この記事は2022年11月26日に「CAR and DRIVER」で公開された「日産がロシア市場から撤退完了。事業施設はすべて売却」を一部編集し、転載したものです。


日産がロシア市場から撤退完了。事業施設はすべて売却
サンクトペテルブルグ工場ではエクストレイルなどを生産していた(写真は2018年)

日産自動車は2022年11月24日、「ロシアのすべての事業がNAMIに譲渡」されたと発表した。

2022年10月の時点で「ロシア市場からの撤退」を表明していた。日産はロシアによるウクライナ侵攻による影響を受け、2022年3月からロシア事業を停止していた。

日産は2003年にロシアに販売会社を設立し、2006年にはサンクトペテルブルグに車両工場の建設を決定。2009年から稼働し、年間生産能力は5万台を誇った。高級セダンのティアナや小型SUVのエクストレイルなどを生産し、竣工式にはウラジミール・プーチン氏やサンクトペテルブルグ市長などが出席していた。

竣工式で当時のカルロス・ゴーン社長は「ロシア国内での車両生産開始は日産のロシアにおけるブレークスルーである。現在の環境下で、サンクトペテルブルグに日産の工場を開設したということは、ロシア経済の高い可能性に対する私たちの信頼と自信を明確に示している。新工場での生産開始により、日産は地域社会にとって不可欠な存在になった」と述べている。

日産がロシア市場から撤退完了。事業施設はすべて売却
サンクトペテルブルグ工場の建設に関する調印式のもよう

日産自動車発表のプレスリリース(原文)

■ 2022年11月24日発表

日産自動車株式会社(本社:神奈川県横浜市西区、社長:内田 誠)は、Nissan Manufacturing Russia LLC(NMGR)の自動車・エンジン中央科学研究所(NAMI)への売却を正式に完了しました。

既に公表しているとおり、今回の売却により、NMGRが担うロシアの全ての事業がNAMIに譲渡され、今後の乗用車プロジェクトのために活用されます。本売却には、サンクトペテルブルクにある日産の生産・研究開発施設と、モスクワにある販売・マーケティングセンターも含まれます。

■ 2022年10月11日発表

日産自動車株式会社(本社:神奈川県横浜市西区、社長:内田 誠)は、本日、ロシア市場からの撤退に関して、同市場の事業をロシアの自動車・エンジン中央科学研究所(NAMI)に譲渡する事を決定しました。

今回の決定により、現在Nissan Manufacturing Russia LLC(NMGR)が担うロシアの全ての事業が NAMIに譲渡され、今後の乗用車プロジェクトのために活用されます。また、サンクトペテルブルクにある日産の生産・研究開発施設と、モスクワにある販売・マーケティングセンターは、新名称で運営される予定です。

本日の発表は、2022年3月から実施しているロシア市場での事業停止に続くものとなります。NMGRを引き継ぐ新組織のもと、同国の全従業員はNAMIにより12カ月間の雇用が保障されます。この度の譲渡については、数週間以内に関係当局の承認を受けて、正式に決定される予定です。

なお、今回の譲渡については、日産がNMGR及び同社の事業を買い戻せる権利が含まれており、今後6年の間に行使することが可能としております。

当社は、ロシア市場からの撤退に伴い、一過性の損失として約1,000億円を計上します。ただし、今年度の業績見通しに変更はありません。引き続き精査を行った後、詳細については、改めて今年度の第2四半期の決算発表時にお知らせいたします。

社長兼CEOの内田 誠は、「日産を代表して、長年にわたりビジネスに貢献してくれたロシアの仲間に感謝致します。ロシア市場で事業を続けることはできませんが、我々の仲間を最大限支援できる解決策を見つけることができました」と述べました。

尚、今年度の事業計画の見通しでは、ロシア事業は停止されている事を前提として織り込んでおり、 「Nissan Ambition 2030」のもと、当社の事業構造改革「Nissan NEXT」は目標の達成に向けて着実に進捗しております。

■ 2006年8月30日

日産自動車、ロシア市場にインフィニティブランドを投入
欧州におけるインフィニティの新本社をスイスに設立

日産自動車(本社:東京都中央区銀座 社長カルロス ゴーン)は2006年8月30日、モスクワ国際モーターショーにて、日産の高級車ブランド「インフィニティ」をロシア市場に投入すると発表した。

