デメリットやリスクを踏まえて慎重に実施判断を

日本ではあまり馴染みのない言葉だが、アメリカではゴールデンパラシュートが主流な買収防衛策として機能している。経営陣にとってはメリットが大きい手法なので、将来的には実施する国内企業が増えることも考えられる。

ただし、既存株主との関係性や悪用など、軽視できない問題が存在する点も事実だ。興味をもった経営者は、デメリットやリスクにも目を向けながら「本当に実施すべきか?」を慎重に判断しよう。

ゴールデンパラシュートに関するQ&A

ここまで解説した内容も含めて、以下ではゴールデンパラシュートのよくある質問をまとめた。準備を始める前に、必要な基礎知識をしっかりと押さえていこう。

Q1.ゴールデンパラシュートの由来とは?

ゴールデンパラシュートの名称は、買収防衛策に利用される退職金(ゴールド)と、会社から脱出すること(パラシュート)が由来とされている。退職金という武器をパラシュートに見立てて、乗っ取られた会社から脱出するイメージをもつと分かりやすいだろう。

なお、ゴールデンパラシュートには敵対的買収を抑止する効果もあるため、経営陣は必ずしも会社から退くわけではない。

Q2.ゴールデンパラシュートで注意したいデメリットは?

ゴールデンパラシュートを実施するには、「株主総会による承認」が必要である。また、ステークホルダー(従業員や株主、取引先)から自己保身策と捉えられる恐れがあるので、導入のハードルはそれなりに高い。

仮に「経営陣だけが得をした」などの評判が広まると、新しいビジネスが難しくなることも考えられる。個人の信用低下につながりやすい施策なので、周囲からの理解は必須となるだろう。

Q3.敵対的買収はなぜ行われる?

敵対的買収の目的は、経営権の支配である。つまり、利益のために会社を乗っ取ったり、発言力を高めたりすることが目的なので、一般的には「議決権の過半数の取得」をゴールとする場合が多い。

敵対的買収によって議決権の過半数を握られると、現経営陣は退任を迫られるリスクがある。

Q4.敵対的買収の防衛策を知りたい

代表的な買収防衛策としては、買収コストを引き上げる「ポイズンピル」や、取引先との契約解消・制限を盛り込んでおく「チェンジ・オブ・コントロール」がある。そのほか、友好的な買収企業を見つける「ホワイトナイト」や、高価値な事業を第三者に引き渡す「クラウンジュエル」なども、中小企業にとっては有効策と言えるだろう。

買収防衛策にはさまざまな方法があり、それぞれメリット・デメリットが異なる。ゴールデンパラシュートも含めて、自社に適した方法を見極めることが重要だ。

Q5.ゴールデンパラシュートとティンパラシュートの違いは?

ティンパラシュートは、従業員の退職金を引き上げる買収防衛策である。経営陣の退職金を増やすゴールデンパラシュートとは違い、ティンパラシュートは雇用契約・労働協約を見直すだけで実施できる(株主総会の承認が不要)。

そのため、ティンパラシュートは機動的な防衛策と言われるが、実際に発動すると株主の利益が損なわれてしまう。ゴールデンパラシュートと同じく、既存株主からの理解がハードルになる点には留意しておきたい。

Q6.ポイズンピルの事例は?

ポイズンピルの事例としては、2005年にニッポン放送が発動したものが有名だ。ライブドアによる敵対的買収を防ぐために、同社はグループ企業(フジテレビ)に対して4,720万株の新株を発行した。

しかし、この行動により株式の希薄化が懸念され、同社は株主から新株発行の差止めを請求される。最終的に敵対的買収は防いだものの、ポイズンピルのデメリットも顕在化した結果となった。

Q7.ホワイトナイトとはどういう意味?

ホワイトナイトとは、敵対的買収の標的になっている企業が、友好的な買収先を見つける防衛策である。このときの買収先が「ホワイトナイト」と呼ばれており、株式の受け渡しはTOBや第三者割当増資を通して行われる。

国内では「オリジン東秀」による事例があり、敵対的買収を仕掛けられた同社はイオンにホワイトナイトを要請した。

Q8.買収防衛策のデメリットとは?

手法にもよるが、買収防衛策のデメリットは自社株の流動性が下がることである。例えば、市場での自由な株取引を停止すると、買収者だけではなく一般投資家も取引できない状況になる。

流動性が下がった株価は下落しやすく、ひいては株主にも損害を及ぼしてしまう。特に株主へのダメージは深刻視されやすいため、買収防衛策はさまざまなステークホルダーを意識することが重要だ。

Q9.買収防衛策に問題点はある?

買収防衛策は株主の利益を損ねるものが多いため、ステークホルダーへの説明は必須である。また、チェンジ・オブ・コントロールのような予防策は、実際に発動すると経営者個人にも不都合となる場合が多い。

そのため、買収防衛策は実際に発動するシーンを想定し、事前にリスクを洗い出しておくことが重要だ。

著:片山 雄平
1988年生まれのフリーライター兼編集者。2012年からフリーライターとして活動し、2015年には編集者として株式会社YOSCAに参画。金融やビジネス、資産運用系のジャンルを中心に、5,000本以上の執筆・編集経験を持つ。他にも中小企業への取材や他ライターのディレクション等、様々な形でコンテンツ制作に携わっている。
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