ゴールデンパラシュートが実施された事例
ゴールデンパラシュートの事例としては、アメリカで食品・タバコ産業を営んでいた『RJRナビスコ』によるものが有名だ。
同社はゴールデンパラシュートを設定していたが、1989年に投資ファンド『KKR』による敵対的買収の標的になる。結果的には経営権を握られる形となったが、当時のCEOであるロス・ジョンソン氏には5,800万ドルもの退職金が支払われた。
このように、実際にゴールデンパラシュートが発動した例もあるが、世界的に見ても実施例は極端に少ない。また、2000年代に入ってからは欧米を中心に、ゴールデンパラシュートを規制する動きが見受けられる。
役員退職金の上限金額を設定/フランス
2000年代からゴールデンパラシュートが問題視されていたフランスでは、退職金の上限金額が設定されている。2016年11月のコーポレートガバナンス・コードの改訂において、役員退職金の上限を「2年間の報酬」とする原則が新たに加えられた。
仮に役員の年収が1,000万円の場合は、2,000万円が退職金の上限となる。つまり、買収元の資金力を圧迫することが難しくなったため、買収防衛策としての効力は大きく下がったと言える。
ゴールデンパラシュートの実質的な禁止/スイス
貿易業などが盛んなスイスでは、2013年に「役員報酬に上限を設けるイニシアチブ」が国民投票の対象になった。結果的にこの国民発議は否決されたものの、上場企業の役員報酬設定については、株主の採決が必要になる新たな規則が設けられている。
この規則により、経営陣の報酬は大きく制限されたため、実質的にはゴールデンパラシュートが禁止されたと言える。ちなみに、スイスでは以前から高い役員報酬が問題視されており、CEOによるボーナスの不正受給などが目立っていた。
経営陣によるゴールデンパラシュートの悪用/アメリカ
1970年代からゴールデンパラシュートが普及していたアメリカでも、その在り方や公平性が長く議論されている。
例えば、プログレス社のCEOを務めていたビル・ジョンソン氏は、2012年7月に新会社のCEOに就任した。しかし、翌日になると突然辞任を発表し、退職金として約34億円分の金銭を受け取っている。
このような事例があるため、アメリカではCEOが急に辞任をすると、ゴールデンパラシュートの悪用が疑われる傾向にある。同様のケースが増え続ければ、フランスやスイスのような規制がかけられる日も近いだろう。