ダイバーシティ経営の成功事例
ダイバーシティ経営の計画は、どのような方向性で考えれば良いのだろうか。ここからは、経済産業省が選定している「新・ダイバーシティ経営企業100選」から、参考にしたい成功事例を紹介する。
出典:経済産業省「新・ダイバーシティ経営企業100選」
【事例1】3方向からの施策でダイバーシティを社内へ浸透/日本ユニシス
2020年度に選定された『日本ユニシス株式会社』は、イノベーション創出を目的として風土改革に取り組んだ。2012年にキャリア相談窓口支援を始めたことを皮切りに、ダイバーシティ推進室の設置や産休・育休の取得推進、女性社外取締役の選任など、次々と関連施策を進めている。
同社はダイバーシティ推進の視点を「経営陣・現場・外部コミュニケーション」に分けて、各分野で取り組むべきことをまとめた。3方向から施策を進めることで、新規事業創出プログラムや新しいビジネスが拡大し、従業員のエンゲージメントスコアも向上している。
【事例2】外国人社員の積極採用と活躍推進/スズキハイテック
同じく、2020年度に選定された『スズキハイテック株式会社』は、海外展開を成功させるために外国人社員を積極的に採用した。同社の事例で参考になるポイントは、社員ひとり一人の活躍まで見据えている点だ。
例えば、採用にあたっては人材の要望をしっかりと聞き入れ、企業側の希望も伝えている。また、言語・文化の異なる外国人社員を現場に溶け込ませるために、経営トップが自らコミットメントを行ってきた。
結果として、同社は受託一辺倒のビジネスモデルから脱却し、成長を目指せる開発主導型の体質へと変化させている。
【事例3】業界イメージを変える長時間労働の是正/SCSK
2018年度に選定された『SCSK 株式会社』は、業界のイメージを変える取り組みを進めてきた。IT業界は過酷な労働環境が常態化しがちだが、同社は経営理念の一つに「人を大切にします。」を掲げ、長時間労働是正のために「スマートワーク・チャレンジ 20」を開始。
具体的には、平均残業月20時間未満かつ年次有給休暇20日の100%取得を目標とし、達成者には残業代(削減分)を原資とした賞与を支給している。その他、女性社員やシニア人材も積極的に活用しており、優秀な人材が育ちやすい好循環を実現した。
ダイバーシティ推進を成功させるポイント
ここまでの内容を踏まえて、以下ではダイバーシティ推進を成功させる3つのポイントを紹介しよう。
従業員への周知を徹底する
従業員同士の細かいコミュニケーションまで含めると、性差別につながる出来事はいつ起こるのか分からない。本人にその気がなくても、前述のアンコンシャス・バイアスによって女性や外国人などを傷つけてしまう場合もある。
そのため、ダイバーシティ推進を決めた段階で、従業員への周知は徹底することを意識したい。取り組み内容はもちろん、その成果まで細かく共有しておけば、自然と従業員の意識改革を図れるようになる。
重点的に取り組むべきテーマを絞る
本当の意味でダイバーシティを実現するには、さまざまな施策に取り組む必要がある。女性はもちろん、障がい者やシニア人材、外国人労働者なども平等に受け入れなければならない。
しかし、コストが限られた中小企業では難しいため、まずは重点的に取り組むべきテーマを決めることがポイントだ。フレームワークなどを活用しながら自社の強み・弱みを分析し、今後の事業活動に役立つ施策を考えていこう。
経営トップ層の意識改革にも取り組む
ダイバーシティ推進では従業員だけではなく、経営者や採用担当者の意識改革も必要になる。いくら効果的な施策を打ち出しても、経営トップ層の言動が見合わなければ新しい文化・価値観は浸透しない。
そのため、前述のキリンホールディングスのように、従業員の声に耳を傾けながら施策を考える必要があるだろう。ダイバーシティの推進が、かえって従業員のストレスにつながる恐れもあるため、経営トップ層は十分に情報収集をすることが重要だ。