この記事は2022年8月26日にSBI証券で公開された「NISA」拡充も!?~30万円未満で買える高配当利回り株を一部編集し、転載したものです。
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「NISA」拡充も!?~30万円未満で買える高配当利回り株
2022年8月相場も間もなく終わろうとしています。長期金利の再上昇を背景とする米株価の反落もあり、足元の東京市場は下落する場面もありました。しかし、一時7カ月ぶりに、日経平均株価が29,000円台を回復するなど、日本株は底固い動きになっています。
そうした中、2022年8月25日(木)に金融庁は、自民党財務金融部会で2023年度税制改正に向け、NISA(少額投資非課税制度)を拡充する要望書を正式に提出しました。NISAでは年間120万円の非課税投資枠内で買い付けた株式、投資信託、ETF等の配当(分配)金、売買益については5年間、課税が免除される(*)制度です。金融庁は、非課税枠を増やし、さらに非課税の期間を恒久化することを、要望書に盛り込みました。
(*配当や分配金を非課税で受け取る場合は株式数比例配分方式をご選択していただく必要があります。また、外国税額控除は利用できません。注意事項や詳細に関しては必ず当社HPのご確認をお願いします。)
岸田政権は、「資産所得倍増計画」を、政権の重要な政策のひとつに掲げており、金融庁の要望の多くが実現する可能性が大きいと考えられます。NISAがさらに、投資家にとって有利な制度に変わることで、「貯蓄から投資」への流れが強まり、株式市場に流れてくるお金が増えれば、投資家にはさらなる追い風になると考えられます。
こうした流れを受け、今回の「日本株投資戦略」では、日本株投資の魅力のひとつである「高配当利回り」を期待できる銘柄にスポットを当て、スクリーニングを行いました。 NISA制度拡充の可能性が膨らんできた今、配当を享受しながら、中長期的に資産形成を図るという投資戦略の有効性について、改めて吟味することも有意義であると考えられます。
今回の「日本株投資戦略」では、リスク分散を図りながら高配当を期待できるよう、業種別で11銘柄をご紹介させていただきます。分散投資を実行しやすくするために、1銘柄当たりの最低投資単位での買付金額が30万円未満*の銘柄に絞っています。
また、後述にてご紹介する全11銘柄でポートフォリオを組んだ場合でも、約152万円と比較的買いやすい金額になるよう意識しました。ちなみに、NISA枠未使用の場合、仮に上位7銘柄でポートフォリオを組んだ時の合計投資金額は約110万円*となり、一般NISAの枠内で収まる計算です。
銘柄の選定条件は以下の通りです。
(1)東証プライム市場上場銘柄
(2)時価総額500億円超
(3)2022年3月決算銘柄
(3)業種は「証券商品」を除く
(4)最低投資単位(100株)での買付金額が30万円未満*
(5)予想配当利回り(予想1株配当はBloomberg集計の市場コンセンサス)が4%超(参考:日経平均の予想配当利回りは2.43%)
(6)会社側が2022年9月末に中間配当を予定
(7)来期予想1株配当の市場コンセンサスが、今期と比べ横ばいまたは増加
(8)2022年4~6月期の純利益が黒字
(9)(1)~(8)をすべて満たす同業種の銘柄が存在する時は予想配当利回りの高い銘柄を優先
下の図表の銘柄は、これらの条件をすべて満たしており、(5)の予想配当利回りが高い順に並べたものです。
(*2022年8月25日の終値で計算。手数料等の諸費用は含めず。)
抽出銘柄のご紹介
以下、一部の銘柄について、ポイントをご紹介します。
シチズン時計(7762)~世界で人気の時計大手。配当性向が高く、好財務
■世界で人気の時計大手。工作機械も強い
日本のみならず、世界で人気の時計大手です。世間に名を馳せている「時計事業」と、成長期待の「工作機械事業」が2本柱です。
中核の時計事業は、EC強化等の効果もあり、本年度の第1四半期において大幅営業増益となりました。世界的な円安の進行を背景とした為替差益の計上があり、通期の予想経常利益については上方修正が行われました。
為替に関しては、海外売上高比率が8割超ということもあり、かなり影響が大きい企業の1つとみられます。第2四半期以降の想定為替レートは、1ドル=120円、1ユーロ=130円と2022年8月25日現在の水準からすると、かなり保守的な印象です。日銀の大規模金融緩和とそれに伴う世界的な円安は、しばらく続くとする見方が強いため、円安恩恵による業績上方修正に、期待感が残っている形です。
