特集「不動産業界トップランナーに聞く アフターコロナ時代の経営戦略」では、各社のトップにインタビューを実施。新型コロナウイルス感染症が収束した後の社会における不動産業界の展望や課題、この先の戦略について、各社の取り組みを紹介する。
コスモバンク株式会社は不動産投資に関心のある富裕層の間で非常に高く評価され、物件を買いたい人が約400名待ちの状態になっているという。今回は不動産投資で富裕層のニーズに応える仕組みを構築し、提供しているコスモバンク株式会社の穴澤勇人氏に、企業の強みや投資家へのメッセージを伺った。
(取材・執筆・構成=丸山夏名美)
神奈川県平塚市出身。宅地建物取引士。神奈川県立平塚工科高等学校卒業後、田中貴金属工業株式会社に勤務。会社員のかたわら、自ら株式投資・FX・不動産投資などさまざまな投資に取り組み、個人・法人で20代から資産形成を行う。2018年8月、コスモバンク株式会社を神奈川県横浜市で創業。主に収益用不動産の売買・管理業を営み、急成長企業として注目を集める。日経不動産投資フェアをはじめ、これまで多数の媒体にセミナー講師として出演。本業の傍ら、YouTubeチャンネル「穴澤勇人のMIQTV」を運営、公開動画数は300本超。著書『融資上限は怖くない! 税制と収益不動産をフル活用した資産形成アパートを「毎年」「現金」で買えるようになる!』(幻冬舎)
コスモバンク株式会社
2018年8月創業。本社所在地は神奈川県横浜市のランドマークタワー。主な事業は不動産業で、1都6県の収益用1棟アパート・マンションの買取再販・管理・リフォーム業務をメインに取り扱う。また、自らも多数の賃貸物件を長期保有している。築30年超の物件の取り扱いを得意とし、取引金融機関は30行を超える。創業5年目で取り扱い棟数は延べ100棟以上。「売って終わり」の不動産業者と異なり、一人ひとりの顧客に合わせた完全オーダーメイドの「物件を買い進められる」資産形成のコンサルティングを提供している。
コスモバンク株式会社の創業からの変遷について
─ コスモバンク株式会社の立ち上げからの変遷についてお聞かせください。
コスモバンク株式会社代表取締役・穴澤勇人氏(以下、社名・氏名略): この仕事を始める前に、個人的に一棟収益物件などへの投資を始め、個人としてはかなりの収益を得ることができました。
不動産投資を始めて数年が経過して保有物件が8棟を超えた頃、それまでの不動産購入と物件管理の経験を生かせると考え、大手収益用不動産会社の武蔵コーポレーションに入社しました。そこで売買部の責任者を務め、買取は年間200棟、売却額は累計100億円以上まで伸ばすことができました。
コスモバンクは、それらの経験を通じて抱いた思いを形にしたものです。普通の不動産屋さんは物件を売ることを軸にしていますが、当社は単に売るのではなく、賃貸物件を自社で長期保有して常時数百戸を運用しています。
家賃収入だけで月に3,000万円ぐらいになるので、会社の固定費はそこからまかなうことができます。なので、物件を無理して売る必要がないのです。
コスモバンク株式会社の強み・コアコンピタンス
─ かなりの数の物件を自社で所有されているんですね。それも含めて、貴社ならではの強みについてもう少しお聞かせください。
例えば、自分たちで物件を増やすノウハウの中でも珍しいのは、一般的に融資がつきにくい木造物件の取り扱いです。これまで富裕層の多くは、税の還付を受けやすい海外不動産を運用していました。ところが税制の改定によって、その節税ができなくなったのです。そこで注目したのが、日本国内の中古の木造物件です。日本の現在の税制では、中古の木造物件は最短4年で償却が終わるので、うまく運用すれば節税対策になります。
そのため、融資がつきにくいものの、実は税金対策として非常に有効な中古木造物件も当社では積極的に取り扱っています。まずは自社で購入し、外壁塗装や屋上防水、リフォームなどをしっかり行い、満室になってから販売しているので、お客様にとってのリスクは抑えられた、儲けの出しやすい仕組みです。また、賃貸物件を自社で多数所有しているので、自分たちの管理業務のついでと言うことでお客様の管理手数料もゼロでやっています。税については、最も高いケースで4,000万〜5,000万円も還付されたという方がいらっしゃいます。
▽外壁塗装前
▽外壁塗装後
物件の目利きができて、税制の知識もある。さらに、多くの物件を自社で買い取って長期で保有している。これは、当社以外ではなかなかできないことだと自負しています。
多くの不動産屋さんは大金をかけて数十億規模の物件運用をしたことがないので、この世界観がわかりにくいでしょうし、税理士さんは頭ではわかっていても物件の目利きができません。そのため、この強みは当社ならではのものといえます。
これらの知見については積極的に情報を発信しており、投資家の勉強の一助になればと思い、YouTubeチャンネル「穴澤勇人のMIQTV」も運営しています。
ほぼすべての動画で私が直接出演しており、さまざまなテーマについて、すでに300本を超える動画を配信していますので、よろしければ一度のぞいていただければと思います。
─ どのようにお客様を獲得、つまり営業をされているのでしょうか。
多くの富裕層の方が当社ならではの強みを理解してくださっているので、現在は当社の物件を運用したい方が約400名待ちとなっており、いわゆる営業活動はまったくしていません。きちんとオーダーメイドを行っていることもあり、多少待ってもらってはいますが、その分失敗しない物件を厳選しながら随時紹介を行っています。顧客ニーズとしては本業の他に月10万~30万円の家賃収入が欲しい方から、できる限り節税対策をしたい方までいらっしゃいますが、やはり税金の知識が突出していることで当社をお選びいただいていると思います。
お客様の層はプロ野球選手やお医者さん、税理士さんなど、年収4,000万円以上の方が多いです。そのような方は普通に稼いでも、相当な額の税金を持っていかれます。当社で不動産投資を行えば、運用収入を得られるだけでなく節税対策までできるので、やらない理由がありません。
▽内装ビフォー
▽内装アフター
不動産投資業界に感じる課題
─ 不動産業界全体に対して感じる課題はありますか?
