建設業界が抱えている課題6つ

建設業界は、他の産業に比べて慢性的な課題を6つ抱えている。

1.長時間労働と年間出勤日数の多さ

国土交通省の資料『最近の建設業を巡る状況について』によると、建設業の年間実労働時間と年間出勤日数は2014年から減少してはいるものの、調査した全産業の平均である調査産業計より年間労働時間は346時間、年間出勤数は30日ほどと、かなり負担が大きいことが分かる。

建設業の2025年問題
引用:国土交通省『最近の建設業を巡る状況について』P.7より引用

また、2020年の『日建協時短アンケート』によると、建設工事全体の約4割が4週4休以下で働いていることが確認されている。労働基準法では、会社側は労働者に対して4週4休以上の休みを与えることが義務付けられているが、アンケート回答企業においての現状とはいえ休暇が取りにくい業界であることが分かる。

2.若手不在による業界の高齢化

建築業界の年齢階級別の就労状況は、2023年の総務省『労働力調査』によると以下の通りだ。

建設業の2025年問題
画像:総務省『労働力調査(2023年)』のデータを引用して筆者がグラフ作成

男性の就労者数に着目すると、50歳以上の高齢者層が204万人であり男性の全年齢の人数である395万人の約半数を占めている一方で、10代〜20代の若手層は47万人と全体の12%程度であり、若手人材の不足が深刻化している。一般的な定年にあたる60歳以上が68万人と17%ほどであることから、ベテラン層の退職によって人手不足がさらに常態化することになろう。

また、女性の就労者数は88万人と少なさがひときわ目立ち、建設現場での作業者は男性が圧倒的に多い。

3.賃金の低さとピーク年齢の若さ

建設業の年収は業界全体で見た場合、類似した業界である製造業よりも低い。2016年のデータではあるが『賃金構造基本統計調査』によると、平均年収額は以下の通りだ。

建設業の2025年問題
引用:国土交通省『建設産業の現状と課題』P.21より引用

建設業界は小規模企業数が製造業よりもはるかに多い業界構造であり、大規模企業では製造業よりも給与が高いが、中規模以下の企業まで含めた給与平均額は低い。

なお、建築業界の賃金が上昇傾向にあり、2019年には建設業男性全労働者の給与は製造業を超えている。しかし、生産労働者は依然として製造業よりも低いのは変わらない。また、建設業の就労者の賃金ピークは45歳〜49歳であり、現場作業の評価を重視し、マネジメント層の評価が低い傾向がある。

4.建設業界ならではの慣習

建設業界でもデジタル化は進められてはいるが、建設業の許可申請はもちろん土木・建設工事の契約書や各種申請書、設計図など膨大な書類があるためペーパーレス化が遅れている。

さらに、高齢者が多く職人文化が色濃い工事現場では、行き過ぎた指導などがパワハラにつながることもある。

5.職人をはじめとする人材育成の遅れ

建設工事の現場ではICT化が進みつつあるが、全ての業務をデジタル化できるとは限らない。大工やとび、左官や内外装などといった職人としての経験が必要な職種では、一人前として業務に対応できるのに5年から10年はかかるとされている。

しかし、職人たちの高齢化が進む中、20代などの若手層を育成するだけの十分な時間が確保できず、人材育成は遅れている。

6.アナログ的な経営

建設業は小規模企業の従業員数が大半であり、一人親方と呼ばれる会社に属さない技能者も多数いる。それに加えて、工事に使用する原材料費の高騰なども重なり、IT化に取り組むだけの予算がないのが実情だ。

また、そもそもデジタル技術の活用が難しい一面があるため、従来のアナログ的な経営から脱しにくい状況である。