この記事は2022年8月8日に「月刊暗号資産」で公開された「タイ中央銀行、リテール型CBDCの実証実験を年内に開始へ」を一部編集し、転載したものです。


バンコク,タイ
(画像=C.Y.やまざきちよこ/stock.adobe.com)

タイ中央銀行(BOT)は5日、リテール型CBDC(中央銀行発行デジタル通貨)の実証実験を年内に開始すると発表した。

発表によると、タイ中銀は民間企業らによる協力のもと、限定的な実証実験を行うという。将来的な関連政策の策定およびCBDCの設計改善を目的とする。具体的には、CBDCの発行による利益とリスク評価を行う。

この実証実験ではリテール型CBDCを発行し、アユタヤ銀行、サイアム商業銀行、2C2P(タイ)の利用者の中からタイ中銀が選んだ1万人の国民が、商品やサービスの支払い等で利用するようだ。2022年末には実証実験を開始する予定で、2023年末まで実施するという。この実証実験を通じて、技術的な設計を含むシステムの効率性および安全性評価する。

また、タイ中銀は「CBDCハッカソン」の開催についても明らかにした。ハッカソンの内容は民間企業や一般市民がリテール型 CBDC のビジネスユースケースを発表する場となるようだ。応募期間は8月5日から9月12日となっている。

一方で、タイ中銀は現時点でのCBDC発行に関する計画はないと強調。あくまでもCBDCの設計および適合性を評価することを前提に、リテール型CBDCの研究を行う一環だとしている。

タイ中銀は昨年4月、リテール型CBDCの実証実験を2022年第2四半期までに実施すると発表していた。その際、リテール型CBDCについて「効率的で費用対効果が高く、技術が原動力となるような未来を提供して、より多様で革新的な金融システムに貢献する」と説明している。

現在、世界ではCBDCに取り組む動きが加速度的に増している。大手会計事務所のPwC(PricewaterhouseCoopers)が今年4月に発表したレポートによれば、世界各国の中央銀行の80%以上がCBDCに関心を寄せている、もしくはすでに導入しているという。

このレポートでは全体的に金融機関向けのホールセール型よりも、一般消費者向けであるリテール型CBDCに対する評価の方が高い傾向にあった。

なお、タイはこのレポートにおけるホールセール型CBDCの調査において、香港と並び首位に立っている。(提供:月刊暗号資産