困ります。そして日本の現状を見るにつけ、今のところその可能性は低いとは思いますが、まったくゼロとは言い切れないように思います。そうしたリスクを回避するには、やはり海外に資産を移すほかにないのです。

なぜ大富豪のサイフは空っぽなのか?
中谷昌文(なかたに・よしふみ)
社会貢献活動家。「国際ビジネスホールディングスグループ」創立者、「国際ビジネス大学校」理事長、特定非営利活動法人「国際コンサルティング協会」理事長などを務める。大学卒業後、教師として勤務した後、渡米して様々な経験を積む。その過程でNIKEシューズと出会い、日本にその魅力を伝える。それらの経験で培った人脈を活かし、2004年に若手起業家が有名実業家から学ぶ場「志魂塾」を立ち上げる。2011年には「国際ビジネス大学校」を創立し、若手起業家の育成に注力。1995年より、難病の子どもを東京ディズニーリゾートにお連れする活動を25年以上続ける傍ら、1994年から個人的に、後に児童養護施設などにランドセルを届ける「タイガーマスク運動 ランドセル基金」の活動もスタート。これまで国内で1,300個のランドセルを手渡しでプレゼント、海外へはメーカーの協力により10万個以上を寄贈。その他、NPO法人や一般社団法人を立ち上げ、営利目的だけでなく「社会に貢献できるビジネスモデル」を国内外に発信している。

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