本記事は、中谷昌文氏の著書『なぜ大富豪のサイフは空っぽなのか?』(ビジネス社)の中から一部を抜粋・編集しています

お金の情報は「公開されない」ことに価値がある

情報
(画像=taa22/stock.adobe.com)

それぞれのプライベート・バンクがどのくらいの成果を上げていて、どのくらいの収益を実現しているのかは、基本的に公開されていません。富裕層にとっては秘匿性が大きな魅力であることに加えて、各行が情報管理を徹底しているためです。

プライベート・バンクという機関ももちろんのこと、資産家、富裕層、権力者などの顧客も、情報管理には非常に気を使っています。資産に関する情報が外部に漏れることで、世間から大きな注目を受けることになりかねないからです。

お金の情報は、その金額が大きければ大きいほどセンシティブに扱われます。税務当局はもちろん、犯罪や詐欺まがいの行為、マネー・ロンダリングなどを調査する国家機関も、大きなお金の動きには注意を向けているからです。

税務当局からの視線には、各国の富裕層が注意しています。正しく運用されているなら問題ないだろうと思われるかもしれませんが、国は富裕層からいかに徴税できるかを考えており、そのために法律を変えることもあるのです。正規の方法で運用していても税金でとられてしまうこともあります。また、現在は良くても、事情が変わることも想定されます。

資産を次世代へと引き継いでいくためには、多方面からリスクを考えなければなりません。そうした発想がなければ、何百年にもわたって資産を形成することはできないのです。

少ない情報を探った人だけが実績を上げられる

資産を育て、育てた資産を守り抜くには、個人や組織だけでなく、場合によっては国とも対峙しなければならないこともあります。国の方針は、法律や規制、あるいは政策として表れるため、それらをよく見て柔軟に戦略を変えていく必要があります。

日本人の多くは「日本という国は安心だ」という感覚を持っていると思います。しかし、それは必ずしも約束されたものではありません。この先、日本がどうなるのかは誰にもわからないからです。まして、資産運用・資産形成の点から見れば不確かな点が多くあります。

日本だけでなく、「この国に投資していれば安心だ」とか、「この金融商品を持っていれば間違いない」などの発想は、投資の柔軟性を失わせてしまいます。

一方で、自らの資産をきちんと形成し、その情報をなるべく表に出さないことの意義を理解している人であれば、より柔軟に対応していけるはずです。特定の国の制度や法律に縛られず、自由に資産を育てていくことができるからです。グローバルな社会にいる以上、世界各地に目を向けないのはむしろリスクといえます。

資産家や権力者の情報はなかなか表に出てきませんが、そこには理由があり、限られた情報を精査して行動した人だけが、より良い投資を実現できるようになっているのです。「虎穴に入らずんば虎子を得ず」という言葉もあるように、まず、その世界へと踏み込むことが大切です。

怪しい情報や信憑性の低い投資話を見抜くには

海外投資を実践していくにあたり、プライベート・バンクやウェルス・マネージャー、あるいは他のコンサルタントなど、さまざまな専門家と付き合う機会が増えていくと思います。その際は、相手をよく見ることが大切です。

数百年の歴史を誇る伝統的なプライベート・バンクなどは大々的に宣伝を行うこともありませんし、すでにお付き合いのある顧客に迷惑がかかる行為はまずしません。だからこそ、一般の人には知られていないのです。

しかし、実際に調べてみると、さまざまなプライベート・バンクがあることがわかります。しかしながら、そうした中には、金融や投資に関する事柄をよく知らない人を狙って、悪質なサービスを提供しようとする業者が潜んでいる可能性もあります。

これはプライベート・バンクに限ったことではありません。投資に関する情報は、金融リテラシーが低い人にとっては、罠だらけなのです。事実、日本でも詐欺まがいの行為が横行しており、それに騙される人は後を絶ちません。

金融庁もさまざまな方法で警笛を鳴らしたり規制を強化したりしていますが、その効果は限定的です。やはり投資をする個々人が注意しなければならず、自らの行動にも責任を持つことが求められます。

より良い資産形成を行うためには、自らの投資に関するリテラシーを高めることが重要です。それは書籍やインターネットを通じての情報にとどまらず、実践を経て身につけることが大事なのです。

体験しながら知見を増やす

日本人の多くは、真面目かつ勤勉であることに加えて、非常に頭もいいです。少なくとも勉強ができる人が多く、社会人になってもさまざまな情報や知見を吸収しています。それでも、中には経験しなければわからないこともあるのです。

実際に投資をしてみなければ、何が怪しい情報で、どんな話が信憑性に乏しいのかもイメージしにくいと思います。とくに海外のことであれば、なおさら表面的な内容しかわからないことも多いでしょう。まったく予備知識がないまま海外での投資に手を出すのはかなり大きなリスクがあります。増やせるはずのお金が増やせないだけでなく、経験値も積めずに、学習したことも血肉とならない可能性が高いです。

だからこそ、まずはよく情報を収集したうえで一歩を踏み出してください。投資をして、知識を実地で検証してみて、結果を分析する。この繰り返しです。事前にリスクを把握しておけば、回避できるトラブルや損失もたくさんあります。知ることと動くことが、投資における最大の学びとなるのです。

紹介したさまざまなスキームや方法論は、過去、勇気ある先人たちが経験した知識の集積です。それらの多くは度重なるリスクをくぐり抜けて、現代を生きる私たちに伝えられているのです。

こうした正しい方法論に基づいて実践していくことが金融リテラシーを高め、ひいては怪しい情報や信憑性の低い投資話を見抜くヒントにもなるはずです。この点が、私たち日本人に最も不足していることではないでしょうか。

世界中のお金持ちが実践してきたことを参考にしつつ、確かな方法でともに資産形成を進めていきましょう。

なぜ大富豪のサイフは空っぽなのか?
中谷昌文(なかたに・よしふみ)
社会貢献活動家。「国際ビジネスホールディングスグループ」創立者、「国際ビジネス大学校」理事長、特定非営利活動法人「国際コンサルティング協会」理事長などを務める。大学卒業後、教師として勤務した後、渡米して様々な経験を積む。その過程でNIKEシューズと出会い、日本にその魅力を伝える。それらの経験で培った人脈を活かし、2004年に若手起業家が有名実業家から学ぶ場「志魂塾」を立ち上げる。2011年には「国際ビジネス大学校」を創立し、若手起業家の育成に注力。1995年より、難病の子どもを東京ディズニーリゾートにお連れする活動を25年以上続ける傍ら、1994年から個人的に、後に児童養護施設などにランドセルを届ける「タイガーマスク運動 ランドセル基金」の活動もスタート。これまで国内で1,300個のランドセルを手渡しでプレゼント、海外へはメーカーの協力により10万個以上を寄贈。その他、NPO法人や一般社団法人を立ち上げ、営利目的だけでなく「社会に貢献できるビジネスモデル」を国内外に発信している。

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