03:勝ち続ける投資家になるための思考のパターンとは
(画像=Suriyapong/adobe.stock.com, ZUU online)

インフレ、金利上昇、終わらない戦争……、外的要因が多発する昨今、資産形成に悩み多き時代が到来している。投資とはリスクを理解しリターンを計算して行うもの。最大のリスクは戦争や経済危機はもちろん、大口の買いや売りといった想定できない価格変動要因だ。いかにしてこれらを排除し、自らのリスクテイクにより、リターンを上げられるのか。この課題への解として「投資は技術である」と説く人物がいる。投資歴40年、その投資術により国内外に門下生3,000名を抱える株塾主宰の相場師朗氏だ。

個人投資家が混迷の時代に資産形成するための投資の考え方を解き明かす本特集、第3回目は「勝ち続ける投資家になるための思考のパターンとは何か」。株式投資において、そして株式投資に限らず、大きな資産形成を行うために必要とされる投資思考とは何か、ふたたび実践的なノウハウを投資における“株職人”に詳しく聞いた。

目次

  1. 相場式トレードは、株投資だけにとどまらず、そして誰でもできる
  2. 時間軸から高めて俯瞰して見ることで、チャートの見え方も変わる
  3. 日々の練習と学びから気づきの数が増えれば、勝率は上がる
相場師朗(あいば・しろう)
お話をお聞きした人:相場師朗(あいば・しろう)
トレード歴40年の「株職人」、現役プロトレーダー。“株匠”を目指している。20歳で株の売買を始めてから、チャートと建玉の研究に没頭。現在も、チャートと建玉の操作のトレード手法をさらに極めるべく精進を重ねており、日本株、米国株、イタリア指数、イギリス指数、ユーロ指数、金、原油、コーン、FXなど、どの市場でも大きな利益を生み出す。研究発表の場として投資塾「株塾」を主宰。ラジオNIKKEI「相場師朗の株塾」は高い聴取率を誇る。日本経済新聞社主催「日経Wアカデミー」講師。日本取引所グループ主催「北浜投資塾」講師

相場式トレードは、株投資だけにとどまらず、そして誰でもできる

相場師朗氏

──相場式のトレード技術は、参加者の多い市場のほうが効果を出しやすい、リターンを得やすいと教えていただきました。具体的には、どの市場、どんな銘柄を狙えばいいですか?

そうですね。東京市場であれば、1日の出来高が20万株から30万株以上あるような銘柄がいい。たとえばJPX400に採用されているような大会社なら、どの銘柄でも大丈夫です。

ほかに、世界的に動いているような金、原油、コーンといったコモディティ市場もよいところです。それから、インドやドイツやイギリスといった株式の先物市場などでしょうか。

FXは、株よりもっと多くのお金が動いていますから、非常に読みやすい市場といえます。また、FXは少ない金額でもレバレッジによって大きな利益を狙えます。

ただし、少ない金額でたくさんの利益を狙えるということは、うまくいかなかったら大きなマイナスを被るということなので、FXは株トレードが上達してからのほうがいいでしょう。

──これから株式投資で上達を目指す方が、実際に利益を出せる、いわば“プロ投資家”に成長するためには、「株塾」ではどんなステップと期間が必要ですか?

たとえば最近の話では、入塾から4ヵ月で、月に30万円ほど利益が取れるようになったという方もいます。通常は5ヵ月から半年くらい通うと、利益を出せるような学び、経験が得られると思います。

半年という学びの期間ですが、これは決して長くありません。不動産のような、初期投資における大きなリスクを負わずに利益を狙える投資手法ですから、しっかり勉強する人でないと成功はできません。

極端な例ですが、私が通う銀座の歯医者さんが塾生なのですが、彼は入塾から1年経っても1回もトレードをしていません。この方はとても優秀で、学びのために歯科の診療時間を午後だけにしてしまい、空けた午前中を株の勉強やトレードの練習に費やしています。

彼は、完璧に勉強を仕上げてからトレードデビューする、と決めているのです。これは、相当に上手になりそうな感じがします。

対して、練習すべき期間に、お金を入れて実際に投資をし、負けてしまう人もいらっしゃる。そうすると、メンタルも整っておらず、学びを続けられなくなってしまいます。

たとえば空手道場に1週間を通ったとしましょう。1週間の稽古や練習では、もし不幸なことにストリートファイトとなったとき、たぶん負けてしまうでしょう。

やはり5年か7年しっかり通って黒帯を取ってからであれば、もしそんな状況になっても、それは強いでしょうね。もちろん、いまはストリートファイトをしてはいけませんが(笑)。

ですから、入塾してすぐにトレードをするのはダメですね。ちょっとかじっただけで始めてしまうんですから上手くいきません。しっかり勉強して、ある程度の基礎を身につけてから実戦とするのが、何でも筋だと思います。5ヵ月から半年はしっかり勉強してほしいですね。

──「株塾」は、その期間に対して、しっかり勉強するための仕組み、体制があるわけですね。

株塾の活動は、まずメインの活動として定例の勉強会が月2回あります。ほかに補講動画が週1回、100本ノック動画が週1回ありますが、近年は特に初心者のサポートに力を入れていまして、入塾したばかりの塾生がしっかり勉強できる「初めの一歩」と命名した3ヵ月コースがあります。

