海外資産を半分以上持とう
円安への備えは大丈夫? 日本は円安になりやすい構造になっている
(1)長く円高に苦しんだ歴史があるので円安には備えがない
下はドルと円の長期のチャートです。ドルはかつての360円から2012年には80円くらいにまで下落してきました。しかしアベノミクスの大胆な金融緩和で円安が進みました。2022年からは米国の金利が上がりましたが、日本は金融緩和を続けているので、日米の金利差が大きくなりドル高・円安が進み現在は133円ほどです(2022年8月現在)。
―― そもそも、円安の何が問題なんですか?
日本は原油や食料を輸入に頼っているので、円安になるとこれらが上昇して暮らしにくくなります。また原材料やエネルギーが上がるとコストが上がって企業の収益を圧迫します。特に価格転嫁ができない中小零細企業は苦しいです。
逆にドル建ての資産を持っていると有利ってことですか?
そうです。円だけの資産の人と海外資産を持つ人の格差が大きくなります。バランスをとるためにも少なくとも半分は海外資産を持ちましょう。
(2)円建てでも対象が世界や米国なら海外資産です
―― えっ、そうすると、私は円建て投信しか持っていないのでダメですね。
投資先が世界とか米国なら円建て投信でも海外資産になります。投信の基準価格は円に計算されて表されます。
―― そうですか! 安心しました。それなら私は資産のほとんどは海外資産になります。
将来のことはわからないので、日本円だけの資産構成は資産運用としては偏りすぎています。海外資産が半分あれば円安の影響は理論上なくなります。
―― 私は70%くらい海外資産なんですが、多すぎますか?
いえ、大丈夫ですよ。日本は金利が低いので、預貯金ではリターンが得られません。また株式も経済成長率が低いのでリターンは海外に比べると低いです。したがって海外投資で運用するのは自然なことです。一時的に円高になっても長期的にはそれ以上にリターンの差が大きいですから大丈夫です。
- 解説
円安が進みやすい原因は?
金融正常化を目指す各国と金融緩和を堅持する日本との金利差でキャリー・トレードが起こっている
コロナの影響により、世界中で大幅な金融緩和が行われました。その後の経済回復によりインフレ率が上昇して各国ともに金融正常化を急いでいます。具体的には金利を引き上げています。米国国債10年ものの金利、つまり長期金利は2022年9月現在3.459%ほどです。対して日本では、日銀が緩和継続を堅持しており、長期金利は0.25%を越えないようにしています。金利の安い日本円を調達して、金利が高い米国債などで運用すれば利益が得られます。例えば、1万ドル分の日本円を金利0.25%で借りて金利2.75%の米国債で運用すれば年間で1万ドルの3%分の300ドルの利益が得られます。その間に円安が進めば、さらに利益は増えます。これは円キャリートレードと呼ばれています。金利差が大きい通貨の組み合わせで行われます。現在世界の主要通貨の中では日本円の金利が低いのでキャリートレードの対象に選ばれるのです。日本の金利が上がれば、この運用はできませんが日銀の緩和姿勢が強固なので、安心してこの取引ができるのです。結果としてさらに円安が進みます。日米の金利差が大きい間は円安になりやすい構図です。
1952年広島県神石高原町生まれ。2022年8月現在 70歳
工学部出身にもかかわらず、現役時は学習塾の講師をし、さらに独立して学習塾を経営。株式投資を20代ではじめる。当初は、日本の個別株投資からスタート。
投資については基礎から勉強したことがなかったため、65歳のリタイアを機に株式投資の勉強を一から学び直す。凡人でも成功できる投資を勉強し、実践。
さらにYouTubeで発信することで視聴者と情報を共有しながら投資に対する知識を深める。定期的に勉強会を開き、投資をしているシニア世代と交流もはかっている。
仲間とともに「一緒に勉強して一緒に成功する」がモットー。※画像をクリックするとAmazonに飛びます