この記事は2022年9月30日にSBI証券で公開された波乱相場でも上昇期待の銘柄は?を一部編集し、転載したものです。
波乱相場でも上昇期待の銘柄は?
2022年9月29日(木)の東京株式市場は反発しました。日経平均株価は一時、前日比284円高水準まで買い進まれました。英中央銀行による同国債買い入れ方針を受けて欧米金利が低下。その流れを受けてNYダウが7営業日ぶりに反発したことを好感しました。
ただ、日経平均株価の反発は予想外に限定的な印象でした。2022年9月29日(木)は3月・9月決算銘柄等の「配当落ち日」に相当し、日経平均株価の「配当落ち」が推定で223円01銭(日経調べ)影響しました。
焦点となっている米長期金利については、直接低下する材料が出た訳ではないことや、アップルによる新型iPhone増産見送り報道を嫌気して、東京市場では主力ハイテク株への売りが続いたことが響きました。
今後はどうなるでしょうか。商品市況の下落に加え、米国ではさすがに住宅価格が下落に転じる兆しが出てきており、物価上昇圧力もピークアウトしつつあるように思われます。株式相場全般にボトムを探るような展開になるかもしれません。
ただ、グローバル景気の悪化が悪材料として本格的に可視化されるようになるのは今後とみられます。当面、素材や輸出関連等は買いの主役になりにくいと言えましょう。
東京株式市場で持続的株高が期待できるのは、小売、サービス、経済再開銘柄等になるのではないでしょうか。タイミング的にも小売、サービスを多く含む2月・8月決算銘柄の決算発表が10月前半に本格化する予定です。そこで、今回の「日本株投資戦略」では、以下のようなスクリーニングを行ってみました。
(1)東証プライム市場上場銘柄
(2)2月決算銘柄
(3)時価総額500億円以上
(4)業績予想を公表しているアナリストが2名以上
(5)今期市場予想EPSが過去4週間で横ばい、または上昇
(6)2023年2月期・第1四半期(2022年3~5月期)の営業利益が前年同期比10%超の増益
(7)2023年2月期・第2四半期までの累計(2022年3~8月期)の市場予想営業利益が前年同期比10%超の増益
図表の銘柄は上記のすべての条件を満たしています。掲載の順番は、決算発表予定日順となっております。
なお、8月決算銘柄はスクリーニング対象に含めませんでした。8月決算の発表対象は2022年8月期の本決算となり、新たに2023年8月期の会社予想業績が発表される予定となっています。
外部環境が厳しくなっている折だけに、会社側が業績予想を実態よりも厳しく公表し、株価がそれにつれて下落するリスクがあると考えたためです。
個別銘柄紹介
以下、一部の銘柄について、ポイントをご紹介します。
イオン(8267)~不振だった総合スーパーが回復傾向
■日本一の従業員数を有する総合小売グループ
当社は1758年に三重県で創業された日用品店を起源とし、1926年設立の岡田屋呉服店を経て、1970年に商号を「ジャスコ」に変更。2001年に現社名に、2008年に純粋持株会社となりました。
現在は売上高8兆7,159億円(2022年2月期)円を有し、7&Iホールディングス(同期の売上高8兆7,497億円)とトップを争う国内トップ級の総合小売グループです。グループ従業員数は57万人(2020年度末)と国内最大の雇用を抱えています。海外にも広く進出し、日本を含む14カ国で19,288店舗/カ所を展開しています。
売上構成比(2022年2月期・調整前)は、「GSM(総合スーパー)」が36.4%、「SM(スーパーマーケット)」が28.8%、「ヘルス&ウェルネス事業」が11.8%、「サービス・専門店事業」が6.0%、「総合金融事業」が4.8%、「国際事業」が4.7%、「DS(ディスカウントストア)」が4.4%、「ディベロッパー」が3.3%と続いています。
「イオン」は純粋持株会社であり、消費者になじみの深い総合スーパーはイオンリテールの他、イオン九州、イオン北海道等の上場会社が展開しています。スーパーマーケット事業ではミニストップの他、マックスバリュ東海、カスミ(非上場)、ダイエー(同)等が展開しています。
この他では、ウェルシアホールディングス(DS)、イオンモール(ディベロッパー事業)、キャンドゥ(サービス・専門店事業)等の上場企業があります。傘下上場企業の時価総額(本体を除く)は国内だけで約2.3兆円(2022年9月29日時点)に達しています。
■2022年3~5月としての最高益を更新
セグメント利益の売上高構成比(2022年2月期)はイオンフィナンシャルサービス等が属す「総合金融」が35.1%でトップです。これに「ヘルス&ウェルネス事業」の23.8%、ディベロッパー22.1%、SM事業17.4%と続いています。
「GMS(総合スーパー)」は業界的にも停滞感が強くなっていますが当社も同様です。10年前の2012年2月期、同事業が全社に占める比率は売上高で49.0%、セグメント利益で30.5%もありました。しかし、前述したように、2022年2月期の売上構成比は36.4%に下がり、セグメント損益は赤字となっています。
こうした中、当社は2022年7月6日(水)に2023年2月期・第1四半期決算を発表。売上高は2兆2,032億円(前年同期比2.3%増)、営業利益は438億円(同12.0%増)と拡大しました。