この3ヵ月コースはオンライン開催ですので、日本中のどこにいても参加できます。コースのなかには交流会もあって、受講した人同士で自主的な勉強会のためのチームやコミュニティもできています。

なかには「株塾」で投資仲間をいっぱいつくって、過去3年間1日も欠かさず、毎晩オンライン勉強会を開いている熱心な塾生さんもいますね。

──個人投資家というと孤独というイメージがあり、投資に煮詰まってしまったり、悩んでしまったりすることもあります。そういったコミュニティがあるというのも、上達のステップのひとつなのでしょうか。

そうですね。やはり仲間ができると、孤独感もなくなります。ともに欠点を補い合いながら上達を目指せるのもメリットです。

塾生同士のチームで高め合いながら勉強会に参加し、動画でも学習しているので、退塾する方も少ないですね。

時間軸から高めて俯瞰して見ることで、チャートの見え方も変わる

相場師朗氏

最後に、投資技術を学ぶだけでなく、練習を積み、仲間と切磋琢磨してから、トレードを実践すべき、という話のご説明として、特集の第1回でも少しだけお話しした「日足だけではなく週足、月足も見るチャートの読み解き方」をご紹介したいと思います。銘柄はミクシィ(2121)で解説していきましょう。

▽ミクシィ(2121)2017年7-8月株価の推移

パンローリング_ミクシィ
画像引用:パンローリング

2017年の7月あたりですが、これはトレードをしてはいけない局面です。なぜなら、移動平均線が横ばっているからです(図中A)。移動平均線がこのような状態のときは、株価が狭い範囲のなかにいるので、もし上がったように見えてもすぐに下がってしまいます。

▽ミクシィ(2121)2018年4月株価の推移

パンローリング_ミクシィ
画像引用:パンローリング

また、上げそうに見えて下げる場面というのもあります。たとえば2018年4月までミクシィはずっと下げてきました。しかし下げ止まってくると(図中B)、底なのではないかと思ってしまい、買ってしまう投資家さんも出てくる。そうすると少しだけ上がるんですが、結果としては5月以降も下げてしまう(図中C)。

ここをどう見抜くかというところなのですが、こういった場合は週足を見て、確認してみましょう。

▽ミクシィ(2121)2018年4月(週足)株価の推移

パンローリング_ミクシィ
画像引用:パンローリング

同じ期間の週足を見ると、移動平均線の順番が上から紫、青、緑、赤(図中D)で、まだローソク足が緑にもかかっていないのだから(図中E)、日足で一時的に上げたとしても、きっと長くは上がらないと考えるわけです。

この週足を見ることができたら、日足チャートが下げ止まりには見えなくなり、むしろ次の下げを狙って売りを入れ、利益を狙っていくということになりますね。

それから、月足はさらにおもしろいですよ。

▽ミクシィ(2121)2017年6月(月足)株価の推移

パンローリング_ミクシィ
画像引用:パンローリング

この月足チャートのいちばんの高値が2017年6月ですが(図中F)、もしここから2020年の3月まで売りのポジションを持っていたら(図中G)、たいへんなことになってしまいます。日足のチャートで見たとしたら、期間中の陽線や上ヒゲのところでは株価が上がっているため、最終的には下落するのに、F~Gの期間では上昇すると錯覚を覚えてしまいます。

しかし、月足でしっかりと先を見ることができれば、6,000円から2,000円までの下げの間で、売り建てにより利益を出すことができます。

このように時間軸に変えて複数の視点から相場を研究し、相場を読むことは、1人で行うには難しい部分もあるかもしれません。しかし、塾があれば、仲間がいれば、いっしょに学び研究できますから、失敗を少なくすることができるでしょう。

また、このチャートでは、6月の高値が2015年の高値、2014年の高値に並んでいる(図中H)というのもトレードをするうえでは重要なポイントとなります。高値が並んでいるということは、ミクシィの株価上昇の限界が2014年、2015年の高値が並んだところだと考えることができます。

ここからさらに上げるには……、たとえばミクシィがマイクロソフトを買収した、となれば話は変わりますが(笑)、このような大きな材料が必要です。一般に会社の収益力は、それほど急激に変わったりはしませんので、この限界に近づいたら、そろそろ株価は下がるだろうなと予想するわけです。

そうするとローソク足が赤の移動平均線の内側に入ったので空売りし(図中I)、赤の線を上抜くまでは持とう(図中J)と判断することで、6,000円から2,000円程度までにおける利益を出すことができます。

このように、月足や週足、日足を組み合わせることでいろいろなことがわかってくるわけです。これは、空手でいえば右手、左手、右足、左足、体捌きなどいろいろ組み合わせて使うようなものです。

