東京都から「臨海地下鉄構想」が発表され大きな話題になっています。計画によれば、これまで鉄道空白地帯だった晴海地区の交通利便性が一気に向上します。本記事では臨海地下鉄計画の概要と、計画が実現した場合の不動産市場への影響について考察します。

東京都が発表した臨海地下鉄計画

投資家を魅了する新築マンション。資産価値が下がらない上昇のスパイラルとは
(画像=jikoman/stock.adobe.com)

東京都の小池百合子都知事は2022年11月25日の定例会見で、「都心部・臨海地域地下鉄構想」(以下、臨海地下鉄)を発表しました。東京都心部と臨海副都心を結ぶ地下鉄です。概算事業費は約4,200~5,100億円を見込み、約30年で黒字転換させるとしています。開業は2040年頃の予定です。

国土交通省の交通政策審議会はこの路線開業の意義について、「国際競争力強化の拠点である都心と臨海副都心とのアクセス利便性の向上」「山手線等の混雑の緩和」(交通政策審議会答申)の2点を挙げています。また、「事業性の確保に向けて、都心部・臨海地域地下鉄構想と常磐新線延伸を一体で整備し、常磐新線との直通運転化等を含めた事業計画について、検討が行われることを期待」(同)との文言も盛り込まれています。

急浮上した計画という印象ですが、2014年度には中央区が臨海地下鉄の検討を始めていました。2016年度には交通政策審議会がまとめた鉄道整備指針において、首都圏における新線プロジェクトの1つに位置付けられたという経緯があります。その後2021年度の地下鉄網整備に関する答申で事業化へ向けた踏み込んだ表現がなされたことで、東京都が動き出したというのが今回発表に至った背景です。

実現すれば鉄道空白地帯が解消

新線の開業が実現すれば鉄道空白地帯だった晴海に停車することになります。東京五輪選手村として使用された「HARUMI FLAG(晴海フラッグ)」がマンションとして分譲されますが、晴海駅が出来ることで交通利便性が一気に向上します。現状のHARUMI FLAGは最寄り駅の都営大江戸線勝どき駅まで徒歩20分程度の距離があるため、通勤・通学等に不便な点が購入のネックになっています。

次世代バスBRTの汐留・虎ノ門行きにエリアから乗降できますが、輸送力は1時間当たり1,200人程度といわれているので、居住者が1万2,000人を見込むHARUMI FLAGの住民を輸送するにはかなりの混雑が避けられない状況です。将来新駅が開業すれば交通の問題は解消されるので、資産価値がさらに高くなる可能性があります。

臨海地下鉄の設置予定駅は?

臨海地下鉄で設置が予定されている駅は、東京-新銀座-新築地-勝どき-晴海-豊洲市場-有明・東京ビッグサイト(いずれも仮称)です。走行距離は6.1㎞を予定しています。東京都の事業計画案からそれぞれの特徴を確認しておきましょう。

東京

日本最大のターミナル駅東京を発着点にできることは交通利便性にとって大きなメリットになるでしょう。周辺路線との乗り換えで三越前駅、日本橋駅、大手町駅等へのアクセスも便利です。東京都は国際ビジネス拠点となる再開発計画と連携して行う構想を示しています。

新銀座

日本を代表する繁華街の銀座エリアに駅を設置するため、ショッピングや観光の利便性が一段と高くなります。周辺路線との乗り換えで有楽町駅、銀座駅、銀座一丁目駅、東銀座駅へもアクセスできます。東京都は都有地活用などで周辺まちづくりと連携するとしています。

新築地

卸売市場は豊洲に移転しましたが、その後も一般消費者が利用できる築地場外市場として営業が続けられています。築地地区は今後再開発される予定で、東京都は「築地まちづくり」の計画も発表しています。この再開発地区に新駅ができることで街の発展にも大きく貢献しそうです。

勝どき

現在ある都営大江戸線勝どき駅は「HARUMI FLAG」の最寄り駅になっています。第1号から第3号まで3つの埋め立て地からなる島状のエリアです。そのためタワーマンションが多く建設されています。新駅も都営大江戸線と乗り換えできるようになる予定です。

晴海

晴海は鉄道空白地帯といわれています。「HARUMI FLAG」から最寄り駅の勝どきまで徒歩20分程度かかるなど交通利便性が低いのがデメリットです。東京都は晴海地区の鉄道空白地帯を解消するのも計画の大きな目的に掲げています。

豊洲市場

築地から移転した卸売市場がある街として豊洲の知名度は全国的にアップしました。豊洲駅は東京メトロ有楽町線と新交通ゆりかもめが乗り入れているので、交通アクセスも便利です。東京都は周辺施設と連携して街づくりを進める計画です。

有明・東京ビックサイト

有明にある国内最大の国際展示場である「東京ビックサイト」にも駅を設置する予定です。現在はりんかい線の国際展示場駅と、新交通ゆりかもめの東京ビックサイト駅があります。周辺施設と連携して街づくりを進めるほか、りんかい線、新交通ゆりかもめと乗り換えできるようにすることで交通利便性を高めます。

羽田空港とつなぐ構想もある

臨海地下鉄は、当初は東京~有明・東京ビックサイト間で開業を目指しますが、将来はつくばや羽田空港とつなぐ構想もあります。常磐新線(つくばエクスプレス)は現在秋葉原からつくばまで運転していますが、秋葉原から東京まで延伸することで、臨海地下鉄とつなぐことを計画しています。

また、有明・東京ビックサイトからJR東日本が計画している羽田空港アクセス線に接続させる構想もあり、これら2つの延伸計画が実現すれば、つくばと羽田空港を結ぶ広域鉄道ネットワークが実現します。

ただし、東京都はつくばエクスプレスの延伸については臨海地下鉄とは別のプロジェクトと位置付けており、まずは臨海地下鉄の検討をしっかり行うことが重要としています。

東京23区の不動産がさらに高騰する可能性も

臨海地下鉄の計画が出されたものの、着工までにはまだ数年かかるものと思われます。臨海地下鉄の開業が実現すれば、東京23区の不動産価格はさらに高騰する可能性を秘めています。ルートの中心になる中央区、江東区の不動産価格が上がれば、他のエリアも相対的に割安感が出るため、中央区、江東区以外の物件も上昇が期待できます。

景観の良い臨海副都心エリアは高い人気があります。湾岸エリアにはタワーマンションが林立しており、富裕層が住む街という印象です。臨海地下鉄が開業すれば交通利便性が増してさらに人口が集中することが予想されます。

開業予定は2040年頃ですが、不動産価格は開業を先取りする形で早い時期から上昇する可能性があります。開業してからマンションを購入しても、そこからの値上がりはあまり期待できないかもしれません。

東京23区の不動産で注目すべきは、首都圏には25路線もの新線プロジェクトが存在することです。臨海地下鉄のほかにも、東京圏の新線計画が発表されれば注目されるエリアはまだまだありそうです。首都圏と関東エリアの新線プロジェクトは、下記の鉄道計画データベースで計画が紹介されているので参考にしてみましょう。

鉄道計画データベース

東京23区の不動産市場には今後も追い風が吹き続けそうですが、まだ高騰していないエリアの物件を早めに確保しておくことも競争を勝ち抜く、戦略の1つといえるでしょう。

※本記事は2022年12月12日現在の情報を基に構成しています。臨海地下鉄構想の行方は流動的であり、今後詳細が変更になる場合もあります。参考程度にお考えください。

(提供:Incomepress



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