純利益は前年同期比4倍弱の193億円となり、3~5月期としては12年ぶりに過去最高益を更新。プライベートブランドが好調であったことに加え、構造改革の効果もあり、「GMS」のセグメント損益が前年同期の72億円の赤字から、1億円の黒字へと、わずかながらも黒字転換したことが効きました。
通期(2023年2月期)では売上高9兆円(単純計算で前期比3.3%増)、営業利益は2,100億円(同20.5%増)~2,200億円(同26.2%増)が会社計画となっています。
なお、当社は株主優待で個人投資家に人気の銘柄になっています。仮に、これまで通りの制度が続いた場合、次回は2023年2月24日時点で100株を保有する株主に対し、買物金額の3%が返金される「優待カード」が贈呈される予定になっています。詳細については会社Webサイトや当社株主優待説明ページをご参考ください。
▽週足チャート(過去2年)
データは2022年9月30日(週足) 09:20 時点。
*当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
*上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
▽連結業績(百万円)
セブン&アイ・ホールディングス(3382)~日米コンビニ事業が柱。今期は過去最高売上・利益を予想
■日米コンビニ事業が柱。グローバル化加速が成長の鍵
国内トップの流通グループです。
コンビニエンスストアの最大手『セブンイレブン』やスーパー、百貨店、銀行等、多岐にわたって事業展開しています。グループ全体の海外売上高比率は6割で営業利益は4割を占めており、年々増加傾向です。(2022年2月期時点)
事業の柱であるコンビニエンスストア事業では、2022年に店舗数が世界8万店舗を突破した世界的大手でもあります。一方で、近年の日本においてコンビニエンスストアの店舗数・販売額の推移は共に横ばい傾向にあり、国内市場は飽和状態であるとする声が多いのが現状です。
よって、海外事業でどれだけ売上や利益を増やせるのかが、今後も同社が成長を続けていくための重要な鍵となるでしょう。同社はグローバル戦略の加速に注力しており、今後の業績の伸長に関し、とりわけ北米事業に活路を見出しています。
中期計画では2025年度までに北米事業の構成比を50%(キャッシュフローベース・2019年度は30.8%)まで高める方針です。目標達成の為の布石として、2021年5月に「Speedway」ブランドで運営されていたコンビニエンスストア事業と燃料小売事業を約2兆3000億円で取得しました。
「Speedway」は、コンビニが併設されたガソリンスタンドです。それゆえ、事業買収後は同社株価が原油価格に連れる場面がしばしば見受けられます。
■会社は今期、過去最高売上・利益を予想
2022年7月7日に発表された直近決算(2023年2月期・第1四半期)では、営業収益が前年同期比57.3%増、営業利益が同32.1%増とかなり好調な結果となりました。
同決算では、所在地別で3地域ごとの営業収益と営業利益が示されています。内訳を確認すると“日本”と“その他地域”は前年同期比で減少という結果でした。一方で“北米”が他2つでの減収を打ち消す形で、前年同期2.5倍の増収、営業利益は他2地域が微増または赤転の中、北米は同3.4倍となりました。
よって、グループ全体としての好決算は、ほぼ北米での増収増益によるものでした。また、同決算では円安の進行等を理由に、通期見通しの上方修正が行われています。
北米で好決算となった要因には、上述した「Speedway」での燃料小売事業において、ガソリン粗利が想定以上に高止まりしたことを挙げています。なお、原油価格に関しては景気見通しの悪化等から次回四半期決算の対象である2022年6~8月は下落傾向になっています。
ただ、同社HP掲載の月次営業発表では同期間の前年同期比で原油価格は高水準であるため、ガソリン売上も増加していたことが確認できます。
加えて、当社は今年度になってから直近数期連続の赤字である百貨店事業の売却検討を表明しており、目下交渉中です。交渉成立となれば、株価にとって前向きな材料になることが想定されます。
現在株価は、過去最高値の水準にありますが、今期(2023年2月期)は過去最高売上・利益が想定されています。そのため、業績の伸びが伴えば株価はいまだ上昇余地を有していると考えられます。2022年10月6日(木)に予定されている今期中間決算では、その進捗率にも注目です。
▽週足チャート(過去2年)
データは2022年9月30日(週足) 13:30 時点。
*当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
*上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
▽連結業績(百万円)
▽当ページの内容につきましては、SBI証券 投資情報部長 鈴木による動画での詳しい解説も行っております。東証プライム市場を中心に好業績が期待される銘柄・株主優待特集など、気になる話題についてわかりやすくお伝えします。