オレンジ色に染まる東京
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「あなたはロングオンリーのファンドマネージャーですよね」という言い方は、資産運用業界の中ではどこか侮蔑的なトーンが含まれる、と言うと驚かれるだろうか。だが、ヘッジファンドが日本に上陸し、和製ヘッジファンドなどと呼ばれるものが出始めた頃、投資信託や年金のファンドマネージャーに対して、「上から目線」でこのように話し掛けてくるヘッジファンド関係者が少なからずいたものだ。

「ロングオンリー」、すなわち「買い持ちだけ」という考え方と対になるのは当然「ロングショート」、つまり「買いと売りの両方」ということになる。どんなファンドマネージャーでも「買う」ことがあれば、「売る」こともあるので、普通の個人投資家ならば「ロングオンリー」という言い方には違和感を持たれるかもしれない。一方で、信用取引や日経平均先物などの取引経験がある人ならば、違和感はないはずだ。実に些細なことのようだが、この点をしっかり理解しているか否かで、実は「ヘッジファンド」という投資商品の本質の見え方が微妙に違ってくる。今回はそんなところからヘッジファンドについて論じてみたい。

「ロング」を「値上がり益狙い」とし、「ショート」を「値下がり益狙い」と言い換えてみる

昔の株式市場関係者の中には「株の信用取引を始めるなら、買いから始めろ。売りは怖いから止めた方がよい」と言う人がたくさんいた。「リスクとは損をすることではなく、期待収益が上下に振れるその幅の大きさです」と説明できる人ならば、この昔の株式市場関係者の言っていることは「理に適っていない」と思うだろう。

だが、元ファンドマネージャーの経験に照らして言わせてもらえれば、「これはどちらも正しい」。そしてこの「理に適っていない」と感じられる部分こそが、まさにヘッジファンドの付加価値の源泉なのであり、ヘッジファンド関係者を「上から目線」にさせてしまう原因なのだと言いたい。

「ロング」を「買い」、「ショート」を「売り」と訳すから混乱するのかもしれない。そこで「ロング」を「値上がり益狙い」とし、「ショート」を「値下がり益狙い」と言い換えてみるとどうだろう。「ロングオンリー」とはすなわち「値上がり益」だけを狙う投資手法となり、「ロングショート」とはすなわち「値上がり益と値下がり益」両方を狙う投資手法ということになる。