3D city of London, United Kingdom. Hi-tech smart city. 3D rendering.
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マーケット・ニュートラル戦略の理屈

連邦公開市場委員会(FOMC)の結果発表に限らず、雇用統計などでも数値が発表された瞬間、脊髄反射のように市場が上下どちらかに動く場合が多い。ただ今回のFOMC(の発表:0.75%の3倍速利上げ)に関してはこれまでとは少々様子が異なる。

通常この手の市場の動きに関わるのは、アルゴリズム取引など高速売買を得意とするヘッジファンドなどで、PRI(責任投資原則)に署名しているような機関投資家はあまり参加しない。イベント・ドリブン型などのヘッジファンドの一部なら戦いを挑んだかもしれないが、実際、ヘッジファンドを運用していた立場の感覚からすると、今回は「(できれば)大勝負には出たくはない状況」のように感じた。ヘッジファンドのリスクコントロールは複雑で、だからこそ「不透明な状況の時にはあえてリスクを取るようなことはしない」というのが基本。今回の「FOMC」の利上げ発表のような、ある意味では「恣意性が強い」メッセージによる市場の影響を事前に予測するのは難しく、わたしならあえてポジションを膨らませないようにするだろう。

「ヘッジファンド」は「プライベート」な投資ビークルだということは第5回「『ヘッジファンド』とは何か プライベートな投資ビークルだからこそ可能なこと」で論じた。それは何でも自由にできるビークルだという意味である。つまり、自分ですべてのリスクを把握し、適切にコントロールしなければならないという意味を持つ。このことはヘッジファンドに投資をする人にもあてはまる。ヘッジファンドに投資をするなら、最低限、その「投資スキーム」と「リスクの所在」「収益の源泉」、そして「リスクコントロールの方法」ぐらいは把握しておくべきだ。実際、超富裕層がヘッジファンドに投資をする場合、事前に直接、(ファンドの)運用者と充分なディスカッションを行い、その内容に納得した場合に限り、(日本円に換算して)億円単位の資金が投入される。中にはリスク管理とリスクコントロールの部分について、うんざりするほど事細かに聞いてくる投資家もいる。

さて、第6回「ヘッジファンドのロング&ショート論テキスト」はマーケット・ニュートラルという運用手法について論じた。ヘッジファンドとはロング・ポジションだけではなく、ショート・ポジションも含めることで「絶対リターン」を狙うものだということ。市場変動をヘッジしたマーケット・ニュートラル戦略で「絶対リターン」を狙うのは、言葉面からイメージするほどローリスクではない。「絶対リターン」が常にポジティブ(プラス)になるとも限らない。

あまり小難しくならない程度に、ただきちんと理屈を理解してもらうために、簡単な数式を使って説明してみることとする。逆に言えば、この程度の話が理解できなければ、株式や債券のような伝統的なアセットクラスにロングオンリーで投資した方がよいとも言える。さもなければ、結果がネガティブ(マイナス)だった場合、間違いなく気持ちの中に禍根を残すだろう。まずは以下を御覧いただきたい。

裁定取引(アービトラージ)という概念