まず、インフィニティブランドの最初のラインアップとして、スポーティなクロスオーバー「FX」とラグジュアリーなパフォーマンス・セダン「M」を今秋より発売する。「FX」と「M」はいずれも3.5L・V6エンジンと4.5L・V8エンジン搭載車をラインアップし、モスクワとサンクトペテルブルクのディーラーにて販売される。

モスクワ国際モーターショーではさらに、インフィニティブランドで投入予定のスポーツ・セダン「G35」とフルサイズSUV「QX56」を披露するとともに、将来投入を計画しているインフィニティ クーペのコンセプトモデルもお披露目した。さらに同日、日産は欧州市場におけるインフィニティの新本社をスイスに設立することを発表した。

ロシア市場へのインフィニティブランド投入は、日産の中期経営計画である「日産バリューアップ」において、同ブランドのグローバル展開を目指す長期成長戦略の一環と位置付けている。現在、インフィニティブランド車は北米、台湾、韓国及び中東で販売されており、今回のロシア市場への導入に加え、2007年には中国及びウクライナに、2008年には欧州に導入する予定である。

同社の商品及び経営企画を担当する副社長のカルロス タバレスは、「本日、私たちは高級車ブランドとして確固たる地位を確立した"インフィニティ"のグローバル展開を祝いたい。上品で流麗なデザインと走りの喜びをユニークに組合せた"インフィニティ"は、お客様から大変高く評価されている。

また、既に"インフィニティ"を投入している他地域同様、ロシアのお客さまにも同ブランドが提供するお客さま一人ひとりにあわせた新しいラグジュアリーや配慮の行き届いた応対が享受されることを確信している」と語った。

インフィニティのディーラー・ショールームは、同ブランドのグローバル デザイン基準(IREDI:Infiniti Retail Environment Design Initiative)に準拠したものを採用する。なお、このIREDIプログラムは、商品を超えたお客さまとの継続的名関係を構築するTotal Ownership Experience(TOE)の重要な柱の1つとして確立されたものである。

インフィニティの欧州地域新本社は、スイス、ヴァレー州ロールに設立される。なお、インフィニティの欧州市場への導入は、同ブランド専用の販売サービス・ネットワークで2008年から開始される予定である。

■ 2006年6月13日

日産自動車、ロシア サンクトペテルブルグでの新車両組立工場建設を最終決定

日産自動車株式会社(本社:東京都中央区銀座 社長:カルロス ゴーン)は本日、ロシアでの車両組立工場建設に関し、同国の経済発展貿易省との合意書、及びサンクトペテルブルグ市との覚書に署名した。これにより、日産の同市での車両組立工場建設の実行計画が最終的に決定した。

ロシアのゲルマン・グレフ経済発展貿易省大臣とゴーン社長は、サンクトペテルブルグ市で開催中の国際経済フォーラムにて調印式を行い、合意書に署名した。本合意書の締結により、日産は、現地組立て車両向け部品に対する輸入関税の減免措置を受ける権利を得た。

また、サンクトペテルブルグ市のワレンチナ・マトヴィエンコ市長とゴーン社長は、同市での工場建設に関する覚書に署名した。本覚書の締結により、日産は同地区における戦略的な投資企業としての地位を確保することになる。

日産は、2006年4月25日にサンクトペテルブルグ市の新車両組立工場への2億ドル(約226億6千万円)の投資計画を発表した。稼動開始は2009年の予定である。年間生産能力は最大5万台を計画しており、従業員数は750人程度を見込んでいる。同工場では、ロシア市場のニーズに適した3車種以上のモデルを生産する予定である。

ゴーン社長は、「今回の合意書及び覚書の締結により、日産がロシアの自動車産業に寄与する道筋ができた。日産は、現地での新たな雇用の創出と投資を通じ、ロシアへの貢献ができるものと確信している。また、今後サンクトペテルブルグ市と長期にわたり相互に利益を得られる関係を維持できることを楽しみにしている。」と語った。

ロシアにおける販売は2003年8月にモスクワに設立されたロシア日産自動車会社が担当しており、約30の販売拠点から成るディーラーネットワークを通じて、日産車と日産純正部品をロシア全土へ供給している。2003年の日産の販売台数は9,470台であったが、同社が営業を開始した2004年には28,436台、翌2005年には46,485台へと大幅に増加している。

なお、日産は「日産バリューアップ」の長期的なグローバル成長戦略の一環として、2006年秋にインフィニティブランドをロシアへ展開する予定である。

注:為替レートについては便宜上、1USドル=113.3円をもとに換算した。

Writer:カー・アンド・ドライバー編集部

(提供:CAR and DRIVER