この記事は2022年8月24日に青潮出版株式会社の株主手帳で公開された「国際紙パルプ商事【9274・プライム】大型M&Aで事業規模世界第3位 さらなる成長へグローバル経営確立」を一部編集し、転載したものです。


2018年に株式上場、国内外で紙・板紙・パルプなどの卸売業を手掛ける国際紙パルプ商事。2019年にはオーストラリアの業界大手Spicers(スパイサーズ)、2020年にはフランス最大手のAntalis(アンタリス)を傘下に加え、事業規模は世界第3位にまで浮上した。一方で市場はデジタル技術の発展やペーパレス化が進み、縮小傾向にある。しかし、同社は「パッケージ事業」など、新たな事業分野に取り組んでいる。

今期から新中期経営計画がスタート。最終年度には売上高6,500億円、営業利益145億円を掲げる。2022年10月には持ち株会社化への移行も決定し、グローバル企業としての地位確立を進める同社の戦略を聞いた。

▼栗原 正社長

株主手帳
(画像=株主手帳)

前期過去最高業績で着地
紙を主軸に事業は多角化

国際紙パルプ商事の2022年3月期連結業績は売上高が5,634億1,400万円。営業利益が93億7,900万円。売上高、営業利益ともに過去最高業績となった。

同社のビジネスモデルは大別すると「紙・板紙製品の販売事業」と、第二次中計から新たに加わった「パッケージ事業」と「ビジュアルコミュニケーション事業」の4事業。

「紙・板紙製品の販売事業」は印刷用紙・情報関連用紙等や板紙を顧客のニーズに合わせて幅広く販売している。分野別売上構成では約7割を占める同社の主力事業だ。

全体売上の16.7%を占めている「製紙原料の販売および環境関連のソリューション事業」はパルプ・古紙の販売や古紙回収システムの提供などを行う。

「パッケージ事業」は仕入れた紙を顧客の要望に合わせデザインを施し、容器などの製品として供給する事業だ。売上構成で13.8%と紙販売に次ぐ、2番目に大きい事業となっている。

売上構成5.5%の「ビジュアルコミュニケーション事業」は内装や店頭広告などの視覚に訴えるビジネスと組み合わせた事業。カーラッピングなどに使用するメディアの供給などを行う。

今期から始まる第三次中期経営計画ではパッケージ事業とビジュアルコミュニケーション事業がカギになるという。

「デジタル化で紙媒体は減少し、市場は徐々にシュリンクしていく傾向にあります。一方で、eコマースの発達でパッケージの市場は堅調に伸びています。今までは仕入れた紙をダンボール会社や紙器会社に売るだけでした。これを、顧客ニーズに合わせ、デザインや加工を施して供給するエンドユーザーと結びつく事業ポートフォリオに変化しています」(栗原正社長)

新中期経営計画スタート
成長ドライバーは2つの事業

同社は創立100周年に向けた長期ビジョンを掲げ、足元では第三次中期経営計画に取り組んでいる。

2017年3月期から2019年3月期までの第一次で事業構造改革を行い、最終年度には株式上場。2020年3月期から2022年3月期までの第二次では事業ポートフォリオを多角化するため、海外市場に焦点を当て、大型M&Aを実施。規模拡大と収益性向上に取り組んできた。

満を持して迎える第三次では長期ビジョンの総仕上げとして「収益基盤の確立・深化」と「グローバルグループ経営の強化」を掲げる。特に注力するのが「パッケージ事業」と「ビジュアルコミュニケーション事業」の規模拡大だ。

パッケージ事業は、主にフランスの子会社アンタリスが担っており、デザインセンターをドイツ中心にデンマーク、イギリスなどに構える。オーダーメイドでパッケージの注文を受け、耐久テストまで行い、3Dアプリケーションで形を作り、提案するという事業だ。

「パッケージの市場は紙を使用しない一次包装を除き、世界で26兆円あり、年率3.2%で成長していくと言われています。一律のサイズの箱を大量生産するケースも多いが、我々は各置き場所や流通、物流も含めた最適な箱を求める顧客に目を向けています。約10年前から子会社のアンタリスはそのマーケットに注目しており、需要の創出から行っていました」(同氏)

同事業は2022年3月期で売上高776億円を計上。今後もアンタリス社を中心に展開し、M&Aで拡大を図る。すでに2022年4月にはドイツのパッケージ製造会社を孫会社化するなど2025年3月期セグメント売上高1,300億円に向け着々と準備を進めている。

もう1つの成長ドライバーはビジュアルコミュニケーション事業。同事業は大判インクジェット印刷機などのハードやインクといった消耗品から、室内装飾やカーラッピングに使用するメディアの供給まで一貫してコーディネートする事業。子会社のあるヨーロッパやオーストラリアで需要が拡大しており、M&Aによる規模拡大が基本方針となる。

同事業の市場は中小企業が多いため、ターゲットは中小でビジュアルコミュニケーションを扱う海外の企業になる。早い段階でのマーケット集約を目標とし、2022年3月期売上高309億円の同事業を2025年度までに650億円まで拡大させる計画。

一方で国内事業の循環型ビジネスもブラッシュアップを図る。3月末にはバイオマス発電支援システムの「BMecomo」の事業を子会社として新設するなど順調に拡大。古紙の回収なども積極的に行うことでエンドユーザーである飲料メーカーや食品メーカーとの安定的な取引が可能となる。

「第三次中計では内部経営資源(オーガニック)の成長で安定基盤を築き、外部経営資源の獲得(インオーガニック)で成長を加速させるというのが基本戦略になります。特にインオーガニックの部分では3年間で200億円を使って経営資源の獲得に努めたいと考えています。2025年3月期に売上高6,500億円、営業利益145億円というのが目標です」(同氏)

2022年10月に持株会社へ移行
世界三極体制で規模拡大図る

グローバル・ガバナンスの強化とポートフォリオの改革、新規事業の拡大を進めるため、2022年10月には持株会社へ移行し、商号も「KPPグループホールディングス」に変更予定だ。

「持株会社体制で世界五大陸を国際紙パルプ商事、アンタリス、スパイサーズを中心に網羅していくイメージです。紙の市場が縮小傾向にあるので、日本国内だけだと規模の拡大は容易ではない。そこでグローバルに目を向けM&Aを行うことで事業全体のポートフォリオが大きく変わると考えています。第三次中計の戦略がどれくらいのシナジーを産むかは未知数ですが、営業利益率は最低でも2.2%になると想定しています」(同氏)


2022年3月期 業績

売上高5,634億1,400万円前期比 ー
営業利益93億7,900万円
経常利益88億4,400万円
当期純利益74億9,700万円

*2022年3月期首より企業会計基準第29号等を適用しているため前期増減率の記載なし


2023年3月期 業績予想

売上高5,900億円前期比 4.7%増
営業利益120億円同 27.9%増
経常利益94億円同 6.3%増
当期純利益75億円同 0.0%増

*株主手帳9月号発売日時点

栗原 正社長
Profile◉栗原 正(くりはら・ただし)社長
1955年8月生まれ。1979年、旧大永紙通商入社。2012年、国際紙パルプ商事執行役員就任。2013年、同社上席執行役員就任。2014年、同社取締役常務執行役員就任。2017年、同社代表取締役専務執行役員就任などを経て、2020年、同社代表取締役社長執行役員就任(現任)。