この記事は2022年8月26日に青潮出版株式会社の株主手帳で公開された「ソーダニッカ【8158・プライム】「か性ソーダ」など化学品の老舗商社 幅広い情報活かした提案営業が大きな強み」を一部編集し、転載したものです。
ソーダニッカは、化学薬品や石油化学製品、合成樹脂製品などを扱う化学品商社だ。2022年3月期は当期純利益が過去最高を更新するなど業績は堅調。メーカーから顧客への直送販売のみならず、付加価値の大きい加工販売や提案営業の拡張に向けて攻めの投資を展開し、アグレッシブな化学品・機能製品の総合商社への変革を目指す。
▼長洲 崇彦社長
生活必需品の化学薬品販売
国内全化学品メーカーと取引
同社はか性ソーダをはじめ、塩酸やアンモニア系薬品、無機薬品などさまざまな化学薬品や製品を国内外に販売している。化学薬品は、紙、洗剤、衣類など生活を支える物資の製造や水道水の浄水などに欠かせない。2022年3月期の売上高は期初予想を大きく上回り555億800万円に。営業利益は前期比60.4%増の12億5,200万円と大きく伸びた。
同社は主に「化学品事業」「機能材事業」の2つのセグメントで事業を展開。「化学品事業」では、主として化学薬品をメーカーから仕入れ、ユーザーである顧客に販売している。主力のか性ソーダはほぼすべてのメーカーと取引があり、国内トップクラスのシェアを持っている。2022年3月期の同事業の売上高は360億9,100万円、セグメント利益は25億円(前期比12.5%増)となった。
「か性ソーダと酸は全業種が使う化学薬品です。なので、使用量によってどの業種が好調でどの業種が不調かがわかります」(長洲崇彦社長)
国内4拠点に貯蔵施設のあるケミカルセンターを持ち、メーカー間、地域間の需給を調節している。ケミカルセンターは薬品を海上輸送から陸上輸送へと繋ぐための貯蔵設備であり、高濃度の薬品を希釈して濃度を調節する機能、またメーカーから大量に納品された薬品を小分けする機能などを兼ね備えている。
「機能材事業」では、主に合成繊維、機器・材料を食品、樹脂加工、電機などの市場に販売。素材だけでなく製品の設計から組み立てまで一貫受注している他、包装関連資材ではパッケージに関わる機材、デザインや設計まで提案する。2022年3月期の同事業売上高は126億6,200万円、セグメント利益は6億2,300万円(前期比9.9%増)となった。
役人企業脱し成長企業へ
グループ総合力で物流を磨く
同社は第二次大戦終了直後の1947年に設立。か性ソーダなどの配給統制会社の解散に伴い、携わっていた社員たちによって、薬品の安定供給を目的に作られた企業だ。同社は日本各地に次々と営業所を設置、1972年には初のケミカルセンターを富士市に開設。1973年には貿易部門を新設して輸出入業務を開始した。1986年には東証二部上場、1991年には一部に指定替えとなった。
「“日本にとって必要な化学薬品を安定供給する”という使命感でビジネスを始めたことは当社の誇りです。そして苦労して上場し、社会的な信頼を得られた。しかし、そのあと守りに入ってしまったのではないかと考えていました」(同氏)
2016年度から長期ビジョン「Go Forward」を策定。2019年度から2022年度までの「STAGE 2」では、戦略を再構築し、成長戦略として「収益基盤の徹底強化」を掲げた。持続的成長のための積極投資として、2019年度から2022年度累計で100億円の投資枠も設定している。
「化学品事業」分野で注力しているのは物流の強化だ。現在手がけるのは、広島大野ケミカルセンターの機能強化と拡張。薬品の貯蔵能力をさらに広げるとともに、将来的に薬品の希釈ができるスペースを拡大することを検討。
また、運転手不足によって薬品を運ぶタンクローリーが大型化していることから、一度に大量の薬品を積み込めるよう、充填場所と大型車の取り回しスペースを整備した。
「今後は、お客様の需要に合わせて混合や希釈した化学薬品を届けるのが当社の仕事になっていく。化学薬品を基準にした当社なりのロジスティックスを作り上げなければなりません」(同氏)
2021年には島根県松江市で化学品商社を展開する野津善助商店を子会社化。薬品小分けなどを広島大野ケミカルセンターと機能分割して行うことで、効率アップを狙う。
提案営業でオンリーワン製品を
収益基盤強化へ変革図る
「機能材事業」分野では、提案営業をさらに強化する。同社の商品で最近注目されているのは、石灰石を主原料とした素材を利用したボトル容器だ。従来のプラスチック製と比べて使用量を3割減らすことができ、リサイクルも可能となる。
「これは当社が樹脂メーカー及び、成形メーカーと協業して試作品を作りました。そして次のステップとして、リサイクルできる仕組みを作り上げていきたい。このように化学品専門商社としての情報網をフル活用し、当社でしか考えられないようなものづくりができるのが強みです」(同氏)
2023年3月期の目標は売上高588億円、連結当期純利益12億円、ROE5.0%以上、配当性向40%以上としている。
「メーカーから仕入れて売るだけでは、インターネットに取って代わられる危機感があります。今は自分たちで提案し、それによって利益を得るビジネスへと、ギアを大きく入れ替えているところ。直近は投資が先行していますが、リターンもしっかりと求めて動いていきたい」(同氏)
▼機能強化した広島大野ケミカルセンター
▼塩酸などの薬品貯蔵用タンクを新設
▼︎石灰石を主原料としたボトル
*2022年3月期より「収益認識に関する会計基準」等を適用。2021年3月期以前の売上高は当該基準適用前の実績値
2022年3月期 連結業績
売上高 | 555億800万円 | 前期比 ー |
---|---|---|
営業利益 | 12億5,200万円 | 同 60.4%増 |
経常利益 | 15億5,300万円 | 同 44.8%増 |
当期純利益 | 13億6,700万円 | 同 70.8%増 |
*2022年3月期首より企業会計基準第29号等を適用しており、売上高については適用後の数値のため対前期増減率の記載なし
2023年3月期 連結業績予想
売上高 | 588億円 | 前期比 5.9%増 |
---|---|---|
営業利益 | 14億3,000万円 | 同 14.2%増 |
経常利益 | 17億2,000万円 | 同 10.7%増 |
当期純利益 | 12億円 | 同 12.2%減 |
*株主手帳9月号発売日時点