まずは、不動産屋さんの知識が乏しいことです。不動産と税金は密接に関わっているのに、不動産屋さんは税金の知識がない人が多いです。知識がない不動産屋さんから物件を買っても、お客様はなかなか稼ぐことができません。それでは騙されたように感じるでしょうし、不動産屋さんとお客様と関係も一回限りになってしまうでしょう。営業マンにノルマがあるためか「物件の良し悪しに関わらず、とにかく売る」というのは、未だに業界に残る悪しき習慣だと思います。
当社は自社運用物件からの安定的な収入があり、お客様も待っている状態かつ在庫薄の状態が続いていることもあるため、営業ノルマはありません。もちろんお客さまを騙すようなことはせず、しっかり儲けられる仕組みになっているので、リピーターの方もたくさんいらっしゃいます。
また、日本人は当社のように「古い物件をリフォームし、価値の高いものに変える」という意識が低いと感じます。海外ではアンティークになれば高値で取引されるのに、日本ではとにかく新しい物件をどんどん建てて売るばかりです。税金対策の面でも、もったいないことをしています。
─ その課題に対して、何か取り組まれていることはありますか?
他社さんを変える、あるいは業界全体を変えるということより、まずは当社が進めている築古物件の再生をどんどん行っていければと思っております。結果として関わった企業やお客様が潤えば、このビジネスの価値も認められている証拠になるかと思います。
また、不動産売買・管理の事業にこだわるのではなく、常に新規事業にも挑戦できる状況にすることも目指しています。例えば3Dプリンタの技術を活かした新規事業などですね。今の企業規模ではまだ挑戦するには課題が多いですが、いずれ参入したいと考えております。
─ 昨今の空き家問題や2022年問題、少子高齢化などが不動産投資業界に与える影響をどのようにお考えでしょうか。
不動産業界に限らず、少子高齢化については何か対策を講じなければ国が衰退してしまいます。不動産業界でいえば、人口は減っているのに異常な数の新築が建てられており、大きな歪みになっています。「とりあえず建てて売ればよい」というスタンスでは、いずれ立ち行かなくなるでしょう。
そのような状況の中、国内で新築の不動産賃貸は難しくなりつつあります。家賃が下落するリスクが大きいものには手をつけず、ある程度賃料の下落幅が読みやすい中古物件をうまく取り扱うことが大切です。
コスモバンク株式会社の未来構想
─ 貴社の未来構想についてお聞かせください。
上場についてはこだわりがなく、まずは社員と社長の給与が上がるほうがよいと考えています。日本の会社は、上場すると会社が社員のものではなく株主のものになってしまいます。企業は配当金を支払うことばかり考えるようになるため、社員の給与がなかなか上がりません。当社は、利益が上がったらまずは社内メンバーへの還元を優先したいですね。
売上についても、特に目標を掲げているわけではありません。それでも、5年以内に100億円は必ず超えるはずです。先ほどもお話したように、営業ノルマは不動産業界の課題の一つです。売上目標を設定したことで、お客様に無理やり物件を売りつけるようになっては意味がありませんので、当社としては純粋に社会から求められた結果として、売上が上がっていけば良いと思っています。
─ 本業以外に何か取り組まれていることはありますか。
児童施設などの子どもたちのために寄付金を募り、その寄付金で購入し運営しているアパートの家賃収入で、野菜やお米を買って贈るプロジェクトを行っています。一般的な寄付は単発で終わるものが多いですが、このプロジェクトは継続的に収益が上がる家賃収入で賄われるため、継続性があります。すでに多くのお客様がこのプロジェクト賛同され、寄付をしてくださっています。
このような活動を偽善という人もいますが、まったく気にしません。「やらない善より、やる偽善のほうが価値がある」と思っています。
投資家や金融関係者、社会へのメッセージ
─ 投資家や金融関係者、ZUU onlineの読者へメッセージをお願いします。
不動産投資を行う際に、税金対策の知識があるのとないのとでは、結果は大きく変わります。知識がないばかりに売り込み主義の投資物件を買ってしまい、大損をするケースも少なくありません。
当社はお客様にお待ちいただいている状態なので、全ての方の相談をすぐに受けることはできませんが、まずは知識を身につけて、騙されないようにしてください。そのために、当社では日々YouTube動画をアップしています。内容は不動産や税金、土地選びなど幅広く、すでに300本以上の動画を公開しています。
不動産は、きちんと学んで運用すれば節税対策をしながら利益を出して、なおかつお金を貯めることもできる投資方法です。きちんとした知識を身につけて、確実に収益を上げられる選択と行動をしていただきたいと思います。