後者の工作機械事業は、いわゆる「機械をつくるための機械」の製造を行います。したがって、通常の機械製造より正確性や緻密さが求められる分野です。当社は時計生産用の設備機械を自社開発してきたため、“精密な機械をつくる”ということに関して、高い技術力や豊富なノウハウが長年培われています。それらを活かして、同事業の売上高は増加傾向にありました。しかしながら、新型コロナ拡大以降は、工作機械事業の売上高も一時落ち込んでしまいました。
その後、2022年3月期になってようやく、コロナ拡大前である2019年3月期比12%増の売上高となりました。同期間に、工作機械部門の売上構成比は22.4%から28.8%に増えており、会社全体の下支え役になっています。
■中期計画の配当性向は50%が目安。好財務企業としての一面も
企業活動で得た利益をどれだけ配当金として株主に還元したかを表す指標を配当性向といいます。この数字が大きいほど、企業は多くの利益を株主に支払っているということです。日経平均全体の配当性向は2022年8月25日時点で約31%です。
当社の予想配当性向は2022年8月25日現在、約46%(会社予想ベース)です。上述の日経平均全体からすると高い水準ですが、当社は中期計画において配当性向50%を目指すとしており、中期的には増配に期待が持てそうです。
なお、当社は好財務銘柄としての一面も併せ持っています。200%超が安心の目安といわれる流動比率が368%(2023年3月期・第1四半期)、30%以上が目安とされる現預金対借入金比率が157%(同)となっています。
▽週足チャート(過去3年)
データは2022年8月25日(週足) 15:00 時点。
*当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
*上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
▽連結業績(百万円)
兼松(8020)~「電子・デバイス」「食料」他に展開する専門商社
■経営難を乗り越え、「総合商社」から「専門商社」に
当社は戦前に繊維商社として活躍し、戦後は総合商社として発展してきました。しかし、1990年代後半に石油取引で巨額損失が発生し、経営不振に陥った後、ある程度分野を絞った「専門商社」として展開しています。
収益(売上高)の構成比(2023年3月期・第1四半期)は、電子・デバイスが27.8%、食料が38.6%、鉄鋼・素材・プラントが20.9%、車両・航空が11.0%他となっています。
最近の話題としては、「空飛ぶクルマ」事業への展開があげられます。当社は2022年3月、空飛ぶクルマの離着陸場(バーティポート)を開発・運営する英スカイポートと業務資本提携を締結し、日本国内でバーティポートの共同事業を行うことになりました。それを受けて、東京都から空飛ぶクルマの事業者に選定された三菱地所とも組むことが明かになっています。
■市場予想配当利回りは4.97%
当社は2022年8月3日(水)に2023年3月期・第1四半期を発表し、収益(売上高)は2,144億円(前年同期比22.2%増)、営業利益94.5億円(同87.2%増)となりました。
会社予想収益は8,500億円(前期比10.7%増)、営業利益315億円(同7.3%増)であり、営業利益の進捗率も30%と、1年の4分の1を通過した時点としては好調なスタートになったといえそうです。
旺盛な半導体需要を背景にした「電子・デバイス」、畜産事業における鶏肉価格の上昇等が味方した「食料」を含め、全セグメントが増収・増益となったことは、驚くべきことであるとみられます。
当社は中期ビジョンに基づき、配当性向については30~35%を目標にするとしています。今期の会社予想1株配当は中間期35円、期末35円で年間70円が予定されています。
なお、2022年8月25日(木)時点株価では、市場予想EPS227.5円に対し、同予想1株配当は76円であり、こちらの配当性向は33.4%と計算され、会社側の目標の範囲内になっています。
▽週足チャート(過去3年)
データは2022年8月25日(週足) 15:00 時点。
*当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
*上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
▽連結業績(百万円)
▽当記事の内容について、著者が動画で詳しい解説を行っています。あわせてご視聴ください。