この記事は2022年12月5日に青潮出版株式会社の株主手帳で公開された「サイバーリンクス[3683・プライム]食品流通向けなど業界特化基幹システムを開発 定常収入の積み上げで25年に売上高145億円へ」を一部編集し、転載したものです。
サイバーリンクスは、食品流通業や官公庁などにクラウドサービスを提供する会社。長年培ってきた基幹業務システム技術を、食品小売向けなど分野を絞って提供することで、業界大手など幅広い顧客を獲得している。
近年は、システム利用料といった定期的に入る「定常収入」の拡大に注力。2022年12月期は定常収入の積み上げなどから、業績過去最高の売上高132億6,700万円、経常利益10億4,600万円となる見込みだ。
▼村上恒夫社長
業界唯一のクラウド型自社開発とM&Aで機能拡充
同社の2021年12月期連結業績は、売上高が前期比3.6%増の132億4,100万円、経常利益が同0.7%増の9億5,800万円。売上高をセグメント別に見ると、「流通クラウド事業」が30.4%、「官公庁クラウド事業」が46.5%、「トラスト事業」が0.7%、「モバイルネットワーク事業」が22.4%となる(右下図参照)。
近年特に成長しているのが、「流通クラウド事業」だ。同事業では、食品スーパーや食品卸業者など向けに基幹システムを開発・販売。強みは、必要な基幹業務がすべてパッケージ化され、クラウドを経由して、どの顧客にも一律で同じサービスを提供することだ。ネット環境があれば導入でき、顧客からの要望を反映した最新型に自動でバージョンアップされるため、ハード保守や更新などの手間・コストが発生しない。
開発にあたっては、自社開発だけでなくネットスーパー、棚割り、分析など周辺サービス拡充のため、各業界で評価の高い1、2位の企業をM&Aで取り込み、内容を充実させた。発注、仕入れ・支払いから在庫の管理、利益の管理までサポートする食品スーパー向け基幹系システム「@rms」をはじめ、業者EDI(*1)、周辺システムも幅広く手掛ける。
「@rmsは2002年に着想し、2005年のサービス開始から今年で18年目ですが、業界で同様の『シェアクラウド型』を手がけるのは今も当社だけです。@rmsは年商300億円以下、中小のスーパーさんが中心ですが、周辺サービスは年商数千億円以上のお客様にも使っていただいています」(村上恒夫社長)
国内の食品スーパーは約2万1,000店あり、うち1,278店が「@rms」基幹を導入する。スーパーの運営企業ベースで見ると約1,000社のうち、約30%にあたる300社強が同社の何らかのシステムを利用している。
また加工食品卸売業・食品メーカー向け「EDIプラットフォーム」では、請求書など小売業ごとにフォーマットの異なるデータを自動変換する機能が好評。特に加工食品卸の中では大手10社中8社がこのシステムを採用し、業界標準となっている。
最優良で安価なシステムを分野絞りトップ目指す
和歌山県和歌山市に本社を構える同社は、村上社長の父・村上正義氏が1956年に創業した。当時はまだ普及していなかったテレビの組立・修理業が祖業で、1964年からは松下通信工業の代理店として市町村の防災行政無線を構築。徐々に事業領域を拡げ、1980年頃から業界を問わずオンプレミス型のSI、POS分析にも取り組み、これがクラウドサービス事業の素地となった。
そして「これからは最優良で安価なシステムを顧客が共同で利用する時代が来る」(同氏)という信念のもと、2008年に民間のSIはすべて撤退する方針を決定。地元の官公庁と食品流通という限定した分野でトップを目指し、共同利用型のクラウドサービスを開発した。
クラウドサービスは、個別開発されたシステムと比べ、サポートやメンテナンスの手間がかからない。また常に最新型が使えるため、定着した顧客はほぼ離れない構造となる。さらに、定期的なシステム利用料や情報処理料が入り、安定した経営が約束される。
2021年12月期は、売上高の実に50.5%にあたる66億円がストック収入によるものとなった。特に流通クラウド事業は、セグメント別売上比率では官公庁クラウド事業に次ぐ二番手だが、ストック収入はセグメント売上高の82.4%と極めて高い。
2022年上期は過去最高益 景気の影響なく成長続く
2022年上期は売上高が前年同期比9.2%減の62億3,300万円だったが、経常利益は同25.5%増の7億3,200万円と上期過去最高を記録。経常利益の半分超を占める大きな牽引役となるのが流通クラウド事業だ。2021年2月に発表した中計では、最終年度の2025年12月期に売上高145億円、経常利益16億円を予定していたが、直近の実績は計画を上回って推移している。
「流通クラウド事業の利益率は第2四半期単独で20.0%になりました。これから拡大期に入り、2025年を待たずに前倒しで中計の数字を達成する見込みですので、中計の見直しを検討しています。食品流通は景気変動の影響を受けにくい。サービスの改善なども加えながらこの事業を順調に伸ばし、当社の成長ドライバーとしていきたい」(同氏)
2022年12月期 連結業績
売上高 | 132億4,100万円 | 前期比 3.6%増 |
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営業利益 | 9億4,500万円 | 同 2.2%増 |
経常利益 | 9億5,800万円 | 同 0.7%増 |
当期純利益 | 6億4,500万円 | 同 0.1%増 |
2023年12月期 連結業績予想
売上高 | 132億6,700万円 | 前期比 0.2%増 |
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営業利益 | 10億4,300万円 | 同 10.4%増 |
経常利益 | 10億4,600万円 | 同 9.1%増 |
当期純利益 | 6億7,000万円 | 同 3.8%増 |
*株主手帳2022年12月号発売日時点