この記事は2023年1月8日に青潮出版株式会社の株主手帳で公開された「ライク【2462・プライム】〝人〟を軸に保育・人材・介護の3事業を展開 M&Aで進出した新規分野が主力に成長」を一部編集し、転載したものです。
ライクは、〝人〟を軸に保育、人材、介護の3事業を展開。人生のどの段階にもなくてはならない企業グループを目指している。もとはモバイルに特化した人材派遣サービスからスタートしたが、2009年に参入した保育事業と2013年に進出した介護事業が着実に成長し、合わせて売上の6割程度を占める主要な事業となっている。
中期経営計画では3事業をそれぞれ成長させ、2027年5月期の売上高1,000億円、営業利益80億円を目指す。
▼岡本 泰彦会長兼社長
子育て支援サービス事業の
売上構成比率約5割に
同社の2022年5月期実績は売上高576億4,200万円(前期比6.2%増)、営業利益42億3,800万円(同17.4%増)。売上構成比は保育事業の「子育て支援サービス」が48.2%、人材事業の「総合人材サービス」が38.3%、介護事業の「介護関連サービス」が13%を占める。
事業内容は、子育て支援サービス事業において、病院、企業、大学等が設置する事業所内保育施設を135カ所、認可保育園「にじいろ保育園」や学童クラブなどの公的施設を254カ所運営している。総合人材サービス事業は、モバイル、物流・製造、コールセンターなどへの人材派遣や業務を受託。介護事業は、神奈川、東京を中心に25施設を運営している(2022年4月末現在)。
同社は1993年、銀行出身の岡本氏が旅行企画会社を設立して独立したことに始まる。携帯電話販売への事業転換を経て、モバイルに特化したブティック型人材派遣業を展開。ここでノウハウを蓄積した後、保育の会社の株式を取得し保育事業に参入した。また、首都圏で有料老人ホームを展開する「サンライズ・ヴィラ」をM&Aで取得し介護事業に進出した。
「少し前までモバイル業界を中心とした人材派遣会社というイメージが先行していましたが、最近は保育事業が売上の半分近くを占めることが認知されてきていると感じています。今後もこの3本柱をそれぞれ成長させ、真に世の中から必要とされる『なくてはならない企業グループ』を目指します」(岡本泰彦会長兼社長)
認可保育園など公的保育に注力
自治体との信頼関係構築
中期経営計画では、2027年5月期の売上高1,000億円、営業利益80億円を掲げている。
それぞれの事業セグメントの目標値を見てみよう。子育て支援サービス事業は、前期(2022年5月期)売上高277億9,000万円を、中計最終年の2027年5月期に363億円へと引き上げる。
同事業の売上増には運営施設数の増加がカギとなる。同社はここ数年、認可保育園などの公的保育に注力。自治体との信頼関係構築や保育士の確保に努め、右肩上がりで施設数を増やしている。
「過去3~4年は多い時で年間20施設ぐらい、足元では2021年、2022年はそれぞれ10園強開設してきました。2023年も10園前後を開設することが決まっています。2025年ぐらいまでは少なくとも5~10園の開設スピードは維持できると考えています」(同氏)
▼にじいろ保育園亀戸の外観
▼にじいろ保育園駒岡4丁目の内観
機運高まる「公設民営」
M&Aも積極的に検討
全国の認可保育園のうち、近年増えているのが、自治体が開設した保育園の運営を民間事業者が受託する「公設民営」の動きだ。少子化のため、公立園を民間委託する自治体が増えつつあり、同社においても運営を受託する保育園の数が増加しているという。一例として、2023年4月には愛知県半田市の市立保育園を運営することが確定している。
「この施設は、建物が老朽化していたので代替え地を市が提供し、運営を当社が行います。今後、このような公設民営の動きが加速するのではないかと感じています。ある自治体の首長さんからは、民間委託する際はライクさんお願いできますか、といった話を内々に頂いています」(同氏)
同社では、株式会社による保育園の運営についての評価がここ10年間で変わりつつあり、さらに公設民営の流れが施設数の増加に追い風になると見ている。
