本記事は、西崎努氏の著書『60歳を過ぎたらやってはいけない資産運用』(アスコム)の中から一部を抜粋・編集しています。

金融サービス
(画像=makibestphoto/stock.adobe.com)

理解できない金融商品・金融サービスに手を出してはいけない

結局のところ、EB債などの仕組債は非常に複雑な商品であり、その仕組みやリスクとリターンの関係について理解できなければ投資すべきではありません。

プロの機関投資家の間でも「株式のプット・オプションの売り」を引き受ける投資家は少なく、リスクの高い取引として認識されています。それと同じような特徴のある「EB債」に素人同然の個人投資家が手を出したらどうなるかは明らかでしょう。

そもそも金融商品取引法は、投資家保護のため、顧客の知識、経験、財産、目的に照らして不適当な勧誘を禁じています。これを「適合性の原則」といいます。金融機関は顧客が理解できないものはすすめてはいけないと法律で決められているのです。

それにもかかわらず、EB債など仕組債の販売額は増えています。

当然、トラブルも増えています。裁判によらない紛争解決(ADR)を図る機関「証券・金融商品あっせん相談センター(フィンマック)」が2021年1月〜2022年3月に扱った事案146件のうち、仕組債は最多の48件と、全体の3分の1を占めました。そして48件の半数以上は70代以上の高齢者による投資だといいます。

こうした状況を重く見た金融庁は2022年5月、資産運用業界向けに公表したリポートで、EB債は一般の株式・債券と比べて見劣りしており、「株式に代えてEB債を購入する意義はほとんどない」と結論付けています。

繰り返しになりますが、シニア世代のみなさんはしっかりと仕組みとリスクを理解できなければ「EB債」に手を出してはいけません。単純に株価推移だけで判断して大損している人が多勢いることを忘れないでください。

やってはいけない資産運用

購入する頃にはピークを過ぎすでに下がり目テーマ型投資信

■どんな商品?

世の中で話題の技術や産業トレンドに着目し、そのテーマに関連した株式銘柄を重点的に購入する投資信託。
アクティブファンドの代表格で、わかりやすく「上がりそう」に見える反面、流行を後追いしているだけで、比較的手数料が高く、似たような商品も多い。

■よく聞く営業トーク

「いま注目の技術や社会トレンドに注目した銘柄を厳選して組み込んでいるので、期待できますよ!」
「日経平均やTOPIXなど平均値の株式指標を上回る、ハイパフォーマンスを目指します!」
「複数銘柄に分散投資するのでリスクも低く抑えられます」
「世界的な流れに乗っているので長期投資に最適です」

■ここがダメ!

  1. 組み込む銘柄がすでに値上がり済みで、さらなる上昇が見込めない限り高値づかみになりやすい
  2. そのうちブームは終わるので、反動で大きく下落するケースが過去の例でも非常に多い
  3. アクティブファンドで中身のわりに運用コストが高いケースが多い
=60歳を過ぎたらやってはいけない資産運用
西崎努
リーファス株式会社 代表取締役社長。
2007年にSMBC日興証券に入社、CFP資格も保有する全国トップセールスとして活躍し、シンガポール・ロンドンでの海外研修も経験。帰国後はIPOや公募増資等の引受業務に従事する。2017年に独立し、リーファス株式会社を設立。金融商品の仕組みはもちろん、運用実務、大手銀行や証券会社の販売手法まで熟知したアドバイスが好評。「貯蓄だけだと老後が不安」「退職金の使い方に悩んでいる」「金融機関で勧められた商品で失敗した」という人たちの駆け込み寺として、定年前後の世代を中心に相談が殺到。仕組みがわかりにくい金融商品、コストが割高な商品が売れすぎる日本の現状を問題視し、本当に安心して老後資金を増やすための情報発信を続けている。
日本最大級の投資情報サイトである楽天証券メディア「トウシル」では、「やってはいけない資産形成」「1万円で買える米国株式」のテーマで毎月連載、トウシルYouTubeにもレギュラー出演をしている。

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