本記事は、志村暢彦氏の著書『世界の富裕層がお金を増やしている方法』(ダイヤモンド社)の中から一部を抜粋・編集しています。

〝スマートインベスター〟を目指す

インベスター,投資家
(画像=Charnchai saeheng/stock.adobe.com)

富裕層というと、スイスあたりのプライベートバンクにお金を預けて、手数料を支払うかわりに、「あとはよろしくやっておいて」というノリで、資産管理を丸投げしているというイメージを持つ人も少なくないでしょう。

そういう富裕層もいるにはいますが、最近増えている伸び盛りの富裕層では、私の知る限りにおいて、資産管理を丸投げするタイプは少数派の印象です。

私たちに専門的な情報提供やアドバイスは求めるものの、何にどのように投資するかは、自分の頭を使って判断する人が多い傾向があります。

特に、起業して成功した伸び盛りの富裕層は、想定リスクと期待リターンの最適化を追求するタイプが多いように見受けられます。起業自体がリスクをともないますから、投資との相性がいいのでしょう。

逆説的にいうなら、リスクを取りながら、新たなチャレンジを続けるマインドを持っていたからこそ、ある意味、投資以上のリスクをともなう起業でチャンスをつかみ、成長軌道へと導いて富裕層になっているのかもしれません。

〝外注派〟でお任せというスタンスをとっている富裕層でも、「いまプラスなの? それともマイナスなの? なんで、そのような結果になったの?」などと、折に触れて聞いてくる人のほうが、完全に丸投げするタイプよりも多い気がします。

株式投資は、リスクとリターンのバランスを絶妙にとりながら、勝率をいかに上げられるかを競うゲーム的な色合いもあります。

ゲームでは、誰しも自分なりの戦略と戦術があります。株式投資でも、自分らしい戦略と戦術を集約した「勝利の方程式」が大事なのです。

思いつきで投資をしたり、誰かが推奨している銘柄を自分なりの検証を踏まえず買ったりしていると、株式投資を何年続けていても「勝利の方程式」が一向に定まらず、投資家としての成長につながりにくいです。

なぜその銘柄や投資法がいいのか。仮説を立てて検証するトライアル&エラー(試行錯誤)を続けていると、銘柄の選定や投資術に対する審美眼が養われるようになり、〝目利き〟に近づいていくでしょう。

そういう〝スマートインベスター〟(賢い投資家)になることが、資産を確実に増やすためには不可欠なのです。

グローバル投資を実践している伸び盛りの富裕層は、まさにスマートインベスターといえる人が多いです。富裕層に限らず、個人投資家も勝率を高めて資産を積み上げるには、スマートインベスターを志しましょう。

週1回はポートフォリオと向き合う

投資の結果を左右させる!最も効率的なポートフォリオの作り方とは?
(画像=NicoElNino/stock.adobe.com)

株式を一度買ったら、ほったらかしにしてめったなことでは売らない。これは「バケーション投資」と呼ばれています。個別株やETFを買ったら、あとはお金にせっせと働いてもらい、バケーション(休暇)に出かけて放置しても構わない投資という意味です。

投資の運用パフォーマンスがもっともよかったのは、「投資をしたことを忘れていた人」と「すでに亡くなっている人」だったという都市伝説もあります。

その真偽はともかく、「長期×複利運用」での投資が高いパフォーマンスを生み出すのは間違いありませんから、バケーション投資も悪手ではないでしょう(何を隠そう、私は『バケーション投資戦略 年20分の一手間で経済的自由になる』[アレクサンダー・グリーン著]という本の監修を務めています)

私が監修した本では、1年間にわずか20分だけ費やして銘柄を入れ替えるリバランスを推奨していますが、それだともっと時間を費やして臨機応変にケアする場合と比べると、パフォーマンスは悪くなります。

とはいえ、スマホで1日何回も株式相場の動向やレーダースクリーン(登録銘柄リスト)が捉えている銘柄の値動きを確認する必要はありません。そんなことをしていたら、仕事も家事も、手につかなくなってしまいます。

私がおすすめしているのは週1回、たとえば土曜日の午前中などに自分のポートフォリオと向き合うこと。

週1回なら負担に感じることはないでしょうし、仕事にも生活にも支障は出ないでしょう。もちろん、金曜日の夜でも日曜日の午後でも構いません。

バケーション投資の悪しき例は、ひと昔前まで企業年金の主流だった「確定給付企業年金(DB)」です。

確定給付企業年金とは、それまでの厚生年金基金や適格退職年金にかわって登場した年金システムです。労使の合意のもと、会社員が受け取れる将来の年金給付額(投資でいうならリターン)を決め、そのための掛け金を会社が拠出する仕組みです。

このシステムだと、運用は丸投げ。どのように運用するかを考える必要がありません。運用の主体は企業であり、運用成績が悪くて決められた給付金が支払えない場合、不足分は企業が穴埋めをする制度だからです。

会社員は、(年1回のリバランスさえ不要で)ほったらかしでお任せしていれば、決まったリターンが得られます。その点では、バケーション投資に似た性質を持つ制度だったといえるでしょう。

ところが、2021年12月10日付の日本経済新聞によると、上場企業の確定給付企業年金を調べたところ、受給者への支払総額が、掛け金総額を上回る取り崩し期に入った企業が半数に達したそうです。

こうした背景から、確定給付企業年金の廃止に踏み切ったり、企業年金そのものを廃止したりする動きも出てきました。

会社員が退職後の人生に不可欠であるはずの資産運用を、企業という他人任せにした結果、表面化したのがいわゆる「老後2,000万円問題」だったのです。

その後、いくらもらえるかという年金給付額を保証するのではなく、年金にいくら投資するかという掛け金額(拠出金額)が決まっている「企業型確定拠出年金(DC)」を採用する企業が増えました。

確定拠出年金では、企業が社員のために拠出する年金を使い、社員自らが金融商品を選んで運用します。その運用成績により、原則60歳以降に受け取れる給付額が変わってきます。この仕組みでは、任せきりにしていれば、決まったリターンが手に入るという保証はありません。

企業年金ですら、バケーション投資的な発想から脱却している時代なのですから、個人投資家のグローバル投資においても、週1回ペースでポートフォリオに向き合う時間をつくりましょう。

世界の富裕層がお金を増やしている方法
志村暢彦
1974年神奈川県生まれ。信金中央金庫、ニッセイアセットマネジメント、ニッセイ・シュローダーズ・アセットマネジメント(ロンドン)などを経て、2013年スカイキャピタルグループ設立。ファンドマネジャーやトレーダーとして大手機関投資家・投資信託等の資産運用に携わり、現在は富裕層を含む個人投資家や企業経営者の資産形成を支援。国内外の運用機関をはじめ、投資銀行やヘッジファンド、公的機関等と幅広く連携。グローバル株のアクティブ運用が専門。『Newsモーニングサテライト』(テレビ東京系)、『おはようマーケット』(ラジオNIKKEI)、『週刊ダイヤモンド』(ダイヤモンド社)などマスコミ出演多数。Oxford Club Japanチーフ・ストラテジスト。

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