「自治体の担当者のアンケート結果などを見ると、民間企業の認可保育園の運営が非常に高く評価されているのが分かります。保育士を養成している大学の側でも、コンプライアンスや働きやすさの面で株式会社ってしっかりしているね、と好意的です。過去の株式会社の頑張りがやっと世の中に認知されるようになりました。機が熟しつつあると感じています」(同氏)
また、M&Aを有効な戦略として積極的に検討していくという。特に中小事業者からの相談を受けるケースも多くあるため、それらの案件を精査してM&Aを行っていく。
総合人材サービス事業拡大
コンプライアンスを遵守
総合人材サービス事業では、売上高を2022年5月期の220億8,700万円から、5年後の2027年5月期には450億円に伸ばす。
主力施策の1つは、物流分野の成長だ。同社はコロナ禍で休業状態となったアパレル業界の派遣スタッフが働く場を確保するため、Eコマース市場の拡大によって需要が高くなった物流業界を開拓した。現在、物流分野での売上約8割を大手総合物流会社が占めている。
「ある外資大手の場合、例えば物流センターのスタッフを2,000人集めるのに、御社は400人お願いします、というようなオーダーが来るので、当社も責任をもって集めます。それで物流分野の取引量が一気に拡大しています。私共人材サービスの会社に求められる条件は、供給力だけではありません。当然のこととしてコンプライアンス遵守ができていなければなりません。この流れはさらに加速していくと思われます」(同氏)
2つめの成長分野はコールセンターだ。インターネット通販の普及などによりコールセンターの需要は増加を続けているが、一方で慢性的な人手不足が続いている。同社は大手コールセンターに人材を派遣しており、営業を強化してシェアを高めていく。
3つめとして、大手家電量販店からの委託案件の大型受注が確定している。ある業界上位の家電量販店では、複数の派遣会社との契約を見直し、同社一社へ業務委託することを決定した。
「今後は当社がその量販店の人材を一手に仕切ることになります。コンプライアンス研修などは当社にノウハウがある。これは人材事業に大きなインパクトがあると考えています」(同氏)
介護施設を首都圏で運営
稼働率9割以上を維持
介護関連サービス事業では、2022年5月期の売上高75億600万円を2027年5月期には93億円に伸ばす。今後日本では高齢化率がさらに上昇する見通し。同社は神奈川、東京を中心に介護施設を年間1~3カ所のペースで開設していく。
「当社の介護施設はすべて黒字で、稼働率9割以上を維持していくのが基本。今後も場所を厳選して開設していきます。M&Aについては、当社の目が行き届く首都圏エリアで良い話があれば検討したいと思っています」(同氏)
また、介護現場で外国人材を積極的に登用していく。同社の施設では出身国がインドネシアやベトナムなどの外国人材数十人が就労している。外国人材の就労支援や生活支援は子会社のライクスタッフィングが行い、就労先はライクケアの介護施設などとなっている。
「人材を送り出す国の方々からも『ライクさんは介護の実業をしているから安心感がある』と歓迎されています。見学に来た企業から、コミュニケーションが取れていて素晴らしいと評価されています。今後も人材部門と連携し積極的に受け入れていきたいと考えています」(同氏)
同社の株主還元は配当性向30%程度を目安としている。ここ数年は増益により増配が続いている。2023年5月期は1株当たり53円を予想。保育と介護の施設建設などで投資が続いているが、今後、資金需要が落ち着いてくれば配当を高めることも検討したいとしている。
2022年5月期 連結業績
売上高 | 576億4,200万円 | 前期比 6.2%増 |
---|---|---|
営業利益 | 42億3,800万円 | 同 17.4%増 |
経常利益 | 52億3,400万円 | 同 2.0%減 |
当期純利益 | 32億6,800万円 | 同 0.2%増 |
2023年5月期 連結業績予想
売上高 | 616億円 | 前期比 6.9%増 |
---|---|---|
営業利益 | 43億5,000万円 | 同 2.6%増 |
経常利益 | 53億円 | 同 1.3%増 |
当期純利益 | 33億5,000万円 | 同 2.5%増 |
*株主手帳1月号発売日時点