この記事は、2022年10月31日に三菱UFJ国際投信で公開された投資環境ウィークリーを一部編集し、転載したものです。全体をご覧になりたい方は、こちらをご覧ください。加えて、デイリーレポートについては、mattoco lifeをご覧ください。
有効求人倍率は9カ月連続で上昇
2022年9月の完全失業率は2.6%となり2022年8月の2.5%から小幅ながら上昇するも、2020年10月をピークに低下傾向をたどっています(図1)。
中身をみると就業者数は小幅増加、労働参加率は上昇しており、失業者数の増加が失業率上昇の要因です。ただし労働需要が減退している訳ではなく、失業者数の内訳をみると転職など自発的な離職者数が増加しており感染収束による雇用情勢の改善を示唆しています。
また、2022年9月の有効求人倍率は1.34倍(2022年8月1.32倍)と9カ月連続で上昇。有効求職者数は減少するも、労働需要を示す有効求人数は7カ月連続で増加しています。
宿泊・飲食サービス業関連の有効求人倍率は3倍を超えており、水際対策緩和を受け観光需要が増加する中でさらなる雇用不足も想定されます。今後も経済活動の再開が進む中、雇用は緩やかな回復が維持される見通しです。
金融政策据え置き、物価見通しを上方修正
日銀は2022年10月27~28日の金融政策決定会合で金融政策の現状維持を決定。長短金利操作、資産買入れ、フォワードガイダンスは現状のまま据え置かれました。四半期に一度の「展望レポート」では実質GDP見通しが下方修正、消費者物価見通しが上方修正されました。
2022年度の消費者物価コア(除く生鮮食品)は前年比+2.9%に大きく引き上げられました(図2)。
成長率見通しが引き下げられたため国内経済の強さが要因ではなく、インフレ持続は見込み難いと言えます。実際に2023、2024年度のインフレ見通しは小幅の引き上げにとどまっています。
当面日銀は金融緩和策を維持するとみられ、政府が経済対策を通じてエネルギーなど物価上昇の抑制を図り、労働生産性ならびに賃金上昇を推進する事が望まれます。
日本株は週間で3週ぶりに上昇
先週は日経平均株価が週間で3週ぶりに上昇するなど日本株は堅調でした。事前予想を上回る決算や米利上げ幅の縮小観測が広がり投資家心理が改善しました。好調な決算発表から医薬品や電気機器等が上昇する一方、パルプ・紙や陸運業等の景気敏感セクターは軟調でした。
東証の投資部門別売買状況をみると、2022年10月17~21日は海外投資家が現物・先物合計で3,543億円売り越しています。累積売買額でみると海外投資家の売りが日本株の上値を抑えている事がわかります(図3)。
日本株は経済活動再開や円安効果で2022年度は1株当たり利益の増加が見込まれるも、海外投資家は景気敏感株の多い日本株を売り越しており、本格反発には米インフレのピークアウトと金融引き締め観測の後退が鍵を握ります。
向吉 善秀