建設業の2025年問題に対する7つの解決手段

2025年問題による建設業の担い手の減少に歯止めがかからない中、建設業者にはどのような対策が求められるのだろうか。ここでは、7つの解決手段を紹介する。

1.建設業界のイメージアップ

建設業界は、労働時間の多さや職人気質の厳しい現場など、古くからある「3K(きつい、汚い、危険)」のイメージが払拭できていない。また、建設業界への就職を子どもたちに勧める人が少ないという現状がある。

イメージアップのためには建設業界が抱える課題の解決も重要だが、建設業の魅力を伝えることも欠かせない。

国土交通省では、建設業の存在意義である「日本の国土・まちをつくる・まもる」を前提に、建設業のリブランディングを進めているところだ。現場で働く人に焦点を当てた広報や、建設現場のイメージ映像の発信など、インターネットやSNSを活用した情報発信にも取り組んでいる。

個々の事業者にできることは限られるが、大成建設の新海誠監督とのコラボCMに代表されるように、業界全体としてイメージアップに取り組む必要があるだろう。

2.給与体系の改善

建設業界の給与体系は、体力のピークである40代が給与のピークでもある。つまり、現場でいかに働けるかが給与額に直結しているという問題を抱えており、個人の技能やマネジメント力などの評価が給与に反映され難い。

国土交通省は、工事に関わっている技能者の資格情報や就業履歴などのデータを収集・蓄積するための「建設キャリアアップシステム(CCUS)」の導入を推進している。これにより、技能者の客観的な評価や給与待遇への反映はもちろん、キャリア構築に欠かせないスキルアップの計画を立てることもでき、若手層の定着率の向上が期待されている。

・システムをどう活用するかが求められる

建設キャリアアップシステムへの技能者の登録者数は、2024年2月末時点で技能者が138万2,876人、事業者が25万5,752者であり、2023年3月末に比べて技能者は240万人ほど、事業者は40万者ほど増加している。経営者は、システムを利用するのはもちろんだが、得られたデータをもとに給与待遇の基準見直しなどに取り組むことが求められる。

登録や現場利用に際して、認定登録機関やCCUS認定アドバイザー、CCUS登録行政書士などのサポート体制構築も進んでいるため、運用に迷っている場合は相談してほしい。

3.労働環境の改善

工事現場の労働環境の改善は最も重要だろう。

建設業界の労働災害数は産業全体の中でも突出して多く、2016年〜2020年の間に一人親方等が463人亡くなっている。それほど現場には危険が潜んでおり、対策が不十分であることが分かる。そのため、KY(危険予知)活動や工事前の点検、資格の取得、ICT化による安全作業技術の導入などを徹底する必要がある。

・労働生産性の向上によって作業者の負担を減らす

建設工事現場では、ICT技術の導入による施工品質の向上や労働時間削減を目的として、「i-Construction」への取り組みが2016年度から進められている。

ドローンによる工事現場の把握や測量はもちろん、トータルステーションを利用し即位情報を元にICT建機によって施工機械を自動制御するなど、土木工事の現場では実際にICT施工が行われている。ICT技術の活用は未だ限定的ではあるが、危険度の高い作業へのIoT技術導入も進み始めており、技術動向を確認しながら自社が関わる工程への適用も随時考慮する必要があるだろう。

4.工期設定の適正化

「i-Construction」によって、施工時期の平準化などが進んだとしても、そもそもの工期設定が適正でなければ、工事従事者の負担は減らない。

国土交通省は2018年、「建設業働き方改革加速化プログラム」を策定した。週休2日で工事を実施することを目標として定め、各種建設工事の発注者に対して適正な工期設定を求めている。

発注者側は、受注者側に工事内容の情報共有を行ったうえで、無理のない工期設定で契約しなければならない。一方、受注者側も工事を受注するために短い工期での対応を提案する「工期のダンピング」を行わないといった対策が必要である。

5.DXの推進

建設業界でもDXの推進は欠かせない。DXはデジタル技術を活用した経営革新のことであり、建築業ではICT施工の導入などはもちろん、自社のアナログ的な経営からの脱却も必要だ。

ペーパーレス化や社員のテレワーク推進に向けたシステムの導入によって、株式会社菊正塗装店などすでに業務効率化を果たしている企業もある。

・IT人材育成も重要

自社の既存システムへの対応も重要だ。日本では、システムの複雑化やブラックボックス化によるレガシーシステムの問題やIT人材の不足といった「2025年の崖」という課題がある。

DX推進にはSIerなどへの外部委託を活用すべきだが、将来的なレガシーシステム化を防ぐためにも、自社でIT系スキルのある経験者を採用したりIT人材を育成したりすることが欠かせない。

6.多様な人材の積極的な採用

建設業界は、他の産業と同様に労働力不足や技術革新の必要性に直面しており、多様な人材の積極的な採用と活用も重要視されている。

多様な人材とは、異なる文化背景、年齢、性別、専門知識を持つ人々を指す。建設業界に新たな視点を取り入れることで、より革新的なアイデアやソリューションの創出につながり、幅広いクライアントのニーズに対応できるようになると期待される。

また、多様性はチームの問題解決能力を高め、企業文化を豊かにする可能性もあるため、採用政策の見直しや、多様な人材が能力を最大限に発揮できる環境整備が必要となる。

7.継続的なスキルアップと資格取得の支援

建設業界における技術革新の速度は速く、それに伴い、職場で求められるスキルセットも絶えず変化している。このため、従業員が継続的にスキルアップし、新しい資格を取得できるよう支援することが、2025年問題への対応策として極めて重要だ。

社員の成長支援は、従業員が最新の建設技術、安全基準、環境規制に適応できるようになるために不可欠だ。例えば、オンライン教育プログラムや社内研修を提供し、学習と成長の機会を増やすことが考えられる。また、資格取得のための費用補助や勉強時間の確保など、従業員が新しい資格を取得しやすい環境を作ることも大切だ。こうした取り組みにより、技術革新に適応し、労働力不足にも効果的に対応できるようになる。