この記事は2022年8月10日に「月刊暗号資産」で公開された「イーサリアム創設者ブテリン氏、NFTの匿名性強化でステルスアドレス実装を提案」を一部編集し、転載したものです。


イーサリアム
(画像=Imagepocket/stock.adobe.com)

イーサリアムの創設者ヴィタリック・ブテリン(Vitalik Buterin)氏は8日、イーサリアムの現在ERC721トークン規格であるNFT(非代替性トークン)にステルスアドレスを実装するアイデアを提案した。この機能が実装された場合、ユーザーは匿名でNFTを送ることが可能となる。

提案によると、「例えば、私(新たな所有者)以外に、新しい所有者が誰であるかを知られることなく“vitalik.eth”にNFTを送ることができるようになる」としている。

ブテリン氏は、ウィーン大学のAnton Wahrstätter氏が「イーサリアムリサーチチャンネル」を通じて提案した投稿に触れ、基本的に全てのERC721トークンをステルスアドレスに保管する方法を提案した。

Wahrstätter氏は、トランザクションを要約する技術「マークルツリー」やゼロ知識証明の暗号化方式である「zk-SNARKs(ゼットケー・スナーク)」レベルの匿名性は必要ではないと主張している。これに対し、ブテリン氏は「私はより軽量な技術で達成できると感じる」と述べ、通常のステルスアドレスを使う方法を提案した。

同氏は、「、vitalik.ethにERC721を送信すると、私はそれを見ることができるが、他の誰もvitalik.ethがERC721を受け取ったことを見ることはできない。あくまでも、誰かがERC721を受け取ったかを見るだけだ」と説明し、受信者の公開IDへのリンクを隠す方法で十分との考えを示した。

課題は手数料をどのように払うかで、ERC721を送る場合、送金者は送金チェーンを通じ、手数料5回から50回分のイーサリアムを含める必要があるとしている。それでも、ブテリン氏は「もしからしたら専門のサーチャーやブロックビルダーを巻き込む汎用的な良いソリューションがあるのかもしれない」と付け加えた。

ステルスアドレスの実装については、ブテリン氏がソウルバウンド・トークン(Soulbound Token:SBT)について提案した際に触れた分散型社会(DeSoc)のビジョンと合致する部分も多い。

しかし、一部ではステルスアドレスに対し懸念を示す声も挙がっている。ステルスアドレスは盗まれたNFTの回収をほぼ不可能にするのではないかというセキュリティ上の懸念や、ブロックチェーンの本来の目的である透明性の確保に反するといった意見がみられる。(提供:月刊暗号資産