本記事は、西崎努氏の著書『60歳を過ぎたらやってはいけない資産運用』(アスコム)の中から一部を抜粋・編集しています。
やってはいけない3つの債券投資
債券投資は、株式投資と比べるとローリスク・ローリターンといえますが、その一方で預金と比べると高い運用成果が期待できます。
ただし、債券投資の中にも、意外にハイリスクな商品や、実はリターンとリスクが見合わない商品など「やってはいけない」ものもあります。特に注意しなければならない商品は次の3つです。
(1)高コストな投資信託での債券投資
債券投資の期待リターンは株式投資より低いことがほとんどです。値上がり益よりも利息収入を重視した投資のため、年間数%の利回りを期待して投資をします。ですから、運用に大きなコストがかかると、割に合わない投資になりかねません。
債券は運用コストがかからないのが魅力の1つだと前述しました。しかし「債券に投資する投資信託」の場合は別です。そして債券へ投資する投資信託の中で残高(純資産)が大きいものほどコストが高い傾向があり、1.5〜2.0%程度にもなります。
なぜそんなにコストの高い投資信託が売れているかというと、金融機関が積極的に販売しているからです。債券投資に慣れている人なら、個別銘柄やETFを利用します。ところが、あまり詳しくない人は金融機関にすすめられると、コストの高い投資信託を買ってしまうのです。
コストが引かれても利益が出ればいいと考える人もいますが、長い年数をかけて運用することが前提の債券投資ではかなり非効率な運用になるのでやめましょう。
(2)高金利の新興国通貨建て債券
新興国通貨は5%や10%を超える金利がつくことも珍しくなく、ついそれだけの金利がもらえるならと投資してしまう方がいますが要注意です。金利が高いということにはそれなりの理由があります。
新興国は高いインフレ率や対外債務の多さによって通貨安になりやすく、もらえる金利以上に円高で大きな損失を被っているケースが少なくありません。表面上の名目金利だけでなく、物価変動率も考慮した実質金利を見ておかないと落とし穴にはまります。
新興国は先進国に比べて政治や経済が不安定です。シニア世代の方が投資先として選ぶべきなのか、慎重に検討しましょう。
(3)EB債(他社株転換可能債券)
詳しくは第2章で説明していますが、EB債は個人が資産運用に使うには難易度が高く、リスクを誤解したまま投資しやすい仕組債と呼ばれる商品です。
償還日までの株価変動によっては、満期日に償還金が支払われる代わりに指定された会社の株式(個別株)が交付される場合もあります。その仕組みは非常に複雑で、株価が大きく値下がりした場合は大損する可能性もあります。
ところが「そこまで株価は下がらないだろう」と安易に考えて投資してしまう方が後を絶ちません。わかりづらい商品になんとなく投資することは、シニア世代にとって最も避けるべき「やってはいけない」投資です。
2007年にSMBC日興証券に入社、CFP資格も保有する全国トップセールスとして活躍し、シンガポール・ロンドンでの海外研修も経験。帰国後はIPOや公募増資等の引受業務に従事する。2017年に独立し、リーファス株式会社を設立。金融商品の仕組みはもちろん、運用実務、大手銀行や証券会社の販売手法まで熟知したアドバイスが好評。「貯蓄だけだと老後が不安」「退職金の使い方に悩んでいる」「金融機関で勧められた商品で失敗した」という人たちの駆け込み寺として、定年前後の世代を中心に相談が殺到。仕組みがわかりにくい金融商品、コストが割高な商品が売れすぎる日本の現状を問題視し、本当に安心して老後資金を増やすための情報発信を続けている。
日本最大級の投資情報サイトである楽天証券メディア「トウシル」では、「やってはいけない資産形成」「1万円で買える米国株式」のテーマで毎月連載、トウシルYouTubeにもレギュラー出演をしている。※画像をクリックするとAmazonに飛びます