チャートもまったく同じですね。そのためには実践に向けてしっかりと練習し、ひとつひとつの技をしっかりと使いこなせるようになる必要があります。

日々の練習のなかで、また講師や仲間との研究によって、気づき、気づき、気づきの連続で、最後はいろいろなことがわかるようになるわけです。

チャートを例に、トレードのための技術がたくさんあることを、少しだけ解説しました。やはり投資において、機械的に5%でロスカットするような投資方法では、利益を出し続けるのは難しいと思います。持ちっぱなしにするにしても、しっかりとした根拠を基に、技術を駆使して持ち続けるのであればよいのですが。

日々の練習と学びから気づきの数が増えれば、勝率は上がる

相場師朗氏

──移動平均線だけでなくローソク足も、月足や週足を見ることができるようになれば利益を出せるシーンが増えてくる。そして多数の技を組み合わせることで、チャート上の気づきがどんどん増えていって、結果として勝率が上がるということなのでしょうか。

そうですね。ピアノで楽曲を仕上げることをイメージしてみましょう。まずは1曲を最初から最後まで引っかからずに演奏できるようになる。次は芸術性を持たせるため、技術を組み合わせてアレンジしていく。トレードの技術を習得し実践に至る過程も同じですね。

また、本当に技術を極めれば、たとえば合気道であれば、相手のパンチを小指1本でかわすこともできるはずです。しかし、なかなかそれを実戦で実現することはできない。それこそが職人技の世界なのではないでしょうか。理論でできることを実際にできるようになる。そのためには鍛錬が必要です。

──最終的には予測のつかない市場ですから、勝ちパターンだけこだわると、トレードのチャンスは少なくなってしまいそうです。どんな状況でも勝つ可能性を高めるために、トレードの技術を磨き続けるというのは、長く学ぶ理由になりそうですね。

トレードを学び、トレードの技術を磨くことは、ビジネスと同じかもしれませんね。新入社員ではできないけれど、10年目の社員であれば難なくこなせることも多いものですから。

たとえば、うちの社員がトラブルの報告に来たときに、ちょっと話を聞くと、じつはたいしたことがなくて、適切に対処すればすぐ終わる、というケースもあります。

あるいは、若い人から見れば取るに足らないことが、ベテランから見たら重大な問題であり、すぐに対処しなければならない、ということもあります。トレードもいっしょなんですよね。

この点でも、1人ではなく、先生がいたり先輩や仲間がいたりすることは必要な環境だといえます。

──投資というと、医師や経営者、ビジネスマンが空いている時間、本業以外の時間に行うというイメージがありますが、いまのお話を聞いていると、とても業務的、仕事的ですね。

実際、本業より稼げてしまうので、本業ぐらい、真剣にやらなきゃいけないですよね。

本業をやりながら本業ぐらいやるってのはたいへん、と思われるかもしれませんが、大企業で成功して地位を上げていった人も、著名な医師や弁護士の方も、実際にたいへんな仕事をしながら「株塾」で勉強して、ちゃんと利益を出せるようになっているので、両立はできるのですよ。

また、トレードが本業になっちゃった人もいますね(笑)。いわゆる専業トレーダーです。

25歳で専業トレーダーに転向したとある方は地方にお住まいですが、東京開催の株塾勉強会には毎回出席していますし、こちらからの質問にも全部答えられるくらい勉強されている。そして、できるだけ私の近くにいて技術を吸収しようとしていますね。

学んだことを基にしっかり投資で稼ぐという思考さえあれば、塾の会費だったり東京までの遠征費もすべて必要経費という考えになるかと思います。

この記事を読んでいるZUU onlineの読者の皆様は、これから成功を収めようとしている方が大半かと思います。おそらく投資のために学習が必要、というマインドセットは備わっており、いわば投資の第一関門は突破されていますので、きっとすぐにできると思います。

いっしょに学べることを、楽しみにしています。

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真の富裕層になるために、投資の極意、そして株式投資のリターンの積み上げ方を解き明かす“株職人”相場師朗氏へのインタビュー。第3回では、勝ち続けるための投資家の姿勢について、詳しくお聞きした。

それは、仕事で勝ち続けるビジネスマンと同じように、学び続け、チャレンジし続け、そして、同じ志の仲間と切磋琢磨することだと、相場師朗氏は説く。

買ったから買いっぱなしとしない、値下がりしても慌てて損切りをしない。相場師朗氏の勝ち続ける投資スタイルは、テクニカル投資に対する学び、研究がベースとなっている。先入観を持たず、真剣に向き合う日々の業務と同様に、投資テクニックへの学びを深めることが、資産を築き、本当の富裕層になるためのスタンスといえるだろう。

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相場師朗(あいば・しろう)
お話をお聞きした人:相場師朗(あいば・しろう)
トレード歴40年の「株職人」、現役プロトレーダー。“株匠”を目指している。20歳で株の売買を始めてから、チャートと建玉の研究に没頭。現在も、チャートと建玉の操作のトレード手法をさらに極めるべく精進を重ねており、日本株、米国株、イタリア指数、イギリス指数、ユーロ指数、金、原油、コーン、FXなど、どの市場でも大きな利益を生み出す。研究発表の場として投資塾「株塾」を主宰。ラジオNIKKEI「相場師朗の株塾」は高い聴取率を誇る。日本経済新聞社主催「日経Wアカデミー」講師。日本取引所グループ主催「北浜投資塾」講師