この記事は9月21日に青潮出版株式会社の株主手帳で公開された「JPホールディングス【2749・プライム】認可保育園など子育て支援施設最大手 新たな収益の柱「コドメル」をスタート」を一部編集し、転載したものです。


JPホールディングスは、保育園を始めとする全国300以上の子育て支援施設を運営する企業。2022年3月期は過去最高の売上高・利益となり、2021年5月に発表した中期経営計画を約2年前倒しで達成した。少子化が進む中でも更なる収益性強化と新規事業の開発に挑む。2024年3月期には売上高363億円、経常利益39億円を目指す。

▼坂井 徹社長

JPホールディングス【2749・プライム】認可保育園など子育て支援施設最大手 新たな収益の柱「コドメル」をスタート
(画像=株主手帳)

「選ばれる園」作りで増収増益 ノウハウ活用しプログラム提供

同社は保育園209園、学童クラブ89施設、児童館10施設の子育て支援施設を全国で運営している(2022年6月末)。売上は運営の対価としての国や自治体からの補助金と、利用者から徴収する延長料金、給食費などの実費負担分だ。

2022年3月期の売上高は343億7,300万円(前期比2.6%増)、経常利益33億5,800万円(同13.9%)で過去最高を達成。2021年5月の中期経営計画で発表された2023年3月期の売上高目標と経常利益目標を上回った。

同社の運営施設のほとんどが公的な施設で、保育園のうち9割は自治体から認可を受けた「認可保育園」だ。同社は入園を希望する親に対してデジタルを利用した園見学を行ったり、園児に英語や体操、リトミック、ダンスのオンラインプログラムを実施したりといった施策を展開。「選ばれる園・施設作り」を推進し、他の法人が経営する保育園との差別化を図ることで収益を伸ばした。

「当社は全国で200以上の認可保育園を運営しているので、保育・育成・行事など、たくさんの事例が集まります。その事例を検証してノウハウを形成し、運営マニュアル・規定などを常時見直し、安心・安全な保育・育成の提供を実現しています。また、エリアごとや職種ごとの研修や勉強会も数多くできる。だから社員の質を向上できるのです」(坂井徹社長)

就任でコンプライアンス強化 声を上げる社内風土へと改善

同社は1993年に創業。オフィスコーヒーの営業代理店などを展開していたが、従業員のために託児所を設置したことから保育事業をスタートした。2000年に株式会社の保育事業参入が認められ、郊外型大型保育園などの保育園事業に進出。2002年にはJASDAQ市場へ上場した。2006年には学童クラブ・児童館第1号を受託。2012年には東証一部に指定替えとなった。  

現社長の坂井氏は2020年6月に社長就任。2020年3月期に6.2%だった経常利益率は、2021年3月期に8.8%、2022年3月期には9.8%と大きく伸びた。以前は社長によるワンマン体制が続いていたが、坂井氏の就任後は社外取締役が7割を超えるなどコンプライアンスの面でも一新した。

「社員のマインドもプラスの変化がみられます。たとえば、子育て関連の補助金は自治体によって異なり、地域で差があります。当社は全国で保育園を運営しているため、他の自治体の事例を紹介するなど、各地の議員の方向けに勉強会を実施したり、提言を行ったりしています。よりよい子育て支援提供のために若い社員が積極的に動くようになったことが、社内の活性化につながり良い組織風土が醸成されています」(同氏)

発達障害ケア事業を積極展開 2028年には新規事業で25億円目標

2022年5月には中期経営計画の見直しを発表した。さらに「選ばれる園・施設」を目指しつつ、既存事業と新規事業で経営基盤の強化と収益改善を進めていく。

既存事業では、デジタル対応拡大や学童クラブ・児童館の新規受託、給食のセントラルキッチン化などによる業務効率化をはかる。他社との業務提携やM&Aも推進する。

また、今後は発達支援事業を積極的に展開していく。発達障害児の療育には自治体から助成金が出ているが、必要な子どもは年々増加しているのが実態だという。

同社は、子どもの健全な心身の発達を図るため、保育士や放課後児童支援員からの相談対応や研修を実施してきた。しかしながら、保育士や放課後支援員の中には、障害のある子どもやその可能性がある子どもの症例認識不足や、療育に関する知識不足等から対応に苦慮する人が少なくない。

「仮に、そうした子どもが療育施設に通い専門家によるケアを受けられるようになれば、子どもたちだけではなく、保育士や放課後児童支援員も状況改善が見込まれます。その為、今後は、保育と学童の現場で得られた知見を活かし、多機能型施設や放課後等デイサービスの新設などを推進していきます」(同氏)

そして新規事業として推進するのは、自治体の補助金に依存しない子育て支援プラットフォーム事業「コドメル」だ。現在は子育て用品を中心としたリユース品の流通と子育て情報発信を展開しており、他事業者との連携により会員登録者が拡大している。将来的には子育て支援業界へのサービスとして、個人や企業、保育園をつなげ、新たな事業・商品開発を展開予定。2028年3月期には海外展開も含め事業規模25億円(取扱高)を目指す。

「コドメルに多くの子育て支援施設が参加すれば、当社の300施設の運営で得たノウハウを他の保育園に提供できます。たとえば保育士が一時的に不足している園に他の園から保育士を派遣したり、研修をオンデマンドで提供したり。また、夕食準備が大変という保護者の困りごとへの対応として、急速冷凍技術を活用した当社の園で提供している給食を商品化するフードビジネスの展開も計画しています。今後、アジア圏を中心とした海外も視野に入れて様々なサービスを提供し、事業の拡大を目指します」(同氏)

中期経営計画の最終年度である2024年3月期に目指すのは、売上高363億円、経常利益39億円。長期経営ビジョンでは、売上高1,000億円を掲げている。

▼「アスク上高井戸保育園~都会のふるさと~」の外観

JPホールディングス【2749・プライム】認可保育園など子育て支援施設最大手 新たな収益の柱「コドメル」をスタート
(画像=株主手帳)

2022年3月期 連結業績

売上高343億7,300万円前期比 2.6%増
営業利益33億4,400万円同 17.1%増
経常利益33億5,800万円同 13.9%増
当期純利益22億7,900万円同 324.1%増

2023年3月期 連結業績予想

売上高356億4,000万円前期比 3.7%増
営業利益35億6,000万円同 6.4%増
経常利益35億8,000万円同 6.6%増
当期純利益23億2,500万円同 2.0%増

*株主手帳10月号発売日時点

坂井 徹社長
Profile◉坂井 徹(さかい・とおる)社長
1973年9月生まれ、東京都出身。1996年米国Pacific Rim Corporation入社。2001年アトリウム入社。2017年マザーケアジャパン創業、代表取締役。2018年JPホールディングス取締役、2020年代表取締役社長。2021年ジェイ・プランニング販売代表取締役社長(現任)。2022年日本保育サービス代表取締役社長(現任)、ジェイキッチン代表取締役社長(現任)。