この記事は2022年7月1日に「株式新聞」で公開された「永濱利廣のエコノミックウォッチャー(27)=法人企業景気予測調査から読み解く業績動向」を一部編集し、転載したものです。



日本,景気
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目次

  1. 上方修正期待の業種は?
  2. 「生活関連サービス」など増益率拡大
  3. 2022年6月日銀短観も注視

2022年6月13日に公表された2022年4~6月期法人企業景気予測調査は、2022年5月下旬にかけて資本金1000万円以上の法人企業に対して行った景気予測調査であり、今期の業種別企業業績計画を予想するための先行指標として注目される。

そこで本稿では、2022年7月下旬からの四半期決算発表で、コロナ禍やウクライナ危機の中でも業績計画の上方修正が見込まれるセクターを予想してみた。

上方修正期待の業種は?

法人企業景気予測調査の調査対象企業の各調査時期における売上高と経常利益計画の今年度見通しで、売上高は製造業・非製造業とも増収率が従来比で引き上げられている。一方、経常利益は、非製造業が減益から増益に一転して上方修正されているが、輸入原材料の高騰などを背景に製造業は増益から減益に下方修正されている。

このことから、2022年7月下旬からの四半期決算発表では、製造業を中心に減益計画への修正が増えてくることが予想される。逆に増益計画に転じている非製造業で、強めの計画が打ち出される業種には注目が集まる。

今期売上高計画を、業種別で前回調査からの修正率について比較すると、2022年度は「鉱、採石、砂利採取」「リース」以外の全業種で増収計画となっている。こうした中で、前年比の上方修正率が高い業種は「電気・ガス・水道」「娯楽」「鉄鋼」「自動車・同付属品」「パルプ・紙・紙加工品」であり、5ポイント以上の上方修正率となっている。

特に「娯楽」については、各種観光支援策や水際対策の緩和が進む期待があり、移動や接触を伴う経済活動が正常化に向かうことが想定されている。また「電気・ガス・水道」や「鉄鋼」「パルプ・紙・紙加工品」については、ロシアのウクライナ侵攻などに伴い原材料価格の水準がさらに上昇したことに伴う価格転嫁の影響が大きいと推察される。「自動車・同付属品」は、半導体などの部品不足軽減により、供給拡大を見込んでいるようだ。

企業収益計画
(画像=株式新聞)

「生活関連サービス」など増益率拡大

続いて、経常利益計画から増益率の上方修正が期待される業種を見通してみよう。多くの業種で減益計画となっているが、国際商品市況の高騰に伴うコスト増が主因だ。こうした中で、増益率の上方修正が目立つ業種は「生活関連サービス」「職業紹介、労働者派遣」「運輸、郵便」「金融、保険」「業務用機械」などで、いずれも2ケタを大きく上回る上方修正率だ。

なお、「生活関連サービス」を詳細に見ると、われわれの生活に密着したクリーニング業や理容業、美容業、銭湯、スーパー銭湯、エステティック業、リラクゼーション業、ネイルサービス業、旅行業、結婚相談業、家事サービス業、冠婚葬祭業などに分かれる。

このため、旅行業を含む「生活関連サービス」や「運輸、郵便」、また黒字転換の「宿泊、飲食サービス」については、観光産業の支援策への期待や、空運や鉄道旅客数の回復が好材料。「職業紹介、労働者派遣」については、そうした動きに関連する人材派遣などの需要増加も寄与してくる。

2022年6月日銀短観も注視

また、前回調査では大幅減益計画だった「金融、保険」も小幅増益計画に上方修正されている。背景には、世界的な金融政策の出口観測に伴う金利上昇に加えて、日本と海外の金利差拡大に伴う資産運用益の拡大が見込まれる。

主な製品としては、事務用、サービス・娯楽用、計量器、測定器、分析機器・試験機、測量、理化学機械、医療用品、光学・レンズ、武器を含む「業務用機械」が2ケタの上方修正率となっていることも注目される。

なお、日銀が公表した2022年6月短観の業種別収益計画(大企業)は法人企業景気予測調査に比べて聞き取りのタイミングが若干遅いことから、ウクライナ危機やコロナ禍からの回復の影響をより織り込んでいる可能性が高い。