この記事は2022年10月18日に青潮出版株式会社の株主手帳で公開された「横浜冷凍【2874・プライム】冷蔵倉庫と食品販売の両輪で着実に成長 ノルウェーサーモンの安定供給で販路拡大」を一部編集し、転載したものです。
横浜冷凍は「ヨコレイ」の愛称で知られ、創業から70年以上にわたり、冷蔵倉庫事業と食品販売事業の2事業を展開してきた。同社では現在、2023年を最終年度とする中期経営計画「創る力」を推進。2020年に就任した松原弘幸社長のもと、事業モデルの改革に挑んでいる。
2023年9月期には「連結売上高1,200億円」「連結営業利益50億円」「EBITDA110億円」「自己資本比率40%台半ばを維持」の定量目標達成を目指す。
▼松原 弘幸社長
第3四半期は利益49.8%増 通期目標達成にメド
同社の売上構成比は冷蔵倉庫が26.7%、食品販売が73.3%。食品販売で売上を、冷蔵倉庫で利益を担うビジネスモデルで長年展開してきた。
冷蔵倉庫事業では、港湾や道路・産地・消費地など、食品供給の要衝に冷蔵倉庫を建設。国内49拠点、タイ5拠点で、100万トン超の収容能力を有する。業界では最大手のニチレイに、同社とマルハニチロ物流が追随している形である。
食品販売事業では、国内・海外子会社において、水産品を中心に農畜産品の加工・販売・輸出入を行なっている。
強みは、国内外の商品ニーズに的確に対応する調達力だ。北欧や東南アジア・北南米・豪州など各地でネットワークを構築し、何千トン単位で農畜水産物を調達するほか、国産品の輸出も行なう。また上場企業では珍しく、気仙沼や長崎などの水揚げ港での買参権を持っており、毎日競りで水産品を調達。買い付け・凍結・保管・販売だけでなく、海外で製品化して逆輸入するなど、多角的に事業を展開している。
2022年9月期第3四半期決算は、売上高845億3,100万円(前期比1.8%増)、営業利益35億8,700万円(同49.8%増)で着地した。利益の大幅増の一因には食品販売事業の黒字化がある。
「以前はブローカー業に特化していたため、相場による波がありました。2020年以降、在庫コントロール化をはじめとした販売体制の再構築、子会社の吸収合併による組織改編、社員の意識改革を行なってきた。就任2年目で芽が出始め、3年目の今年、取り組みが成果を出し、数字に表れてきました」(松原弘幸社長)
中期経営計画「創る力」推進 2023年9月期連結売上120億円へ
同社では現在、長期方針「ヨコレイ事業ビジョン2030」「ヨコレイサステナビリティビジョン2030」実現に向け、中期経営計画「創る力」を推進している。2023年9月期には「連結売上高1,200億円」「連結営業利益50億円」「EBITDA110億円」「自己資本比率40%台半ばを維持」の達成を目指す。
食品販売事業では「新たな食の価値の創出」を方針とし、海外における調達力を強化した。特にサーモンに関しては、6年前からノルウェーに拠点を置き、現地ホフセス社とパートナーシップを締結。数年かけて築いた良好な関係により、安定して調達できる環境が整った。
調達力の次は販売力強化に取り組んだ。これまではメーカーや仲卸業者へのBtoBのみだったが、量販店への販路を拡大した。
「ウクライナ情勢や物価高騰により、近年は食品量販店がサーモンを入手しづらい状況にあります。そんな中、当社はサーモンの安定供給が武器になった。これまで量販店に対しては営業頻度が少なかったのですが、営業部隊が直接取引の提案に行くようになり、販路の拡大に繋がっています」(同氏)
また同事業では、現在一般消費者向けECサイトの立ち上げを準備中だ。他にもうなぎ養殖場の取得、中食・量販店向けの独自商品開発など、次々と新たな取り組みを行なっている。
3年間で300億円投資
倉庫新設とDX化進める
冷蔵倉庫事業では中期経営計画にて「事業モデルの創造」を掲げ、3年間で300億円を投資する。既に福岡と気仙沼ソーティングスポットは稼働開始。平戸には全自動・無人化・24時間稼働の国内最大級の製氷工場を建設し、製氷事業に進出した。千葉や北海道恵庭でも倉庫を建設中だ。
「創業時から地域貢献を重視してきました。今後倉庫を新設する際も、地域のニーズに合った運営をしていきます」(同氏)
近年、倉庫間のネットワーク化を進めており、物流網の効率化や省力化といった点で、今後の展開への伸びしろを感じているという。
DX・ITロボティクスへの投資、環境への取り組みにも精力的に取り組んでいる。低温物流業界では、倉庫の老朽化や環境への負荷軽減、運送ドライバーの「2024年問題」など、多くの課題を抱えている。同社では日頃から柔軟に設備投資をしてきたこともあり、他社に比べ建て替えが進んでいる点が大きな強みだ。
業界全体の課題となるフロン規制に対しては、全ての新設倉庫にフロンを使用しない自然冷媒を導入し、既存施設でも自然冷媒化工事を実施。業界の自然冷媒導入率が50%と言われる中、同社は60%超を実現したという。2024年問題に対しては、トラック予約システムなどのIT化に取り組んでいる。
「お客様のために、そして時代に合わせてどんどんビジネスモデルを変革していく。どうすればより良いサービスを提供できるか、そして効率化も図れるか。現場と経営とで足並みを揃え、スピード感を持って取り組んでいきたいです」(同氏)
倉庫の建設にこだわり
基本的には重厚なコンクリートでRC構造の倉庫を建設。自社で分離発注し、自前で建てている。東日本大震災時、地元の倉庫が壊滅状態の中、同社の倉庫は建物自体に大きな損傷はなかった。
▼自然冷媒導入し環境に配慮
複合型マルチ物流サービスが好調
近年では1つの物流センターで商品の保管・配送・仕分け・積み替えが可能な複合型マルチ物流サービスの提供を開始。顧客の運送コスト・人件費・輸送距離・CO₂排出量の削減へ貢献している。
2021年9月期 業績
売上高 | 1,107億8,200万円 | 前期比 3.7%減 |
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営業利益 | 25億6,200万円 | 同 24.9%減 |
経常利益 | 27億6,200万円 | 同 25.4%減 |
当期純利益 | 36億500万円 | 同 54.0%増 |
2022年9月期 業績予想
売上高 | 1,098億円 | 前期比 ー |
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営業利益 | 47億円 | 同 ー |
経常利益 | 54億円 | 同 ー |
当期純利益 | 36億円 | 同 ー |
*2022年9月期期首から新会計基準を適用の為、対前期増減率は記載なし
*株主手帳2022年11月号発売日時点